ハリネズミだって恋をする
授業中、青々とした空にわた雲が浮かんでいる。
先生の声と黒板に削られるチョークの音、ノートに書き写すシャーペンのカリカリという音が響いている。
加奈子は最後列の席で、ノートをとっている。彼女が前の席に座ってしまうと後ろの席の人が黒板を見ることが出来ないからだ。
内心、思う所がないわけではなかったが自分が邪魔になるのは事実なので、加奈子は黙って従っている。
休み時間はもっぱら読書をして過ごす。
はな雪子、友達と過ごすこともあるが基本的に本を読んでいる。
今も加奈子は読書をしている。
座っている加奈子の足に、はなが頭を乗せて持たれかかっている。
勉強がニガテな彼女には、日々の授業は大変な労働らしい。
雪子は加奈子の机に座り、壁にうつかって雑誌を読んでいる。
加奈子の机だが、気にしていないようで彼女が何かを言うことはない。
「ねぇ次の日曜空いてる?」
雪子は雑誌から目を離さず、独り言のようにつぶやいた。
「ん〜午後からならいいよ」
対する加奈子も本から目を離さない。
「じゃあ服見に行こう」
「ん、いいよ」
2人の態度はあくまで素っ気ない。
放課後は、はなと加奈子は部活。雪子は帰宅する。
雪子は家に帰るまでの道のりが、いつもより気分良く弾んでいるような気がした。