聳ゆる山はいや高く
「背が伸びたぁ?」
二人の声が同時に響いた。ただその声にこもった感情は全く別物だった。
「えぇ!いいないいなー!羨ましいっ‼︎」
この声には羨望が込められている。
体の生長が小学校でほぼ止まっている彼女にはさぞ羨ましい話だろう。
「あんた、どこまで伸ばすきよ。もう170あるんじゃない?」
こちらの声は呆れだろうか。悩んでいるのを知っている分諦めも込められているかもしれない。
「羨ましくないよぉ、あと170はないです…まだ」
ただ、170の大台が見えてきたはいる。
167㎝、文化部所属の中学2年の少女にはすぎた身長だ。
「そんな目で見ないでー」
二人の尊敬と同情の視線に耐えくれず、加奈子は机に突っ伏した。
「よしよし、そのうちいいことあるよ」
雪子のおざなりな慰めが、加奈子の心に塩を塗っている。
「スラッとしててかっこいいよー!おっきなかなこ、私は好きだよ‼︎」
純粋なはなちゃんの優しさが心にしみる。おっきなという所が気にかかるが。
「ありがとう二人共、まぁ身長はどうしようもないからもう諦めるよ。170には行かないで欲しいんけどね」
そう言うと加奈子は深いため息をついた。