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71話『シィスの報告日誌』

注1:時間の都合上、重要事項を抜粋して記述する

注2:機密上、暦等の情報は暗号化して記述する




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 今回私に課せられた任務は主に2つ。

 1つ目は、依頼主――空白の皿の目的達成にあたり、最適な人間を勧誘すること。

 2つ目は、依頼主より指定されたとある人物と接触し、依頼主の所へ連れてくること。

 生死を問わない、というのには引っかかりを感じたが、とにかく私は任務を遂行するだけだ。

 まずは人の多いファミレで目ぼしい人間を探してみたが、すぐに見つかったのは幸運と言うほかない。

 以下、対象を"狼"と暗号名で呼称する。


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 尾行して狼の動向を監視するよう命令を受けた。


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 父を救いたいと、"乳牛"から別件で依頼が入った。

 そのため最適な人員を用意して欲しいとのことだ。

 内容を聞くに、現在監視中の狼が最適と思われる。

 また、乳牛に貸しを作り連携を強化しておくことは、将来的に有利になると考える。

 空白の皿が準備を整えるまで、まだまだ時間を要するため、そちらの問題はないだろう。

 上手く誘導しつつ、適時動向を乳牛へ伝える。


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 狼の能力を直に観察してみたが、確かに強力な力だ。

 特に一瞬のうちに離れた位置へ移動できたり、治癒を行えてしまう力は脅威である(詳細は別途記述する)

 驚くべきは、魔法でも技でもない力に由来していて、極めて利便性が高い点。

 ツァイの呪符のようなものなのだろうか。


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 花精の少女(以下"蝶"と呼称)を故郷へ送り届けるため、狼たちはファミレを出てタリアンのトラトリアへと向かうようだ。

 地理的には都合が良い。私も船に同乗し、監視を継続する。


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 閉鎖的環境ということもあり、狼と接触し、人間性をより細密に調査してみた。

 結論から言うと、任務に協力してくれる可能性は高いと思われる。

 社交性が高く、自己犠牲心が極めて強い。

 懸念材料は、正義感の強さゆえに依頼主の行為に対して反感を覚える可能性が高い点。

 断られた時のことを考えて、狼の家族を盾にする必要があると結論付ける。


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 不測の事態が発生した。

 海上で魔物から受けた襲撃の余波で船が破損、ツァイの小さな港町・ミャンバーへ緊急寄港することになった。

 しかし任務遂行において特に支障はない。


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 船の修復を待つ間、人食い鬼退治を頼まれた狼がコラクの村へ行くことになった。

 コラクの村は確か、当道場の元門下生・サカツの故郷だったはず。


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 サカツとは特に親しくはなく、印象に残っているのは、金銭や名誉への執着心が強かったことぐらいだ。

 なのに何もない故郷へ戻っていたのは意外だった。

 当方の任務については秘匿した上で多少の会話をしたが、あまり役に立ちそうにはなかったため、そのまま没交渉を選択した。


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 船は無事修復できたが、鬼退治の影響で狼が精神的に傷を負ってしまった。

 当方の任務への影響が危惧されたが、同行者である"狐"や"猫"が支えになり、すぐに立ち直れたようだ。

 特に前者が狼に与える影響は無視できないものがある。


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 私の歌を狼一行に聞かれてしまった。恥ずかしい。

 それとこの時、狼は他3人を浴場に侍らせ、奉仕させていたようだ。

 表面的には性的なものに興味が無さそうに見えていたし、潜在的には嫌悪していそうだったのに、意外である。


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 航行中、猫からしきりに戦いを挑まれるが、全てかわす。

 うかつにこちらの手の内を晒したくないのもそうだが、正直、勝利する自信がない。

 剣技のみならば狼を遥かに上回っていることを付記しておく。


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 アリゼイサに無事到着。

 ここで一度狼一行と距離を置き、遠方からの監視に戻ると共に、乳牛との接触を図る方針に切り替える。

 その際手持ちの呪符と火炎弾を渡し、恩を売っておいた。

 狼でなく狐を選んだのは、その方がより大きな返報性を見込めると判断したためである。


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 移動の日々。

 なお、高速移動のために使った費用は別途まとめて計上する。


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 ボエム・リタにて、うっかり宿泊する部屋の格を間違えて、経費を使いすぎてしまった。


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 ラフィネにて、空白の皿の構成員と接触、状況報告等を行う。

 相変わらず声が大きい女性である。


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 リレージュにて、空白の皿の構成員と接触、状況報告等を行う。

 その際、眼鏡を風に飛ばされ、割ってしまったので買い替えることになった。

 別に無くても任務に影響はないが、気分の問題だ。

 しかし、不注意者めとまた怒られてしまうだろう。


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 狼一行はフラセースへ向かうようだ。

 乳牛に、国境城塞で待ち伏せをするよう指示を出す。


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 狼一行と乳牛が計画通り接触、依頼を引き受けた。

 果たして、乳牛の狼一行に対する態度は高飛車だった。

 根は博愛的なのは承知しているが、もう少し素直になれないものだろうか。


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 狼は乳牛の父の説得に成功したらしい。

 また同時に、乳牛が狼に激しい恋愛感情を抱いたようだ。計算通りである。

 念の為、今回の件の返礼として狼一行と同行し、動向を随時報告してくれるよう事前に依頼はしたが、あの様子なら自発的に行ってくれるだろう。


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 乳牛の発言や文章はどうしてこうも装飾過多なのだろうか。


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 軽く失敗をしてしまう。

 狼一行がテルプの温泉に入った際、危うく見つかりかけてしまった。

 しかし何とか事無きを得た。


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 テルプの料理店で多く注文しすぎてしまい、食べすぎてしまうと共に経費を多く使ってしまった。

 美味しかったのだから仕方がない。


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 狼は年増好みのようだ。

 私の見立てでは、同年代の狐に好意が向いているように見えたのだが。

 加えて、豊満な体型を嗜好しているようなのに、よく分からない。

 任務に直接関係はないので、これ以上の言及は避ける。


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 依頼主から招集がかかったため、報告は乳牛に任せ、依頼主の本拠地へ向かう。


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 依頼主と任務の最終調整。

 準備が整ったため、次の接触で狼一行を連れてくるよう指示を受ける。

 なおこの期間中、乳牛からの報告によると、狼一行は聖都周辺の森で悪魔と交戦、蝶の試練を受けに行くなどしていたようだ。

 危険なことばかりよく行うものである。

 万が一を考え、第2候補以降も用意はしていたが、能力を考慮するとやはり狼が最適なので、無茶は控えてもらいたいものである。


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 狼一行の監視に戻る。

 時機を見計らい、接触して説得、連行する。


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 一行は蝶を故郷に置いていくようだ。

 時機としては最適だと思う。巻き込まなくて済む。


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 狼一行と接触を図る。

 猫も標的と深い因縁があり、交渉が思いのほか円滑に進んだのは嬉しい誤算である。

 無事、依頼主の下まで連れていくことができた。


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 標的の暗殺に向かう。


 ~ ~ ~


注)この期間は"最重要拠点"に潜入していたため、日誌を書けなかった。

  入り組んだ事情や、更なる重要機密が存在するため、詳細は別途記載する。


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 最重要拠点から帰還。

 依頼主からの2つ目の任務を達成し、残りの報酬を受け取る。

 報酬は本来の額を大幅に上回っていた(別途計上する)

 また、依頼主から個人的に追加の依頼――狼一行を無事に帝都から脱出させる――をされたことも付記しておく。


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 依頼主からの追加依頼も達成した。

 帝都が光の柱に包まれたが、任務を終えた今となっては当方が関知する必要はない。

 その後は最寄りの町・フケンで休息を取った後、港町・コウトウへ移動し、フラセースに向けて出港する。


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 船旅は順調。魔物にも襲われていない。

 しかし乳牛に元気がない。

 最重要拠点より脱出し、再会した際、狼に強く跳ねのけられたのが原因だろう。

 いや、それだけじゃない。再会以来、狼と狐の間に流れる、甘酸っぱさを伴う空気に気付き、苦しんでいるのだろう。


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 狼は、変わってしまったと思う。

 変えてしまったのは、私の責任だとも思っている。

 償いをしたいが、私に何が出来るだろうか。

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