カウントUP!?
昼頃に社に戻る。通信機能が故障しているので報告書のデータをUSB経由で上司のパソコンに伝送した。
その後来るべき裁きを受ける為、待機室へと移動した。
そこには待機モードに入っているメイドロボが数体、イスに座っていて目を閉じ、じっとしている。
空いてるイスに座りしばらくすると呼び出された。
そして会議室に通され、上司はイスに座ると書類を見ながらしゃべり始めた。
「報告書と動画データ見させてもらったよ。どうやら客にとっても疫病神だったようだな。しかし、あの若い娘も災難だったな。」
上司はこっちを見て下衆な男の薄ら笑いを浮かべると書類に目を通した。
「まぁ、君の解体処分は社の方でも承認されたのであとは業者に任せるだけだ。と、その前に備品を返してもらおうかな?」
「かしこまりました。」
返事の後に大量に付けたアクセサリーを一つづつ外してそれらを机の上に置いていく。
「ったく。疫よけのつもりか?その大量のアクセサリーは」
上司の皮肉を聞き流すとメイド服のワンピースに手をかける。ボタンを外すとストンと床に落ちてしまった。それを拾い上げ畳むと机の上においた。ロボットとはいえ一応下着は付けている。
骨格以外は生体部品なのでヒトの様に皮脂汚れが出る。それを防ぐ為だ。勿論これらも社の備品なので脱いでいく。そしてヒトで言うところの一糸纏わない姿へとなった。
一応、女性らしいふくよかな体つきに成型されてはいるが、表面はマネキンのようにツルンとしている。
備品の返却が済むと上司は背中に表示してあるバーコードの刺青を端末で読み取った。「ピッ」と無機質な音が会議室に響く。
端末のディスプレイに表示されたものと書類を付け合わせて「よし」と小声で呟くと電話を手に取り表で待機している解体業者に連絡をいれたようだ。
程無くすると作業着姿の男とスーツ姿の男が会議室に現れた。二人とも素っ裸のメイドロボに驚く様子はなかった。上司は
「これだよ。ヨロシク」
と、まるで粗大ごみを頼むかのような口調で業者を促した。
入室して来た業者に対して回れ右をして背中のバーコードをさらした。
スーツ姿のオトコが先程の上司のようにバーコードを端末で読み取り書類と付け合わせて
「こちらの内容に間違いはありませんか?」
と上司に確認を求めた。上司は「ん」と短く返事をして書類の控えを受け取った。
「ではこちらは私達のほうで確実に処分いたします。」
スーツ姿の男はそう言うとドアの方に歩き始めた。
すると作業着姿の男が背中をトンと軽く押した「後に続け」という事なのだろう。まるで囚人を扱うような感じだ。靴も履いてないのでペタペタという足音がする。
二人の男に挟まれるように会議室を出るとエレベーターに乗った。
ロボットなので全裸のままでも羞恥心はないのだがエレベーターという密室に入った途端、背後に立っている作業着姿の男の目線が気になり始めた。
粘着質なその目線は体をまるで舐めまわす様な感じで不快だ。
自社ビルとはいえ大きく無いので地上階へ直ぐついてしまう上に通用口も無い。ドアが開けばそのまま正面口から退館だ。
階数表示のランプがまるで解体へのカウントダウンのようだ。
遂に一階。地上階へエレベーターは着いてしまった。
ワンテンポおいてドアが開く。地上階らしく日の光が差し込み一瞬視界が真っ白になった。
スーツ姿の男が一歩踏み出そうとすると大声がエントランスには響き渡っていた。
「困ります!アポイント無い方はお通しできません!!」
「うるさいわね!私はあんたに用があるんじゃないの!!会社の人に用があるの!!」
「ですからアポイントをお取りになって…」
「そんな事してたら間に合わないから通しなさいよ!!」
どうやら入口の警備員と女性が揉めてるようだ。
スーツ姿の男に続きうつむき加減エレベーターを出た。
「ちょっとアンタ!そんな格好でどこ行くの!」
「えっ?ご主人様?」
聞き覚えのある声に呼ばれたような感じがしたので反射的に返事をしてしまった。
警備員と揉めている女性はなんとご主人様だった。