やっぱ☆ダメでした
雨は激しくなり、雨粒の叩きつける音が部屋の中までハッキリ聞こえるようにまでなった。
窓際まで寄って外気温をセンサーで探ってみる。
「あのままの格好だとご主人様寒いかも…。でも彼氏さんいるから心配ないか。」
通信機能が故障しているのでネットで天気の事を調べる事はおろか、ご主人様と連絡をとる事もできない。仕方が無いので部屋の中央に座り待機モードに移行する事にした。
目を静かに閉じて待機モードに入ろうとした刹那。玄関先で物音がした。ドアが開き「ザーッ」という物凄い雨音が聞こえる。
部屋の明かりで人影が映し出される。それがズブ濡れになったご主人様と気付くのに時間はかからなった。すぐまさ近寄り
「ど、どうしたんですか!?ズブ濡れじゃないですか!このままだと風邪ひいちゃいますよ!直ぐ着替え用意しますから!とりあえず体拭いて下さい!」
ご主人様のその異様な光景に驚きながらもケアの用意をする為回れ右をした。その後ろからペタペタと力無い足音が付いて来る。
ハンガーにかかってるバスタオルを取るとご主人様の肩に掛けた。
指先のセンサーが冷え切ったご主人様の状態を伝えて来る。
「お風呂沸かしますね。このまま冷え切った体のままだと本当に風邪ひいちゃいますから」
と言いながらご主人様の顔を覗き込む。
「…られた。」
「えっ?」
「フラれたの!!」
ご主人様は小さい体を震わせながら突然叫んだ。
「出向先で好き人が出来たんだって!それで私と付き合う事が辛いんだって!!その事伝える為にわざわざ仕事の合間ぬって私に会いに来たの!!」
今まで我慢してきた感情を一気に爆発させるようにご主人様は叫び続けた。顔は雨水と涙でグシャグシャだ。
「なんだか私バカみたい!一人で浮かれてて!今日フラれるのが解ってたら行かなかったわよ!てか、そんな事メールでもいいわよ!!」
やり場のない悲しみと怒りに満ちた目線がこちらに向けられる。
「大体アンタが来きゃこんな目に合わなかったわよ!!この疫病神!!」
疫病神
このフレーズを聞いた途端、全身の力が抜けその場にへたり込んでしまった。勿論、通信機能以外に異常はない。なぜそうなったのかは分析不能だ。
「えっ?ちょっとどうしたの?またどこか壊れちゃったの?」
「いや、ハハ…面目ない。突然フリーズしたみたいに体の力が抜けてしまいました。もう大丈夫です。自力で復旧できます。」
彼女は苦笑いを浮かべながらヨロヨロと立ち上がった。ロボットだけど外見はニンゲンそっくりにできてるからどうしても機械としてみる事ができない。気のせいか?顔色も良くない様な気が。
「ねぇ。本当に大丈夫なの?」「ご主人様はお優しいですね。こんな時でも私の事を気に掛けてくださる。」
「だって…」
私は出かかった言葉を飲み込んだ。彼女は首からぶら下げているアクセサリーの十字架を握りながら話し始めた。
「実は私、影で『疫病神』って呼ばれてるんです。私が担当するクライアントはナゼか必ず不幸に…それでセンターの連中が付けたアダ名が疫病神。」
彼女が突然へたり込んだ訳が解るような気がした。バツが悪くなり
「あ…。ごめん、まさかそんな事があったなんて私知らなかったから…。でも、それ少しヒドくない?」
彼女はうつむきながら黙って首を左右に振ると昼間のハイテンションが嘘のように淡々と話し続けた。
「それで、同じ様な事例が余りにも多発するから会社の方も気味悪がって…。それで、今回の案件でクライアントに不幸が起こると解体処分になる事になっているんです。」
「解体…って」
彼女の明るい性格とはあまりにも正反対でショッキングなフレーズに私は動揺してしまい、彼女の肩に目線を移した。
すると小刻みに震えていたのに気付いた。ハッとしてまた顔の方に目線を戻すと前髪が邪魔して目が見えないけど、頬に涙のようなものが伝っているのが見えた。
「私、ロボットだからよく解らないけど…。」
嗚咽まぎれに彼女はしゃべり続けた。
「疫病神って呼ばれないようにハデなメイクしたり!アクセいっぱい付けてみたり!メチャクチャ明るく振舞ったりしたけど…。」
彼女は泣きながらも必死に笑顔を作り私を見つめながらいつもの調子で
「やっぱ☆ダメでした」
と、言った。




