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番外 サイドB 双璧

 「それにしても、その桐生という男にこだわりすぎているんじゃないのか?どいつもこいつも。」

近衛の研究室。拷問を受けていた男は、近衛月斗の部下によって運ばれていった。

残ったのは近衛と、女のみ。

「それだけの過去があるということですよ。あなたは、本当にご存じないのですか?」

女はもうウンザリといったような表情で、

「だから知らないんだといったろ。そのような男。写真を見せられても全くわからん。・・・だが、こいつと似たような顔立ちの人間は、見たことがあるような気が・・・ ええい!ワタシを揺さぶるんじゃない!」

「そんなつもりはないんですが。」

近衛のそっけない返しに、女はあきれたような、疲れたようなリアクションをとる。

「そ、それより、君こそ叶真理という男を知っているかね。」

「最近よく聞く名前ですね。なにやら名の売れたテロリストやスナイパーを配下に加えているという。」

「その通り。聞くところによると、叶もそのきりゅうとやらに目を付けているそうじゃないか。彼もまた、君と同じように人間の心理について研究しているのかねえ。」

女は言い切ってから気づいた。近衛月斗が怒っていることに。まあ気が付いたところで女がなにか取り繕うこともないのだが。

「私を。そのような興味本位の野蛮な猿と一緒にしないで頂きたいですね・・・私たち『近衛』は、人間をより高みへと近づかせるために研究をしている。桐生先生の観察もその一環だ。」

「ふん、やけにプライドが高いから困るんだよ、君らは。ワタシには理解しかねるね。」

近衛はあきれたような女には見向きもせず、扉に向かう。そして、振り返らずに、

「まあ。私も研究対象は多いほうがいい。その叶真理とやらも、研究の一環となるならば好きにさせておきましょう。だが、目障りになるならば『近衛』・・・いえ、私の力で排除するだけです。」

鋼鉄の扉の横にある、カードリーダーにカードをかざす。すると、何トンあるのか、重い扉が開かれる。

「飯か?ならばワタシも呼ばれよう。」

「・・・勝手にしてください。」

「じゃ、お礼にワタシも桐生とやらを揺さぶってあげよう。そうすると君の研究も面白くなるんじゃ・・・」

「結構です。」

きっぱりと言い切ってしまう近衛に、女は明らかにショックを受けたようだ。

「な、なぜだキミ・・・!ひどいじゃないか。あまりに拒絶されるもんだから、ちょっと涙目になってしまったじゃないか。」

事実、女は意外に打たれ弱いらしく、今にも泣きそうになっている。

「あなたは面白くするよりかき乱すタイプでしょう。今回だって・・・」

「え、ええい!ワタシに説教するんじゃない!仮にも年上だぞ、キミ!」

「そんな見た目で年上なんて説得力がないでしょう。」

近衛のああいえばこういう攻勢に、女は言い返せなくなってしまった。いや、何か言おうとはしているのだが、論破する術が見つかっていないのだろう。ただただ地団太を踏んでいる。

そんな女を無視して、近衛は歩を進める。

「月斗様!そのような野蛮人からは離れてくださいまし。うつったら大変ですわ。」

地価の研究室を上がった、近衛の私室には、おそらく掃除をしているであろう白木梓の姿があった。明らかに女のことを侮蔑している。

「な、なんなんだ梓!いきなり罵倒すんじゃない!ただでさえワタシはすでに傷ついているというのに!」

女の訴えなど聞かずに、近衛と梓は談笑している。

「まだいたんですか?さっさと帰ってくれます?」

「ええ。それではまた。」

「キミたちはワタシをどうしたいんだ!?ワタシのキャラじゃないんだよ!」

軽くいじられキャラが定着してしまいそうな現状を嘆く女なのだった。

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