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真夜中の相談

前話の最後の方、少し付け足しました。

すいませんがそちらの方もよろしくお願いします。


 夜、いつもは静かなこの時間帯に、木の棒どうしがぶつかり合う鈍い音が響く。

悠介とグレイの稽古の音だった。この異世界では、夜といえば闇である。今夜は月明かりもあり、焚き火の明かりもあるが、それでもグレイさんが繰り出してくる木の棒を避けるのは難しかった。はっきり言って、この異世界に来て上がった身体能力がなければ今頃、青あざだらけだろう。

 何度目かになる、きつい一発をもらったあと、やっと稽古は終了した。


「お疲れ様です。二人とも、川で汗をながして来たらどうですか?」


 そこで、焚き火の傍でこちらを眺めていた


「ああ、そうして来る。火の番、頼むわ」

「俺は……少ししてから…行きます」


 少し休まないと動けそうになかった。それにしても、グレイさんは汗はかいていたが、疲れているようには見えなかった。

稽古は今日で二日目だった。一日目は素振りなど基本的なことをしたが、この身体能力のおかげですぐにある程度は出来るようになった。それに、時間もあまりなかったため、すぐに実戦を想定したものになった。予定では、あと三日で俺にとっての異世界初めての街になるエスタルという街に着く。日があるうちは移動となるため、稽古は自然と夜に行うようになった。このあたりは魔物はほとんどで無いらしい。出会ったときの状態が異常らしい。なので、あれから戦闘などは無くのんびりとした旅だったし、稽古とかもできたんだとか。

魔物というのは、あのゴブリンとか狼のことだ。その生態は不明で、人を襲うものから、無害なものまで様々。あと、食べれるものもいるみたいだ。もちろん、普通の動物もいる。そして、神獣がいる。神獣は魔物と違って知能があり、強大な力を持っている。とくに何か食べる必要は無く、しいて言えば、魔力を食べる。この世界には空気中に魔力が漂っていて、それを食べるというか吸収してエネルギーとしている。ペガサスとか竜とかが神獣に当たる。

魔法についてだが、自分の体内にある魔力を元に、呪文を詠唱することによって発動できるみたいだ。空気中にある魔力はうまく取り込む事ができないため、自分の保有魔力を使うしかない。しかし、保有魔力は個人差があり、魔法が使えない人もけっこういるみたいだ。実際、グレイさんとラインさんは使えないらしい。

何故か知っているというか、知っていることを思い出すような感じだった。



魔物がほとんどでないとは言え、やはり用心は必要。見張りは必要で、楽な一番目が悠介だった。

一人で焚き火を眺めていると、いろいろと考えてしまう。

この異世界に来て、死んで。と、思ったら生きてて。グレイさんとラインさんと出会って。何故か魔法が使えたり、身体能力が上がってたり、知識があったり。不安で不安でたまらないはずなのに、どこか冷静で。

そんなことを考えていたら、交代の時間になった。考えるのをやめて、とりあえず起こしにいく。


「ひどい顔をしていますね。なにか怖い事でも?」


 言われて、初めて自分が泣いている事に気づいた。あわてて、袖で目元を拭う。


「私に話してみませんか?少しは楽になるかもしれませんよ」


 言う気はなかったのに、自分が異世界から来た事などいろいろとしゃべってしまった。


「そんなことがありましたか。異世界というのは初めて聞きましたが、嘘じゃないようですね。話してくれてありがとうございます」


 そう言って、簡単に信じてくれた。信じてもらえるとは思わなかったので驚いた。というか、信じられなかった。


「グレイにも相談してみましょう。大丈夫、信じてくれますよ」


 そしてグレイさんにも同じ事を話した。


「信じられねぇが、お前を見る限り嘘じゃないみたいだな。異世界ってのは初めて聞いたぜ。悪いがなにも分からんな」


「あと、知っているとしたら……」

「神ぐらいだな。信託で何か分からないか?」


 ラインさんの言葉にかぶせる形で、グレイさんが提案した。


「神!?神様っているんですか!」

「ええ、女神様ですがちゃんといらっしゃいますよ」


(さすがファンタジー……。なんでもありだな…)

なんか感動した悠介だった。


「それで、信託ですが。あれは女神様からお声をかけてくれるのであり、こちらから何かを聞くことはできません。期待はしないほうが良いでしょう」

「信託でも無理となると……」


 重苦しい沈黙が場を支配する。

 それを誤魔化す様に、できるだけ明るい声で言う。


「いますぐ何かわからなければ困るというわけじゃないですから。ゆっくりと探していきますよ」

「まぁ、仕方が無いか。何かつかんだら教えてやる」

「こちらも何かわかったら連絡します」

「ありがとうございます」


 不安はもう、無かった。


「とりえず、お前は寝ろ」

「そうですね。ゆっくり休んでください」


(大丈夫。この世界でも生きていける。寝よ。明日もあるんだし…)






 あれから三日。

 予定通り、エスタルは目の前だった。


「でかいですね」


 言葉通り、目前には巨大な壁がある。高さは20メートルぐらいか。魔物の存在するこの世界では必要なものなのだろう。

 

「これでも規模で言えば中位だ。王都はもっとすげぇぞ」


 街に入るには金がいるが、もちろんそんなもの持っていない。なので、グレイさんが出してくれた。服については民族衣装ということにして、田舎から出てきたということにしておいた。


(かなり無茶な設定だと思うんだけどなぁ)

 

それでも普通に入れたのがすごかった。なんでも、服については少々きついが、田舎からでてくる人は多いらしい。



 着いたのは日が沈む少し前だったが、街はとても賑わっていた。さっき通ったのは南門で宿は西門の近くだそうだ。

 街に入ったおかげで、自分がどれだけ浮いているかよくわかった。


(し、視線が痛い。とりあえあず、明日必ず服を買いに行こう)


 

 グレイさん紹介の宿はきれいなところだった。少し値段は高いが、その分食事が美味いらしい。実際、五日ぶりの食事は最高だった。

 ベッドも、野宿だったこれまでとは比べようも無いほど良かった。

 明日のことを考える間もなく眠った。






 翌朝は、朝というより昼だった。

どうやら寝坊してしまったらしい。グレイさんたちは俺が起きるのをわざわざ待ってくれていたらしい。一階の酒場で朝から酒を飲んでいた。もちろんラインさんは飲んでいなかった。そして勧められた俺も、もちろん飲まなかった。

二人は、二日後には王都に向けてここを発つらしい。この街ではその準備をするそうだ。

 そして現在は服屋にいる。昨日、決心したとおり服を買うためだ。金は今朝、というか昼に作り出した魔水晶が元になっている。この世界では服はオーダーメイドみたなので、できるのは明日になった。視線が痛いのは諦めるしかないみたいだ……。それと、店の人にこの服(制服)を見せて欲しいと頼まれた。そのかわり、服の値段を安くしてくれるという話だった。このままの状態で返すという条件で、服を取りに来る時に交換ということになった。予備の服がないのだから仕方が無い。



 これからの方針として相談した結果、冒険者になることになった。情報を集めるとして、商人か冒険者がいいらしいが『商人なんて絶対に無理!』ということで冒険者に決まった。グレイさんが言うには、あれだけの魔法があれば充分やっていけるらしい。武器などは冒険者として登録した後の方が安くなるらしい。

 ということで、目指せ冒険者ギルド!とテンションを上げて行きたいが、この服装でいかなければいけないのだろうか。明日ではだめなのだろうか。………はい、だめですね。わかってます。わかってるつもりですから何も言わないで下さい!!


 視線が痛すぎて、おかしくなってきた悠介だった……。


誤字脱字、また感想などありましたらよろしくお願いします。

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