プロローグ
朝、気持ちの良い天気とは逆に、目覚めは最悪だった。基本的に朝がダメな人間の一人としては、それが普通なのかもしれないが。
「はぁ、いつものことながら眠い」
ずっと寝ていたいが、平日であるためそうもいかない。それにさっきから冬香さんが呼んでいる。育ててもらっている身としては迷惑をかけるわけにもいかない。早く一階の台所に行かなければ。
いきなりだが、俺の両親は俺ご小学五年生のときに他界している。今が高校二年生だから、6年前か。理由としては事故死。車に乗っているときに、横からトッラクがつっこんできたのだ。助かったのは俺だけ。あのときは泣いた。
まぁ、そんな俺を藤原夫妻が拾ってくれたわけだ。なので、できるだけ迷惑はかけたくない。
台所に行くと、達也さんがすでに朝食を終えて新聞を読んでいた。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
「おはよう、悠介くん」
二人とも、とても良い人だ。そして冬香さんは料理がとてもうまい。ついでに、藤原家の朝は基本、和食である。
この後は予定を合わして登校だ。
「はぁ」
さっきからため息ばかりついているが、学校がそこまで嫌いというわけじゃない。友達と話すのは楽しいし、それなりにいる。親友と呼べるやつだっている。じゃあ何が嫌なのかと言うと、授業が嫌なのだ。この考えには友人たちも賛同してくれると思う。俺は間違っていない…はずだ。たぶん……。まぁ、何はともあれ登校だ。
そこでふと、気付いた事がある。
世界ってこんなに暗かったっけ?
いや、現実逃避はやめよう。何があったかというと、穴に落ちたのだ。高校生にもなって穴にはまるとかありえない、と笑うかもしれない。しかし誰が玄関をでたら真下に穴があると予測できようか。できる人はいないはずだ、というかできたらおかしい。
それにしても、いつまで落ち続けるのだろうか。はっきり言って落とし穴のレベルじゃない。家の玄関、コンクリートだし。
そうこうしている内に、何故か光が見えてきた。
「いってぇ!」
いきなり地面に落ちた。顔からじゃなかっただけマシだったが、それでもかなり痛い。
俺が落ちた場所、そこは森の中だった。
「は?なんで?」
頭上を見上げると、そこにはどんどん小さくなっていく俺がさっきまで落ちていたであろう穴。そして現在、一人取り残される俺……。周りは木、木、木、完璧に森である。
「ここ、どこ?」
まぁ、当たり前の疑問だ。てか、ほんとにここ、どこだよ。夢オチか、夢オチなのか?
そう思うものの、さっき落ちた時の痛みが、これを現実だと教えてくれる。
「夢じゃない」
すごく認めたくないけどそうなる。
「どうしよう。マジでどうしよう。いや、大丈夫だ。そう、大丈夫だ。大丈夫なはずだ。いやいやいや、大丈夫じゃない。大丈夫じゃないよこれ。これ誘拐?え?誘拐されちゃった、俺?いやいや、俺、男だよ?一般人だよ?」
混乱して、言葉が変になってしまった。そして、誰もいないのに疑問を投げかけているが、当然返事はない。
…と思っていると、返事が返ってきた。というか、ただ茂みがゆれただけだが。
驚いてそちらを見ると、奇妙な生物がいた。たぶんゴブリンと思われる。
「いやいやいや、え?うそ。まじで?」
自分の目が信じられないが確かにゴブリンだった。あのファンタジーなやつ。緑色した醜いやつ。
そこで逃げればいいとわかっていながら、動くことはできなかった。目の前の光景が信じられなかったんだ。
そうしているうちに気づかれた。瞬く間に距離を詰められ、手に持った棒を振り下ろされる。そんなことになってもまだ、俺は動けずにいた。
そして、俺は――――
――――――死んだ。
初めまして、黒神 輝です。
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