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ミックス ジュース

作者: 高木美和



「なんでもかんでも、

 混ざっているほうが美味いねんで」


アキトはそう言って、あたしの頭をなでる。

それはなぐさめているのか、

励ましているのかとたずねたら、


「両方に決まっているやんけ」

と笑う。


あたしの父親は、カナダ人でダンという。

母親は日本人で桜子。

国籍の違う両親がどんないきさつで恋に落ちて

あたしが生まれたのかはさておき、

現在のふたりはカナダと日本、

別々で暮らしている。

あたしの顔は父親ゆずりだから、

桜子ママと歩いていると、

いったいどういう関係なの?という眼でみられる。

ママは茶道の先生をしていて

着物で歩くことが多いから、とくに。


「ガイジン」といじめられたのは小学校のとき。

中学にはいると、容姿が目立つから、

やっかみも入って「雑種」とからかわれた。

高校生活に慣れた頃には、

もう何を言われても「はいはい」って感じで、

一匹狼が板についてしまった。

友達が全く居ないわけではないけれども、

あたしをかばうことで、

自分まで仲間はずれにされてしまうことを

みんな恐れていた。


あたしなら大丈夫。

ひとりでも。


そういうと、友人は、

「そうよね、あなたはアメリカスタイルなのだから、

つるまなくても平気よね」

といわれた。

アメリカじゃなくてカナダだし、

人間だったらどんな扱われ方をしても

感じる事は同じじゃないのかな。

そういうときだけあたしの半分の日本人の血は、

どっかに忘れ去られてしまう。

それも理不尽。

人間という生き物全てが面倒くさくなったあたしに

声をかけてきたのが、アキト。


「苦いコーヒーやったら飲まれへんけど、

砂糖とミルク入れたら

おいしいコーヒー牛乳になるやんか」


大発見でもしたかのように、

怪しげな大阪弁モドキで

あたしの背中をばしんと叩く。

悪いけどあたしは、コーヒーはブラック派。


「ほんなら、ジュースや。ジュース。

マンゴーが苦手なヤツがこっちにおるやろ。

ほんでこっちはリンゴが苦手なヤツや。

でもな、二つの果物をあわせてミックスしたら

おいしゅうなって、

二人とも飲めるかもしれんやんか」


なんで飲み物だけで括るのか

よくわからなくて、つい笑ってしまった。


アキトは、

世界はミックスジュースでできている

という。

「純粋なものなんてありそうでホンマはないんやで」


あたしのこと、友達と思っているの?

それとも恋愛感情を持っているの?


撫でられてくしゃくしゃになった髪を整えながら

あたしがきくと、

アキトは、ちょっと照れた顔で


「両方ごちゃまぜに決まっているやんけ」

と言った。

「なにせ世界はミックスジュースで

できているんやからな」




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