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反復回数  作者: San


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5/6

反復回数 8000

湿っている。


石壁も、床も、空気も。

何も変わってはいない。


だが、情報が浮かぶ。


《侵入者》

《種族:人間》

《状態:正常》

《反復回数:8000》


数値を見た瞬間、体が反応する。

迷いはない。

――突っ込むしかない。


踏み込む。

床を蹴り、距離を一気に詰める。


侵入者は境界にまだ入らない。

目が開き、呼吸が整っている。

剣を握る手がわずかに震えているのを視界が捉える。


突進。

全力。

壁を蹴る音は、床に響かず空気だけが震える。


侵入者が動く。

避ける。

跳ねる。

回転する。

一つの攻撃をかわすたび、すぐに次の回避を繰り出す。

動きが止まらない。

無駄がない。

対等に、いや、少し優位に見えるほど正確だ。


腕を振る。

届かない。

侵入者は回避。

踏み込む。

刃が返る。

避ける。


間合いの密度が濃い。

何度も刃が交錯する。

風が裂ける。

わずかに痛みが走る。

――小さな傷。

それでも、足は止まらない。


再び踏み込む。

腕を振る。

避ける。

侵入者の剣が鋭く弾かれる。

反撃。

踏み込み、回避、跳ねる。

連続する動作の中で、わずかに魔物の肩に刃が擦れる。

傷が血となる。


視界の端で、侵入者の呼吸がわずかに乱れる。

驚きはない。

ただ、数千回を重ねた意志がそこにあるだけだ。


距離を詰め、タイミングを読む。

避けられる。

跳ね返される。

だが、攻撃の角度を変え、もう一度突き込む。

剣が振られる。

回避される。

だが、少しでも足を止めた瞬間を逃さない。


そしてその瞬間が来る。

侵入者が次の回避に全力を注いだわずかの隙。

呼吸がわずかに上ずったその瞬間。


腕を振る。

軌道を少し変える。

刃が当たる。


肉が裂け、血が飛ぶ。

衝撃で侵入者の体が揺れる。

膝が折れ、床に手がつく。


次の動きの瞬間、さらに踏み込む。

反撃を試みる腕が止まる。

剣を持ち上げる力が抜ける。

身体が傾く。


目がこちらを見る。

焦点が揺れ、驚きが残る。


一撃。

腕を振り下ろす。

斜めに切り込む刃が、隙間を突く。

侵入者の身体が崩れ、膝から崩れ落ちる。


呼吸は途切れ、動きが止まる。

数秒の静寂。

輪郭が崩れ、消える。


湿った空気だけが残る。

石壁も、床も、何も変わらない。

ただ、踏み込んだ衝撃だけが空間に残る。


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