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反復回数  作者: San


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4/6

反復回数 2380

湿っている。


 石壁も、床も、空気も、重さは変わらない。


 足音がする。


 通路の奥から、ひとつ。

 間隔は短く、速い。

 躊躇はない。


 光が揺れる。

 壁に影が走る。


 視界に情報が浮かぶ。


 《侵入者》

 《種族:人間》

 《状態:正常》

 《反復回数:2380》


 数字を認識する。

 ――多すぎる。


 考える必要はない。

 動く。


 床を蹴る。

 一気に距離を詰める。


 侵入者が境界に入る前。

 その手前で間合いに入る。


 侵入者の動きが止まる。

 目が開き、呼吸がわずかに荒くなる。


 剣はまだ上がりきっていない。


 口が開く。


「――っ」


 言葉にならない。


 振る。

 腕を振る。

 刃が襲う。


 侵入者が反応する。

 剣をすばやく振り返す。

 動きを避ける。


 踏み込み、回避、反転。

 次々と軌道を変えて避ける。

 動作は途切れず、無駄がない。


 だが、距離は詰まる。

 避けてはいるが、密度の高い間合いに飲まれていく。


 腕を振る。

 間に合う。

 避けられる。


 もう一度。

 刃が来る。

 侵入者が跳ねる。

 回避する。


 互いの呼吸が、通路の空気を震わせる。

 刃と剣の音は響かないが、振動が伝わる。


 踏み込む。

 間合いに入る。

 避ける、跳ねる、反転。

 速度が増す。

 連続する回避。


 侵入者の目が開く。

 驚き。

 焦りではない。

 ただ、瞬間、少しだけ眉が上がる。


 数字が示すものが、こちらの判断を促す。

 反復回数2380。

 何も迷う必要はない。


 踏み込む。

 先に動く。

 避けられる。

 だが、次の瞬間には別の角度から腕を振る。

 届く。

 肉が裂ける。


 侵入者が揺れる。

 膝が折れる。

 血が床に落ちる。


 呼吸が乱れる。

 しかし、再び剣を振る。

 次の回避。

 跳ねる。

 踏み込む。


 密度の濃い攻防が続く。

 刃と剣の間に生まれるわずかな空間を読み取り、腕を振る。

 血が飛ぶ。

 侵入者の身体が少し傾く。


 それでも、相手は止まらない。

 回避し、踏み込み、跳ねる。

 連続する避けの動作に、驚きが残る。


 距離を詰める。

 さらに踏み込む。

 腕を振る。

 避けられる。

 だが、すぐに別の角度から再び振る。


 衝撃。

 皮膚が裂け、血が跳ねる。


 侵入者が後退する。

 膝が床に触れる。

 呼吸が乱れる。


 目がこちらを捉える。

 驚きが瞬間、瞳に光る。


 それでも、侵入者は剣を握り直し、踏み込む。

 避ける、跳ねる、角度を変える。

 連続する回避。


 しかし、間合いの密度は変わらない。

 踏み込みの隙間に腕を滑り込ませる。

 刃が当たる。

 肉が裂け、血が飛ぶ。


 侵入者が倒れる。

 膝が折れ、床に手をつく。

 呼吸が荒くなる。


 視線が上がる。

 驚きが残る。


 口が動く。


「……なんで……こんな……」


 音が途切れる。


 手が動く。

 剣を持ち上げようとするが、力が入らない。

 腕が落ちる。

 身体が傾く。


 床に倒れる。

 呼吸が止まる。

 輪郭が崩れ、消える。


 静寂。

 湿った空気だけが残る。

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