反復回数 2
湿っている。
石壁も、床も、空気も。
変化はない。
足音がする。
通路の奥から、ひとつ。
間隔は一定に近い。
乱れは少ない。
光が揺れる。
壁に映る影が伸びる。
視界に情報が浮かぶ。
《侵入者》
《種族:人間》
《状態:正常》
《反復回数:2》
侵入者が現れる。
通路の境界で足が止まる。
こちらを見る。
呼吸はある。
浅いが、途切れない。
剣を構える。
腕の震えは小さい。
口が動く。
「ここで終わる」
声は出ている。
崩れない。
足が動く。
一歩。
床を確かめる動きはない。
距離を詰める方向が、直線的。
視線は外れない。
もう一歩。
踏み込みの準備が早い。
間合いに入る前に、身体が沈む。
来る。
踏み込む。
刃が振られる。
軌道は絞られている。
無駄が少ない。
速い。
避ける。
わずかに空気を裂く音が近い。
侵入者の足が止まらない。
次の動きに移る。
再度、踏み込む。
距離が詰まる。
刃が返る。
速い。
だが、届かない。
内側に入る。
侵入者の目が揺れる。
口が開く。
「――っ」
音にならない。
腕を振る。
当たる。
肉が裂ける。
血が跳ねる。
侵入者の身体が崩れる。
だが、完全には止まらない。
手が動く。
剣を握る。
無理に引き寄せる。
刃が来る。
遅い。
当たらない。
もう一度、振る。
終わる。
膝が落ちる。
床に倒れる。
呼吸が荒い。
途切れ途切れになる。
視線がこちらを捉える。
焦点が合っている。
口が動く。
「……次は……」
そこで止まる。
音が消える。
身体が動かなくなる。
数秒。
輪郭が崩れる。
消える。
床には何も残らない。
湿った空気だけが、そこにある。




