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天才魔導師(美女30)が、情けない恩師(42)を全力で守って落とします ~ポンコツ乙女の暴走ラブコメ~  作者: よっしぃ@書籍化


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第7話 日常の中の恋心と、紅の書の教え

 街での騒動から数日が経った。

 私たちは、工房での生活に慣れ始めていた。

 幸い、追手が隠し通路を見つけることはなく、工房は安全な隠れ家として機能していた。


 そして、私は――新しい服を着ていた。

 街で購入した、シンプルなワンピース。

 そして、作業用に動きやすい長ズボンとシャツも手に入れていた。

「よし、これで作業もしやすくなりましたわ」

 私は、長ズボンとシャツ姿で、作業台の前に立った。

 水着姿よりも動きやすく、そして――

『でも、少し残念ですわね。先生の視線を引きつける効果は、水着姿の方が上でしたもの…』

 私は、少しだけ寂しい気持ちになった。


「アリア君、その服、よく似合っているよ」

 先生が、作業台の向こうから声をかけてくれた。

「あ、ありがとうございます、先生!」

 私は、顔を赤らめながら答えた。

『先生が褒めてくださった…!嬉しい…!』


「マスター、アリア様。本日の作業計画を報告します」

 レティシアが、いつものように淡々と言った。

「工房の修復作業、完了率:78%。残りの作業は、防御結界の再構築と、魔力供給システムの調整です」

「順調だな。レティシア、君のおかげで作業が捗る」

 先生が、レティシアの頭を撫でた。

 レティシアは、最近、頭を撫でられると微かに微笑むようになった。

「どういたしまして、マスター」


 私は、その様子を見ながら、少しだけ複雑な気持ちになった。

『先生が…レティシアさんの頭を…!』

 いえ、違う。

 レティシアさんは、コロさんの魂を受け継いだ、先生の大切な相棒。

 私が嫉妬するなんて、おかしい。

 でも――

『でも…私も…先生にもっと構ってほしい…!』

 私は、自分の心の声に気づいた。

 そして――

『そうですわ!バイブルには、こういう時の対処法が書いてありましたわ!』

 私は、紅の書の「積極的なアプローチ」の章を思い出した。


「先生」

 私は、作業台から顔を上げた。

「ん? どうした、アリア君?」

「少し、休憩しませんか? ずっと作業をしていると、疲れますわよ」

 私は、優しく微笑んだ。

 これは、桃の書の「気遣いで心を掴む」テクニックだ。

「そうだな…確かに、少し休憩するか」

 先生は、工具を置いた。


「では、お茶を淹れますわ」

 私は、工房の片隅にある簡易キッチンへと向かった。

 日本から持ち帰った物資の中に、先生が大切にしていた緑茶があった。

 私は、それを丁寧に淹れた。

「先生、どうぞ」

 私は、湯呑みを先生に差し出した。

「ああ、ありがとう、アリア君」

 先生は、湯呑みを受け取り、一口飲んだ。

「…懐かしい味だ」

 先生の表情が、どこか遠くを見つめるような、優しいものになった。

「日本を、思い出しますか?」

「ああ…22年間過ごした場所だからな。色々と思い出がある」


 私は、先生の隣に座った。

 これは、紫の書の「距離を縮める」テクニックだ。

「先生…日本での生活は、どんな感じでしたの?」

 私は、興味深そうに尋ねた。

 実は、私は先生のことをもっと知りたかった。

 先生の過去、先生の思い出、先生のすべてを。

「そうだな…最初は大変だった。言葉も文化も違う世界で、一人で生きていかなければならなかった」

「一人で…」

「ああ。でも、日本の人々は優しかった。俺を受け入れてくれた」

 先生は、懐かしそうに語った。

「特に、俺を雇ってくれた会社の上司は、俺の父親代わりのような存在だった」

「父親代わり…」

「ああ。彼は、俺に日本語を教え、仕事を教え、生き方を教えてくれた」

 先生の瞳が、少し潤んでいる。

「でも…彼は、3年前に亡くなった」

「…そうでしたか」

 私は、先生の手をそっと握った。

 これは、桃の書の「悲しみを共有する」テクニックだ。

 先生は、驚いたように私を見た。

「アリア君…」

「先生…辛かったのですね」

 私は、優しく微笑んだ。

 先生は、私の手を握り返してくれた。

「ああ…でも、もう大丈夫だ。今は、君やレティシアがいてくれるからな」


 私は、先生の言葉に、心が温かくなった。

『先生が…私を必要としてくれている…!』

 これは、チャンスだ。

 私は、紅の書の教えを思い出した。

「相手の心が開いている時こそ、大胆に攻めるべし」


「先生」

 私は、先生の目を見つめた。

「私は…先生のお役に立ちたいのです」

「アリア君…君は既に十分、助けてくれているよ」

「いえ、それだけではなく…」

 私は、少し身を乗り出した。

 先生との距離が、近づく。

「私は…先生の心も…癒やしたいのです」


 先生は、一瞬固まった。

 私の顔が、先生の顔に近い。

 先生の息遣いが、聞こえる。

『これが…紅の書の「至近距離での囁き」…!』

 私の心臓が、激しく鳴り響く。

 でも、私は引かない。

 5冊のバイブルで学んだ、完璧な恋愛テクニックを、今こそ発揮する時だ!


「アリア君…」

 先生が、私の名前を呼んだ。

 その声は、少し震えている。

『これは…効いていますわ…!』

 私は、さらに顔を近づけようとした。


 その時――


「マスター、アリア様」

 レティシアの声が響いた。

 私は、ハッと我に返り、慌てて先生から離れた。

「な、何かしら、レティシアさん!?」

 私は、顔を真っ赤にしながら答えた。

「防御結界の再構築が完了しました。確認をお願いします」

「あ、ああ…分かった。今行く」

 先生は、立ち上がった。

 その顔も、少し赤い。


 私は、一人残されて、深くため息をついた。

『ああ…もう少しで…もう少しで先生に…!』

 でも、同時に――

『でも、これで先生の心は、確実に私に傾いているはず…!紅の書の教えは完璧ですわ!』

 私は、自信満々にそう思った。


 その後、私たちは防御結界の確認作業を行った。

 レティシアが再構築した結界は、完璧だった。

「さすがだな、レティシア」

 先生が、レティシアを褒めた。

「ありがとうございます、マスター。これも、アリア様の設計図のおかげです」

「アリア君も、素晴らしい仕事をしたな」

 先生が、私の方を見た。

 その視線は、先ほどよりも優しい気がした。

『先生…私を見てくださっている…!』

 私の心が、高鳴る。


 夕方、私たちは簡単な食事を取った。

 先生が作ってくれた、野菜スープ。

 日本の調味料で味付けされたそれは、今まで食べたことのない美味しさだった。

「美味しいですわ、先生」

「気に入ってくれたか。良かった」

 先生は、微笑んだ。


 食事の後、私たちはそれぞれの作業に戻った。

 先生は、日本から持ち帰ったデータの整理。

 レティシアは、工房のシステムの最適化。

 そして、私は――


 私は、作業台の前で、リカちゃん人形を見つめていた。

 この人形から学んだ「引き算の美学」。

 それは、レティシアの設計に活かされただけでなく、私の考え方にも影響を与えた。

『複雑なものが良いとは限らない…シンプルだからこそ、美しい…』

 私は、そう思った。

 そして――

『恋愛も、同じかもしれませんわね』

 5冊のバイブルには、様々な複雑なテクニックが書いてある。

 でも、本当に大切なのは――

『先生を想う、この気持ち…』

 私は、自分の胸に手を当てた。

 心臓が、温かく鼓動している。


「アリア君」

 先生が、声をかけてくれた。

「はい?」

「今日は、ありがとう。君がいてくれて、本当に助かっている」

 先生の言葉に、私は顔を赤らめた。

「い、いえ…私こそ、先生に助けられていますわ」

「そんなことはない。君は、俺にとって…大切な仲間だ」


 大切な仲間――


 その言葉を聞いて、私の心は複雑な気持ちになった。

『仲間…ですか…』

 嬉しい。

 でも、同時に――

『私は…仲間以上の存在になりたい…!』

 私は、そう思った。


 その夜、私は自分の布団の中で、5冊のバイブルを読み返していた。

 特に、黒の書の「最終段階」の章を。

『次は…もっと大胆に…もっと直接的に…!』

 私は、決意を新たにした。

 黒の書には、「最後の決め手は、直接的な告白」と書いてある。

 でも――

『今は、まだその時ではありませんわね。もう少し、先生の心を掴んでから…』

 私は、慎重に計画を練った。


 と、その時――


 工房の外から、何やら物音が聞こえた。

 私は、ハッと起き上がった。

「先生!」

 私は、小声で先生を呼んだ。

「聞こえた…誰かいるな」

 先生も、既に起きていた。

 レティシアも、起動状態に戻った。

「マスター、工房の外に3つの生体反応を検知しました。おそらく、追手です」

 レティシアが、冷静に報告した。


 私たちは、息を潜めた。

 工房の外から、兵士たちの声が聞こえる。

「この辺りに、アリア=セレスティアの隠れ家があるはずだ」

「でも、どこにも見当たらないぞ」

「もっと探せ! スヴェン殿下の命令だ!」


 私は、先生の方を見た。

 先生は、私の目を見て、静かに頷いた。

 そして、私の手を握った。

『先生…』

 私は、先生の手を握り返した。

 この手の温かさが、私を安心させてくれる。


 しばらくして、兵士たちの声が遠ざかっていった。

「…行ったようだな」

 先生が、小声で言った。

「でも、また来るかもしれません」

 私は、不安そうに言った。

「大丈夫だ。この工房は、そう簡単には見つからない。君が巧妙に隠してくれたからな」

 先生は、私を励ますように微笑んだ。


 私たちは、再び布団に戻った。

 でも、私は眠れなかった。

 先生の手の温かさが、まだ残っている。

『先生…私を守ってくださった…』

 私の心が、温かくなる。


 そして、私は思った。

『やはり…私は、先生が好きですわ…!』

 この気持ちは、もう止められない。

 5冊のバイブルで学んだテクニックも大切だけれど――

 一番大切なのは、この気持ち。

 先生を想う、この心。


『必ず…必ず、先生に私の気持ちを伝えますわ…!』

 私は、そう心の中で誓いながら、眠りについた。


 枕元には――5冊のバイブルと、日本のファッション雑誌が、しっかりと置かれていた。

 私の戦いは、まだ終わらない。

 いや、これからが本番だ――。

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