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天才魔導師(美女30)が、情けない恩師(42)を全力で守って落とします ~ポンコツ乙女の暴走ラブコメ~  作者: よっしぃ@書籍化


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第6話 変装作戦と、街での騒動

「では、街への偵察の準備をしましょう」

 私は、作業台の前で立ち上がった。

 相変わらず、水着姿だ。

「アリア君、その格好で街に出るわけにはいかないだろう」

 先生が、困った表情で言った。

「分かっていますわ。ですから――」

 私は、工房の隅に残っていた布や古い衣類を集め始めた。

「これらを使って、簡易的な服を作りますわ。技術者として、このくらいは朝飯前ですもの」

 私は、自信満々に答えた。

『5冊のバイブルで恋愛術を完璧にマスターした私なら、服の一つや二つ、簡単に作れますわ!』


 30分後――


「……できましたわ」

 私は、自作の服を見せた。

 それは、大きな布を体に巻き付け、紐で固定しただけの、極めて原始的な衣装だった。

 まるで、古代の女性が着るような、ローブのような形。

「アリア君…それは…」

 先生が、微妙な表情で言った。

「ど、どうですか? 機能的ですわよ?」

 私は、少し不安になりながらも、胸を張った。

「いや、その…確かに体は隠れているが…街で着るには、少し…」

 先生は、言葉を濁した。


「アリア様」

 レティシアが、冷静に言った。

「その服装は、『社会的適切性』の観点から、基準を満たしていません。街で着用した場合、注目を集める可能性が98.7%です」

「そ、そんなに…?」

 私は、自分の服を見下ろした。

 確かに、布を巻き付けただけで、所々から肌が覗いている。

『これは…失敗でしたわ…!』


「仕方ない。俺の服を貸そう」

 先生は、日本から持ち帰った古着の中から、比較的マシなものを取り出した。

「これなら、少しは体を隠せるだろう」

 先生が差し出したのは、大きめのシャツとズボンだった。

「ありがとうございます、先生」

 私は、感謝しながら受け取った。

 そして、先生とレティシアに背を向けて、着替え始めた。


 数分後――


「……どうですか?」

 私は、振り返った。

 先生のシャツは、私には大きすぎて、まるでワンピースのようになっている。

 ズボンは、腰の部分を何度も折らなければ履けなかった。

 全体的に、ダボダボだ。

「ああ…その…悪くない」

 先生は、なぜか顔を赤らめながら言った。

『先生が…また顔を赤らめて…!これは…「彼シャツ」効果ですわね!』

 私は、日本のファッション雑誌で見た「彼シャツ」という概念を思い出した。

 男性の服を女性が着ることで、可愛らしさと親密さを演出できる、という恋愛テクニックだ。

『完璧ですわ!自作の服は失敗でしたけれど、結果的にバイブルの教え通りになりましたわ!』


「でも、このままでは街で目立つな」

 先生が、顎に手を当てて考えた。

「アリア君、君の顔は王都でも知られている。変装が必要だ」

「変装…ですか?」

「ああ。髪を隠して、顔も少し隠せれば…」

 先生は、工房の中を探し始めた。

 そして、古いフードつきのマントを見つけた。

「これを被れば、少しは目立たなくなるだろう」


 こうして、私はフードを深く被り、先生の服を着て、街へと向かうことになった。

 レティシアも、同じようにマントを被った。

「レティシア、君も目立つからな。アンドロイドだとバレたら面倒だ」

「理解しました、マスター。『変装』=『目立たなくする』行為。データに記録します」


 私たちは、工房を出て、王都の街へと向かった。

 森を抜け、街の外れから、そっと中に入る。


 王都の街は、相変わらず活気に満ちていた。

 商人たちの声、人々の笑い声、そして――

「聞いたか? アリア=セレスティアが、追放されたエージェントを匿っているらしいぞ」

「本当か? あの天才技術者が?」

 私たちは、立ち止まった。

 街の人々が、私たちのことを噂している。

「スヴェン殿下が、アリアの工房を捜索したらしいが、何も見つからなかったそうだ」

「でも、アリアの姿も見えない。どこに隠れているんだろうな」

 私は、フードを深く被り直した。

『やはり…街中で噂になっていますわ…』


「気にするな、アリア君。噂はいずれ収まる」

 先生が、小声で言った。

「ええ…でも、先生のせいではありませんわ。これは、スヴェン殿下の横暴のせいですもの」

 私は、先生を励ますように言った。


 私たちは、街の市場へと向かった。

 まずは、物資の調達だ。

「マスター、リストを確認します」

 レティシアが、AIスマホを見ながら言った。

「魔力触媒×5、精密工具セット×2、防御結界用魔石×3、そして――アリア様の服×数着」

「服は、あの店で買えるだろう」

 先生が、衣料品店を指差した。


 私たちは、衣料品店に入った。

 店内には、様々な服が並んでいる。

「いらっしゃいませ…あら?」

 店主の女性が、私たちを見て、少し不思議そうな表情をした。

「何か、お探しですか?」

「ああ、この娘に服を…」

 先生が、私を指差した。

「まあ、お嬢さん。その服…随分とお大きいですわね」

 店主が、私のダボダボの服を見て、微笑んだ。

「これは…その…」

 私は、言葉に詰まった。

「ご兄弟の服を借りていらっしゃるのね。分かりますわ。では、お嬢さんのサイズに合う服を選びましょう」

 店主は、私の手を引いて、店の奥へと連れて行った。


 先生とレティシアは、店の入り口で待っていた。

「マスター、質問があります」

 レティシアが、小声で言った。

「何だ?」

「アリア様は、なぜあなたの服を着ていると、嬉しそうなのですか?」

 レティシアの質問に、先生は少し考えた。

「そうだな…女性は、大切な人の服を着ることで、安心感を得るらしい」

「安心感…?」

「ああ。まるで、その人に守られているような気持ちになるんだそうだ」

「理解しました。『服』=『安心感』+『守られている感覚』。データに記録します」

 レティシアは、真剣な表情で頷いた。


 しばらくして、私は店の奥から出てきた。

 店主が選んでくれた、シンプルなワンピースを着ている。

 淡いブルーの、清楚な印象の服だ。

「どう…ですか?」

 私は、少し恥ずかしそうに先生に尋ねた。

「ああ…似合っているよ、アリア君」

 先生は、優しく微笑んだ。

『先生が…褒めてくださった…!』

 私の心臓が、高鳴る。

「他にも、何着か選んでいただきましたの。これで、当面は大丈夫ですわ」

 私は、店主に感謝しながら、服を購入した。


 店を出た後、私たちは市場を歩き続けた。

 魔力触媒や工具を扱う店を回り、必要な物資を少しずつ集めていく。


 その時――


「あれは…アリア=セレスティアではないか!?」

 突然、誰かの声が響いた。

 私は、ハッと振り返った。

 そこには、スヴェン殿下の兵士たちが立っていた。

「やはり! フードを被っているが、その顔…間違いない!」

「くっ…!」

 先生が、私の手を掴んだ。

「走るぞ、アリア君! レティシア、君もだ!」

「了解しました、マスター」


 私たちは、市場の中を走り出した。

 兵士たちが、後を追ってくる。

「待て! アリア=セレスティア! お前を反逆罪で逮捕する!」

「反逆罪…!? 私が一体何を…!」

 私は、走りながら叫んだ。

 でも、兵士たちは聞く耳を持たない。


「こっちだ!」

 先生が、路地裏へと飛び込んだ。

 私たちも、その後を追う。

 路地裏は、入り組んでいて、兵士たちの動きを撹乱できる。

「マスター、最適な逃走ルートを計算します」

 レティシアが、AIスマホを見ながら言った。

「次の角を右、その後すぐ左、そして――」

 レティシアの指示に従い、私たちは路地裏を駆け抜けた。


 しばらくして、兵士たちの声が聞こえなくなった。

「…どうやら、撒けたようだな」

 先生が、息を切らしながら言った。

「はあ…はあ…何とか…」

 私も、息を整えた。

 普段は工房に籠もっているため、こんなに走ったのは久しぶりだ。

「アリア様、マスター。生体反応を確認したところ、追手は現在地から500メートル以上離れています。安全です」

 レティシアが、冷静に報告した。


「ありがとう、レティシア。君の分析能力に助けられた」

 先生が、レティシアの頭を撫でた。

「どういたしまして、マスター」

 レティシアは、少しだけ嬉しそうに見えた。


 私たちは、路地裏の奥にある、人目につかない場所で一息ついた。

「やはり、街中は危険だな。スヴェン殿下の兵士たちが、至る所で警戒している」

「でも、必要な物資は、ほとんど手に入れましたわ」

 私は、持っている荷物を確認した。

「問題は、これからどうやって工房に戻るかだ」

 先生が、顎に手を当てて考えた。


「マスター、提案があります」

 レティシアが、手を上げた。

「何だ?」

「私が囮になり、追手を別の方向に誘導します。その間に、マスターとアリア様は工房へ戻ってください」

 レティシアの提案に、先生は首を横に振った。

「いや、それは危険だ。君を失うわけにはいかない」

「マスター、私はアンドロイドです。万が一捕まったとしても、自爆機能により情報漏洩を防ぐことができます」

「ダメだ!」

 先生が、強い口調で言った。

「君は、コロの魂を受け継いだ大切な仲間だ。簡単に失うわけにはいかない」

 先生の言葉に、レティシアは一瞬動きを止めた。

「……マスター。私は、『大切な仲間』ですか?」

「当然だ」

 先生は、迷いなく答えた。

 レティシアは、その言葉を聞いて、微かに微笑んだ。

「理解しました。では、別の方法を考えます」


 私は、先生とレティシアのやり取りを見ながら、思った。

『先生は、本当に優しい方ですわ…レティシアさんのことも、大切に想ってくださって…』

 そして――

『私も、先生に大切にされたい…!』

 私は、自分の心の声に気づいた。

『いえ、既に先生は私を大切にしてくださっていますわ。でも、私は…もっと…!』


「アリア君」

 先生が、私に声をかけた。

「は、はい!」

 私は、慌てて返事をした。

「君の工房には、隠し通路のようなものはないか? 表から入るのは危険だ」

「隠し通路…ありますわ!」

 私は、思い出した。

「工房の地下に、古い坑道が繋がっていますの。そこから入れば、追手に気づかれずに戻れるはずですわ」

「よし、それを使おう」


 私たちは、王都の外れにある、古い坑道の入り口へと向かった。

 そこは、かつて鉱山として使われていた場所だが、今は誰も近づかない。

「ここですわ」

 私は、草木に覆われた坑道の入り口を指差した。

「中は暗いですけれど、私が道案内しますわ」


 私たちは、坑道の中へと入った。

 レティシアの瞳が、微かに光を放ち、暗闇を照らしてくれる。

「レティシア、君は便利だな」

「ありがとうございます、マスター。これも、アリア様の優れた設計のおかげです」

 レティシアの言葉に、私は少し誇らしい気持ちになった。

『レティシアさんを作ったのは私ですものね…技術者として、これは完璧な仕事でしたわ!』


 坑道の中を進むこと数十分――


「見えましたわ。あれが、工房への入り口です」

 私は、坑道の奥にある、隠し扉を指差した。

「よし、中に入ろう」


 私たちは、隠し扉を開け、工房の地下へと入った。

 そして、地下から工房の本体へと上がる。

「ただいま…ですわ」

 私は、ホッとしながら言った。


「今日は、危ない目に遭ったな」

 先生が、疲れた表情で言った。

「でも、必要な物資は手に入れましたわ。それに――」

 私は、購入した服を見せた。

「服も手に入りましたもの。これで、もう水着姿で作業しなくても済みますわ」

「ああ…それは良かった」

 先生は、安堵したように微笑んだ。


 でも、私の心の中では――

『でも、時々は水着姿で先生の前に…いえ、バイブルによれば「適度な刺激」が大切ですものね…!』

 私の「先生攻略作戦」は、まだまだ続いていた。


 そして、私は決意した。

『次は、もっと大胆に…もっと積極的に…!』

 5冊のバイブルと、日本のファッション雑誌に書かれた、あらゆる恋愛テクニックを駆使して――

 私は、必ず先生を落として見せる!


 その夜、私は自分の布団の中で、バイブルを読み返していた。

 特に、紅の書の「積極的なアプローチ」の章を。

『次は…この作戦を実行しましょう…!』

 私は、ニヤリと微笑んだ。

 そして、枕元に5冊のバイブルと日本のファッション雑誌を置き、眠りについた。


 私の戦いは、まだ始まったばかりだった――。

●   作者からのお知らせ  ●


ここまで読んで下さりありがとうございます。 作者のよっしぃです。


この物語は長く続く構想を持って執筆しております。 皆様の「ブックマーク」や「評価」が、日々の執筆の大きな励みになっています。


彼女たちの旅を最後まで見届けていただけるよう、ぜひ応援よろしくお願いします!

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