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天才魔導師(美女30)が、情けない恩師(42)を全力で守って落とします ~ポンコツ乙女の暴走ラブコメ~  作者: よっしぃ@書籍化


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第5話 水着姿の研究と、乙女の戦略

 レティシアの起動から数日が経った。

 私たちは、荒らされた工房を少しずつ片付けながら、レティシアの調整と、今後の計画を練っていた。

 そして――私は、相変わらず水着姿だった。

 黒地に青いラインの入った、水中活動用特殊スーツ。

 他に着るものがないのだから、仕方がない。

『でも…これは逆にチャンスですわ!紅の書には「大胆な肌見せで視線を釘付けに」と書いてありましたもの!』

 私は、自分の状況をポジティブに捉えていた。

 先生は、時折私の方を見ては、慌てて視線をそらす。

『先生の視線を感じますわ…!さすがバイブルの教え…完璧ですわ!』


「マスター、アリア様。本日の作業計画を提示します」

 レティシアが、AIスマホの画面を見ながら、淡々と報告する。

「工房の修復作業、完了率:35%。必要物資リスト:魔力触媒×5、精密工具セット×2、防御結界用魔石×3」

「ありがとう、レティシア。君の分析能力は本当に助かる」

 先生が、レティシアの頭を優しく撫でた。

 レティシアは、一瞬動きを止め、その瞳が微かに揺れた。

「……マスター。この行為は、何の目的がありますか?」

「え? いや、その…褒めているというか、感謝の気持ちを…」

「理解しました。『頭を撫でる』=『褒める』『感謝』。データに記録します」

 レティシアは、真面目な表情で頷いた。

 私は、その様子を見て、少し複雑な気持ちになった。

『先生が…レティシアさんの頭を…!』

 いえ、違う。

 レティシアさんは、コロさんの魂を受け継いだ、先生の大切な相棒。

 私が嫉妬するなんて、おかしい。

 でも――

『でも…私も…先生に頭を撫でられたい…!』

 私は、自分の心の声に驚いた。

『いえいえ!私は恋愛指南書で完璧に学びましたわ!こういう時は、黒の書の「計算ずくの無邪気さ」を発揮すべきですわ!』


「先生」

 私は、作業台から顔を上げ、先生に向かって微笑んだ。

「私も、頑張っていますわよ? レティシアさんの調整、順調ですもの」

 私は、少しだけ上目遣いで先生を見つめた。

 これは、黒の書に書いてあった「甘えるような視線で、男性の保護欲を刺激する」テクニックだ。

「あ、ああ…そうだな。アリア君の技術力には、本当に助けられている」

 先生は、私の方を見て――そして、一瞬固まった。

 私の水着姿が、先生の視界に入ったからだ。

「そ、それより! アリア君、その格好で作業を続けるのは…その…大変じゃないか?」

「大丈夫ですわ。このスーツ、動きやすいですもの」

 私は、自信満々に答えた。

『先生が気にしてくださっている…!これは紅の書の効果ですわ!』


 その時、レティシアが不思議そうに私を見た。

「アリア様。質問があります」

「何かしら、レティシアさん?」

「アリア様の服装は、『水中活動用特殊スーツ』と定義されていますが、現在は陸上です。なぜ、通常の服を着用しないのですか?」

 レティシアの質問は、至極真っ当なものだった。

「それは…その…」

 私は、一瞬言葉に詰まった。

 まさか「工房が荒らされて服がないから」とは言えない。

 それに、この水着姿が先生の視線を引きつけているのも事実だ。

「これは…戦略的な選択ですわ!」

 私は、咄嗟にそう答えた。

「戦略的…?」

 レティシアが首を傾げる。

「ええ! この軽装なら、作業効率が上がりますし、動きやすいですし…それに…」

 私は、少し頬を染めながら続けた。

「先生の視線を…いえ、先生の注意を引くことで、コミュニケーションが円滑に…」

「理解できません。マスターの視線を引くことと、作業効率の関連性が不明です」

 レティシアは、真面目な表情で言った。

『レティシアさん…まだ恋愛を理解していないのですわね…!』

「レティシアさん、これは『高度な対人戦略』ですのよ。いつか、あなたにも教えて差し上げますわ」

「高度な対人戦略…データに記録します」

 レティシアは、AIスマホにメモを取った。


 先生は、私たちのやり取りを見て、苦笑していた。

「アリア君…君は本当に…」

「何ですの、先生?」

「いや…何でもない。君らしいな、と思ってな」

 先生は、優しく微笑んだ。

『先生の笑顔…素敵…!』

 私の心臓が、高鳴る。


 その後、私たちは工房の修復作業を続けた。

 私は水着姿で、精密な機械部品を組み立てる。

 先生は、日本から持ち帰った物資を整理する。

 レティシアは、私たちをサポートしながら、様々なことを学んでいく。


 昼過ぎ、私たちは少し休憩を取ることにした。

「アリア君、腹は減っていないか?」

 先生が尋ねてきた。

「ええ、少し…」

 実は、かなり空腹だった。

 朝から作業に没頭していたため、食事を忘れていたのだ。

「よし、じゃあ俺が何か作ろう」

 先生は、日本から持ち帰った調味料を取り出した。

「日本の味を、少しでも再現してみるよ」


 先生が作ってくれたのは、簡単な野菜炒めだった。

 でも、日本の醤油とコショウで味付けされたそれは、今まで食べたことのない、不思議な美味しさだった。

「美味しい…!」

 私は、感動しながら野菜炒めを食べた。

『先生が作ってくれた料理…!これは…桃の書の「手料理で心を掴む」の逆バージョン…!先生が私のために…!』

「気に入ってくれたか? 日本では、これは家庭料理の基本中の基本なんだ」

「基本…!? こんなに美味しいのに…!?」

 私は、驚きの表情で先生を見た。

『日本の技術は、料理にまで…!』


 レティシアも、私たちの食事を興味深そうに見ていた。

「マスター、アリア様。私も、食事をする必要がありますか?」

「いや、君はアンドロイドだから、食事は必要ない。エネルギーは魔力で補給できるからな」

「理解しました。では、『食事』とは何のために行う行為ですか?」

 レティシアの質問に、先生は少し考えた。

「そうだな…栄養補給のためでもあるが、それだけじゃない。人と人とのコミュニケーションでもあるんだ」

「コミュニケーション…?」

「ああ。一緒に食事をすることで、心が通じ合う。それが、食事の大切な役割なんだよ」

 先生の言葉に、レティシアは真剣な表情で頷いた。

「理解しました。『食事』=『栄養補給』+『コミュニケーション』。データに記録します」


 私は、先生とレティシアのやり取りを見ながら、思った。

『先生は、本当に優しい方ですわ…レティシアさんに、丁寧に教えてくださって…』

 そして――

『私も、先生ともっとコミュニケーションを取りたい…!』

 私は、5冊のバイブルと日本のファッション雑誌を思い出した。

 あの本に書いてあった、様々な恋愛テクニック。

『そろそろ、次の作戦を実行すべきですわね…!』


 食事の後、私たちは再び作業に戻った。

 でも、私の頭の中では、既に次の「先生攻略作戦」が回転し始めていた。


 夕方、先生が言った。

「そろそろ今日の作業は終わりにしよう。アリア君も、疲れただろう」

「いえ、私はまだ大丈夫ですわ」

 実は、かなり疲れていた。

 でも、先生の前で弱音を吐くわけにはいかない。

「無理をするな。明日も作業は続く。今日はゆっくり休もう」

 先生は、優しく言った。


 その夜、工房の片隅に簡易的な寝床を作り、私たちは休むことにした。

 先生は、工房の一角で布団を敷いた。

 レティシアは、充電用の魔法陣の上で休止状態に入った。

 そして、私は――

 先生から少し離れた場所に、布団を敷いた。

 でも、私の心は落ち着かなかった。

『先生と…同じ部屋で…眠る…!』

 これは、5冊のバイブルには載っていなかった状況だ。

 いや、待って。

 確か、紫の書には「夜の静けさの中で、心の距離を縮める」という章があったはず。

『これは…チャンスですわ…!』


 私は、そっと起き上がり、先生の方を見た。

 先生は、既に眠っているようだった。

『先生の寝顔…穏やかで…優しくて…』

 私は、しばらく先生の寝顔を見つめていた。

 そして――

『今なら…先生に近づいても…』

 私は、そっと先生の方へと這い寄った。

 水着姿のまま、音を立てないように。

 先生の布団の近くまで来た時――

 先生が、寝言を言った。

「…コロ…ありがとう…な…」

 私は、ハッと動きを止めた。

『先生…まだ、コロさんのことを…』

 私の胸が、キュッと締め付けられた。

 先生は、コロさんのことを、本当に大切に思っていたのだ。

 そして、今も――

『私は…先生の心を癒やせているのかしら…?』

 私は、自分の無力さを感じた。

 でも――

『いえ、諦めてはいけませんわ!私には、5冊のバイブルがありますもの!必ず、先生を幸せにして見せますわ!』

 私は、そっと先生の布団に手を伸ばし――

 そして、先生の手に、自分の手を重ねた。

 先生の手は、大きくて、温かかった。

『先生…私が、必ずあなたを幸せにしますから…』

 私は、そう心の中で誓いながら、そっと手を離した。

 そして、自分の布団に戻った。


 その夜、私は幸せな気持ちに包まれながら、眠りについた。

 枕元には――5冊のバイブルと、日本のファッション雑誌が、しっかりと置かれていた。


 翌日――


 私が目を覚ますと、先生は既に起きていた。

 そして、レティシアと何やら話をしている。

「おはようございます、先生」

 私は、あくびをしながら挨拶した。

「ああ、おはよう、アリア君。よく眠れたか?」

「ええ、ぐっすりですわ」

 私は、微笑んだ。

 でも、内心では――

『昨晩、先生の手に触れたこと…バレていないかしら…!?』

 私は、少しドキドキしていた。


「アリア様、おはようございます」

 レティシアも、挨拶してくれた。

「おはよう、レティシアさん」

「本日の予定を確認します。工房修復作業の続き、物資調達のための街への偵察、そして――」

 レティシアが言葉を止めた。

「そして?」

「アリア様の服の調達、です」

 レティシアは、私の水着姿を見ながら言った。

「マスターと私で協議した結果、アリア様の現在の服装は『作業効率』『防御力』の観点から問題ないと判断されましたが、『社会的適切性』の観点から、通常の服を用意すべきという結論に至りました」

『え…?』

 私は、一瞬困惑した。

『服を…用意する…?でも、この水着姿は、先生の視線を引きつけるのに最適なのに…!』

「でも、レティシアさん。私はこの水着で十分ですわよ?」

「アリア君」

 先生が、真剣な表情で言った。

「君がその格好で平気でも、俺が…その…困るんだ」

「え…?」

「いや、その…君は美しいから…いや、違う…その格好だと、作業中に気が散って…」

 先生が、珍しく言葉に詰まっている。

『先生が…困っている…?』

 私は、ハッと気づいた。

『もしかして…私の水着姿が、先生にとって刺激的すぎたのかしら…!?』

『これは…紅の書の「大胆な肌見せ」が効きすぎたということ…!?』

『でも、効きすぎて先生が作業に集中できないのは、本末転倒ですわ…!』

 私は、少し反省した。

「分かりましたわ、先生。では、服を用意しましょう」

「ああ…すまない、アリア君」

 先生は、申し訳なさそうに言った。


 こうして、私たちは街へと偵察に出ることになった。

 物資を調達し、そして――私の服を手に入れるために。

 でも、私の心の中では――

『服を手に入れても、時々はこの水着姿で先生の前に…いえ、バイブルによれば「適度な刺激」が大切…!完璧な戦略ですわ!』

 私の「先生攻略作戦」は、まだまだ続いていた――。

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