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天才魔導師(美女30)が、情けない恩師(42)を全力で守って落とします ~ポンコツ乙女の暴走ラブコメ~  作者: よっしぃ@書籍化


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第42話 絶望に射す一閃、騎士の覚醒

 リリアの胸元の青い宝玉が、無慈悲なカウントダウンを刻むように、その明滅の速度を上げていく。


 残り時間は10分を切っていた。


 私は必死に魔力を練り上げ、宝玉のエネルギーに干渉しようと試みるが、その力はあまりにも強大で、私の魔力は弾き返されるばかりだった。


 レティシアさんもリリアのシステムへのハッキングを続けるが、高度なプロテクトに行く手を阻まれている。


「くっ…ダメですわ…! このままでは…!」


 私の顔に絶望の色が浮かぶ。


 先生もまた、焦燥感に歯噛みしていた。


 その時、先生の瞳に、鋭い光が宿った。


「アリア君、レティシア!」


 先生の声には、先ほどまでの焦りとは異なる、確かな決意が込められていた。


「リリアのコアから放出されるエネルギーのベクトルを特定し、その指向性を一点に集中させることは可能か? アリア君は魔力で、レティシアは物理的なエネルギーフィールドでそれを補助してほしい。俺が、その歪みの中心点を制御する!」


「先生…? 何をなさるおつもりですの…?」


 私は不安げに尋ねた。


 レティシアさんも【マスター、現在の状況下で、未知の空間現象に直接干渉するのは極めて危険です。成功確率は…】と言いかけたが、先生はそれを遮った。


「少しばかり、専門分野でな。成功確率が低くても、やるしかないだろう。俺に任せろ」


 その言葉には、有無を言わさぬ力強さと、仲間からの信頼を求める響きがあった。


 私とレティシアさんは一瞬顔を見合わせ、そして力強く頷いた。


 先生はリリアの前に進み出ると、両手をゆっくりと掲げた。


 先生の全神経が、リリアの胸の宝玉から発せられる空間の歪みと、そこから漏れ出す奔流のようなエネルギーに集中していく。


「アリア君、今だ! 宝玉の真上に、君の持つ最大の魔力で、エネルギーを一点に圧縮するようなフィールドを形成してくれ!」


「は、はいですわ!」


 私は戸惑いつつも、先生の指示に従い、全魔力を集中させてリリアの宝玉の上空に魔力のレンズのようなものを形成した。


【レティシア、その魔力フィールドの外周を、君のエネルギーシールドで補強! そして、コアから漏れ出す余剰空間エネルギーのベクトルを常に算出し、俺に伝えろ!】


【了解、マスター! 空間エネルギーベクトル、リアルタイムで送信します!】


 先生は、目を閉じ、深く呼吸をした。


 先生の両手から、淡い金色のオーラのようなものが立ち昇り始める。


 それは魔力とは異なる、先生自身が長年研究してきた、空間そのものに干渉する微細なエネルギー制御技術だった。


 先生の手が、まるでオーケストラの指揮者のように、滑らかに、そして力強く動き始める。


 先生の動きに合わせて、リリアの周囲で暴走していた空間の歪みが、少しずつ、しかし確実に制御され、私が形成した魔力レンズへと吸い込まれていくように見えた。


 それは、常人には理解できない、神業のような光景だった。


 私は息を呑み、レティシアさんの光学センサーも激しく明滅を繰り返す。


 先生の額からは玉のような汗が流れ落ち、その顔は極度の集中で蒼白になっている。


 しかし、先生の両手は寸分の狂いもなく動き続け、暴走寸前だったリリアのコアエネルギーは、徐々にその輝きを穏やかなものへと変えていった。


 そして、ついにリリアの胸の宝玉の明滅が完全に止まり、周囲を覆っていた空間の歪みも、まるで嘘のように霧散した。


「…やった…のか…?」


 先生は、全身の力が抜けるのを感じながら、その場に膝をついた。


 先生の消耗は激しい。


「先生!」


 私は駆け寄り、先生の体を支えた。


 レティシアさんが報告した。


【セレスティア・零式の自爆シーケンス、完全に停止。体内エネルギーコア、安定状態に移行。…マスター、素晴らしい技術です。私のデータベースにも記録のない、未知の空間制御理論です】


 その時、静かに佇んでいたリリアの金色の瞳から、一筋の涙が流れ落ちた。


「……あ……あたたかい……これが……涙……?」


 彼女は、自分の頬を伝う温かい雫に戸惑うように触れ、そして、ゆっくりと先生と私を見つめた。


 その瞳には、もう虚無の色はなく、生まれたばかりの生命のような、純粋で、そしてどこか切ない光が宿っていた。


「…ありがとう……ございます……」


 か細い、しかし確かな意志のこもった声が、静かなホールに響いた。


 先生は、私に支えられながら、リリアのその言葉と表情を見て、深く、そして穏やかな安堵のため息をついた。


 私は――思った。


『先生…素晴らしいですわ…! こんな技術を…お持ちだったなんて…!』


 私の心の中で、先生への想いが、さらに深まっていた。


 そして――私は決意した。


『この子…リリアさんを…私たちの仲間として…大切にしよう…!』


 『硝子の少女』リリアの悲しい運命は、先生の隠された力と、私たちの絆によって、今、確かに変わり始めた。


 しかし、工房の謎と、スヴェン殿下の脅威はまだ残っている。


 私たちと、そして新たに「心」を取り戻し始めたリリアの、本当の冒険は、これから始まるのかもしれない――。

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