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天才魔導師(美女30)が、情けない恩師(42)を全力で守って落とします ~ポンコツ乙女の暴走ラブコメ~  作者: よっしぃ@書籍化


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第29話 天使の猛攻(?)と、騎士の陥落(そして芽生える愛おしさ)

          ◇

 エルリック様の隠れ家での夜が明けた。

 

 私は、とてもすっきりと目覚めた。

 

 昨夜も、先生の隣で、とても素敵な睡眠を過ごしたからだ。

 

 先生の温もりは、やっぱり最高だった。

 

『桃の書には「男性の温もりに慣れ始めることで、恋は深まる」と書いてある…!』

 

 私は、とても嬉しかった。

 

          ◇

 

 今日はいよいよ、『古代の自動工房』へ向けて、最終準備だ。

 

「おはようございます、先生! 今日はいよいよ『古代の自動工房』へ向けて、最終準備ですわね!」

 

 私は、元気いっぱいの声と共に工房に現れた。

 

 その手には、何やら金属製の小さな箱と、設計図らしき羊皮紙の束が握られている。

 

 先生は、私の太陽のような笑顔に一瞬見惚れそうになるのを必死でこらえ、咳払いをして意識を切り替えた。

 

『紫の書には「太陽のような笑顔は、男性の心を揺さぶる」と書いてある…!』

『計算通りですわ…!』

 

「ああ、そうだな。食料と水の確保、装備の最終点検、そして…アリア君、それは何だ?」

 

 先生が私の手の中の金属の箱を指差した。

 

 私は、目を輝かせた。

 

「ふふん、よくぞ聞いてくださいました! これは、わたくしが昨夜寝る前に閃いた、探索効率を飛躍的に向上させる新発明、『万能小型探索支援ユニット・プチアリアンズ試作一号機』ですの!」

 

 パカリと箱が開けられると、中から現れたのは全長15センチほどの、デフォルメされた私自身にそっくりの人形型ゴーレムだった。

 

 ご丁寧に、私が以前着ていたフリフリのドレス(ただし金属製で、よく見ると関節部分に小型ブースターらしきものまで付いている)をミニチュアサイズで着用している。

 

『完璧ですわ…!


 「……アリア君。これは、その…なんだ?」

 

 先生の額に青筋が浮かんだ。

 

 私は、気にせず続けた。

 

「可愛らしいでしょう? ですが、見た目に反して高性能なのですわ! この『プチアリアンズ』は、自律的に先行偵察を行い、魔力探知、罠の発見、さらには簡単な障害物の除去までこなせますの! しかも、この子の瞳から放たれる『キラキラビーム』(仮称)は、敵の戦意を一時的に喪失させる効果も…あるかもしれません!」

 

 私は、胸を張って力説した。

 

『紅の書には「技術への情熱は、男性の心を動かす」と書いてある…!

 

 先生は、深いため息をついた。

 

 しかし、先生の目には、今までとは少し違った色が宿っていた。

 

 私の発明への情熱を見て――何か、別の気持ちが芽生えているのかもしれない。

 

「…分かった。その、プチ…アリアンズ、か。実戦投入は慎重に検討するとして、まずはその性能とやらを見せてもらおうか。ただし、キラキラビームとやらは俺に向けるなよ、絶対に」

 

「はい、先生! お任せくださいまし!」

 

 私は嬉しそうに頷くと、早速プチアリアンズの起動準備を始めた。

 

 レティシアさんは、「ユニットの基本設計思想は合理的ですが、外装デザインによる敵対勢力への心理的影響については、さらなるデータ収集が必要です」と冷静に分析を加えている。

 

『レティシアさん…さすが…!

 

          ◇

 

 出発の準備が整い、私たちはエルリック様に別れを告げた。

 

「ふぉっふぉっふぉ、まあ、せいぜい気張るんじゃな。こいつは餞別じゃ」

 

 エルリック様は、古びた革袋と、一枚の羊皮紙の地図を先生に手渡した。

 

「その地図は、儂が若い頃にちょいと調べた『工房』への近道じゃ。ただし、ちいとばかし『面白いもの』が出迎えてくれるかもしれんがのう」

 

 私は、エルリック様の言葉に心強くなった。

 

『エルリック様…本当にありがとうございます…!』

 

          ◇

 

 エルリック様の隠れ家から地上へと続く、薄暗く、そして足場の悪い昇降階段。

 

 先頭を行く先生が、振り返って私に手を差し伸べた。

 

「アリア君、ここは危ない。俺の手を掴んでろ」

 

 その言葉に、私は一瞬驚いたように目を見開いた。

 

『え…?先生が…私の手を…?

 

 『蒼の書には「男性が手を差し伸べる時、それは心の開放の証」と書いてある…!』

 

 私の胸がポカポカと温まった。

 

 私は、とても嬉しそうに微笑むと、小さな手を先生の大きな手に重ねた。

 

「はい、先生!」

 

 その声は、いつもより少しだけ弾んでいた。

 

 先生の手は、大きくて、温かくて、とても安心できる。

 

 昨夜の温もりと同じような、とてもポカポカとした感覚が、私の体の中を流れていった。

 

『桃の書には「繋がれた手の温もりは、恋の始まりを告げる」と書いてある…!』

 

 私は、先生の背中をじっと見つめた。

 

 その背中は、頼もしくて、かっこよくて――

 

 私の頬が、ほんのりと赤く染まった。

 

『なぜ…私の頬はこんなに熱いのかしら…?

 

 レティシアさんは、そんな私たちの様子を静かに見守りながら、自身のセンサーで周囲の警戒を怠らない。

 

 彼女のディスプレイには、私には見えないが――

 

【マスターとアリア様の生体反応に同期傾向を検知。相互依存関係の深化、及び親密度の顧著な上昇を確認】

 

 というメッセージが、淡い光と共に表示されていた。

 

          ◇

 

 リューンの喧騒を後にし、私たちは新たな目的地「古代の自動工房」へと続く、未知なる道へと足を踏み出した。

 

 先生の手は、私の小さな手を優しく包んでいた。

 

 温かい。とても温かい。

 

『紅の書には「共に歩む道は、恋の道へと変わる」と書いてある…!』

 

 私は、先生の手の温もりを感じながら、静かに思った。

 

『計算通り…いえ…計算以上の…

 

 しかし、その瞬間――

 

 私の胸の中で、何か別のものが動いた。

 

 バイブルの教えとは、少し違った感覚。

 

 温かくて、柔らかくて、とても大切にしたい何か。

 

 それが何なのか、私はまだ、はっきりは分からなかった。

 

 ただ――先生の手の温もりの中で――私は、とてもとても幸せだった。

 

          ◇

  ――第一部『スーツ美人と再生の序曲』 完――

          ◇

 

 ※次回、第二部『古代工房と陰謀の影』へ続く…

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