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天才魔導師(美女30)が、情けない恩師(42)を全力で守って落とします ~ポンコツ乙女の暴走ラブコメ~  作者: よっしぃ@書籍化


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第18話 泥だらけの帰還と、裸の検診(未遂・天然版)

 命からがら廃坑を脱出した私たちは、泥と煤、そして地下水にまみれて、ほうほうの体でエルリック様の隠れ家へと転がり込んだ。

 

「はぁ……はぁ……」

 私は、壁にもたれかかり、荒い息をついた。

 

 自慢の特殊水着も泥だらけで、もはや元の色が分からないほどだ。

 

 先生は、床に大の字になっている。

 全身が痛そうで、呼吸も荒い。

 

「申し訳ありません、先生……。わたくしの解析が遅れたせいで……」

「気にするな。あれは俺の指揮ミスだ。敵の戦力、特にあのギデオンという男の規格外さを読み違えていた」

 

 レティシアさんが、自身のボディから排出される蒸気と共に報告する。

「マスター、アリア様。敵の追跡はありません。しかし、今回の戦闘でエネルギー残量が30%まで低下。武装の一部も損耗しました」

 

「……完敗だな」

 先生が、悔しそうに言った。

 

 『エネルギーコア』は手に入らず、ギデオンには手も足も出なかった。

 でも、生きて戻れた。

 それだけが救いだ。

 

 奥からエルリック様が出てきて、私たちの惨状を見て目を丸くした。

「なんとまぁ……派手にやったようじゃな。まさか、あの『煙幕』を使ったのか?」

 

「爺さん……!」

 先生は上半身を起こし、エルリック様を睨んだ。

「あれは煙幕じゃない! 小型爆弾だ! おかげで生き埋めになりかけたぞ!」

 

「ふぉっふぉっふぉ、結果オーライじゃろう? 威力は保証付きじゃ」

 悪びれもせず笑うエルリック様に、先生は脱力したため息をついた。

 

          ◇

 

 一息ついたところで、私は医療キットを持ってきた。

 

「先生、じっとしていてください。腕と背中に擦り傷が……消毒しますわ」

 

 私は、まだ水着の上にブランケットを羽織っただけの姿で、甲斐甲斐しく先生の手当てを始めた。

 

『紫の書には「傷ついた男性を癒すことで、距離が縮まる」と書いてある…!』

『これは、まさにそのシチュエーション…!』

 

「……っ、痛ッ」

「我慢してくださいまし。……先生、無茶をしすぎです。もし先生が倒れたら、わたくしたちはどうすれば……」

 

 消毒液を塗る私の手が、微かに震えている。

 本当に、心配だった。

 

 先生は、私の不安げな瞳を見て、痛みをこらえて微笑んだ。

 

「すまん。だが、君たちが無事でよかった。あそこで君が水着になってくれなかったら、俺たちは今頃、泥水の底だ」

「先生……」

 

 私の頬が赤らむ。

 

『先生が…私の水着を認めてくださった…!』

『計算通り…いえ、計算以上ですわ…!』

 

「はい……! 次は、わたくしがもっと先生をお守りしますから! この特殊スーツも、さらに改良して……!」

 

 包帯を巻き終えると、私たちの間に温かな空気が流れた。

 死線を越えたことによる、確かな絆。

 

『桃の書には「困難を共に乗り越えることで、二人の絆は深まる」と書いてある…!』

『これは…まさにその通りですわ…!』

 

 ――と、ここで終わればいいのだが。

 

 私は、ふと何かを思い出した。

 

「ところで、先生」

 私は、真面目な顔で先生を見た。

「わたくしの方も、激流に揉まれてあちこちぶつけてしまったようなのです。……背中や太ももの裏など、自分では見えない箇所の怪我の有無を、確認していただけませんこと?」

 

「えっ」

 

 先生が固まるより早く、私は羽織っていたブランケットをバサリと床に落とした。

 

 現れたのは、泥汚れこそあるものの、その機能美と扇情的なラインを隠しきれない、例の特殊水着姿だ。

 

『蒼の書には「合理的な行動は、男性に信頼される」と書いてある…!』

『これは、怪我の確認という合理的な行動ですわ…!』

 

「特に、このヒップラインのあたりの装甲が薄くて……内出血していないか心配で……」

 

 言いながら、私は水着の肩紐に手をかけ、それをゆっくりと下ろし始めた。

 

「ちょ、ちょっと待てアリア君!? な、何をしようとしている!?」

「え? ですから検診を。服の上からでは分かりませんでしょう? 合理的に考えて、脱ぐのが一番かと」

 

 私はキョトンとした顔で、さらに水着をズリ下げようとする。

 

『紅の書には「大胆な行動は、男性の心を揺さぶる」と書いてある…!』

『これは…まさに大胆な行動…!』

 

「だーーーーっ!! ストップ! ストップだ!!」

 

 先生は顔を真っ赤にして叫び、両手で目を覆った。

 

「お、俺には無理だ! 刺激が強すぎる! 頼むからやめてくれ!」

「あら、先生はゴーレムのメンテナンスはお得意でしょう? わたくしの体も似たようなものですのに」

「全然違うわ!!」

 

 先生は、助けを求めるように叫んだ。

「レティシア! レティシア見てくれ! 君のスキャン能力で、アリア君の怪我をチェックしてくれ! 頼む!」

 

「了解しました、マスター」

 

 レティシアさんがウィーンと駆動音を立てて近づき、無表情で私の全身をスキャンする。

 

「スキャン完了。打撲および擦過傷、数カ所あり。ただし、軽微です。緊急の処置は不要」

 

 そして、ついでとばかりに先生の方を向き、冷淡な声で付け加えた。

 

「それよりもマスター。現在の心拍数が平常時の180%を超過しています。血圧も急上昇中。アリア様の『脱衣行動』に対する過剰なストレス反応、あるいは性的興奮の可能性が高いと推測されます。鎮静剤を投与しますか?」

 

「いらん!!」

 先生は、膝から崩れ落ちた。

 

「まあ! 打撲程度でしたのね! ありがとうございます、レティシアさん!」

 

 私は、ぱぁっと花が咲いたような笑顔でレティシアさんの手を取った。

 

「よかった……もし骨にヒビでも入っていたら、先生のお役に立てなくなってしまうところでしたわ。安心しました!」

 

『これで、安心して次の作戦に挑めますわ…!』

 

 先生は、何か深いため息をついている。

 

 でも、私はただ純粋に、自分の体の心配(=戦力ダウンの懸念)をしていただけだ。

 

『なぜ、先生はあんなに慌てていらっしゃったのかしら…?』

 私は、少し不思議に思った。

 

          ◇

 

「……はぁ。とにかく、だ」

 先生は、気を取り直して真剣な顔を作った。

 

「今回の敗因は、敵の戦力を見誤ったことと、我々の『手数』不足だ。ギデオンのような個の力が強い相手には、面で制圧する必要がある」

 

 偵察、陽動、そして戦闘支援。

 三人だけでは限界がある。

 

「……小型の自律型ゴーレム。それがあれば、戦術の幅が広がるはずだ」

 

 先生の言葉に、私も技術者の顔に戻って頷いた。

 

「はい、先生! 実はわたくし、いいアイデアがありますの!」

 

 私は、目を輝かせた。

 

『これは…私の技術を見せる絶好のチャンス…!』

『蒼の書には「知的な提案は、男性に尊敬される」と書いてある…!』

 

 悔しさと、少しのドタバタを糧に、私たちは再び立ち上がる。

 

 リベンジへの準備が、ここから始まるのだ。

 

 そして、私の「先生攻略作戦」も――

 新たな段階へと進もうとしていた。

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