第1話 ハジマリ
「よしっ、こんなもんかな」
春からの大学生活に向けて、神代家の長男、神代透は荷物整理をしていた。
───ピラッ
「ん?」
気分転換に散歩でもしようかと立ち上がると、何か落ちたのが目に入った。
「なんだ...?...これは...写真?」
写真には、幼いころの自分と大人2人、そして大きな鳥居が写っており、裏には「神哭山」とだけ書かれていた。
「一緒に写ってるの...もしかして俺の両親か...?」
俺は幼い頃の記憶がない。
両親も幼い頃に亡くなっているらしいが、それも祖父から聞いた。
だから当然この写真にも、この場所にも見覚えはなかった。
「じいちゃんに聞いてみるか」
気になった俺は、この写真の人物とその場所について祖父に聞いてみた。
「こりゃあまた随分と懐かしいものを見つけてきたなぁ。
ここはな、神哭山っつってな、でっかい神社があって、この山の神を祀ってたんよ。
まぁ、あんまりここの神様についてはいい噂は聞かなかったがな、もう昔の話だし、当時はよくお参りやら祭りに行ったもんだ。
んで、ここに写ってるのはその神社の鳥居と、お前の両親だな。
しかしまぁよくこんな綺麗な状態で残ってたもんだ。」
「へぇ〜、なるほどね。ここって、今もまだあるの?」
「あぁ、まだあるとは思うが、もう管理されてねぇからなぁ。昔は賑やかなもんだったが、今はもう廃れちまってるだろうなぁ。」
「そっかぁ、わかった。ありがとう!」
「...で、ここってどこにあるの?」
祖父は少し考え込んで重々しく口を開く。
「お前...ここに行くのか?」
「うん...だって俺と両親の思い出の場所だろ?俺、あんまり両親のこと知らないし、ここがどんな所だったのかも気になるしさ。」
「...まぁ、今のお前なら問題ないか。あまり詳しくは言えんが気をつけろよ。」
そう言って祖父はその地の住所を書いて俺に渡してくれた。
あと、なんかお守りみたいな物も渡された。
木彫りの狐みたいな感じでちょっと可愛い。
俺は祖父の教えてくれた住所をもとに、神哭山へと出発するのであった。