告白
朝、萱島神社に参拝した。京阪電車は大みそかから正月にかけて、伏見稲荷などへの特別列車を出している。ほとんどが伏見へ行くようで、各駅停車の電車は空いていた。特にパナソニックの本社をメインにしている西三荘駅は休みで閑散としていた。萱島駅は少し変わっていて、高架のプラットフォームに下にある萱島神社の御神木が飛び出している。改札を出ると道瀬が待っていた。ラインであけましておめでとうの交換をしていたが、再びかしこまって頭を下げた。人は少ないかなと思っていたが、意外にたくさんいた。そもそも小さい。
おみくじを引いた。
「吉」
「わたしも」
何だかなと笑い合うと、
「交換しない?」
道瀬が提案した。結んでいくのではないのかなと思ったが、高浜も了解した。
「ここにね」
道瀬はガチャのカプセルに交換したおみくじを入れた。高浜もポケットに忍ばせていたカプセルに同じようにした。
「結ぶのは今度来たときに。お礼しに来ないといかんやん。結果はわからんけど」
「何頼んだん?」と高浜。
「天神さんやで」
「そうか」
「他のこと頼んだん?」
特に理由などないが、これまでやってきたのだから神頼みはしないと決めていた。それでも合格できるようにと頼んだ自分がいた。
「という感じ」
「結局頼んでるやん」
道瀬は晴れやかに笑った。憑き物が落ちたようだ。駅のファストフードに入った。カウンターに並んで座ると、ポテトのLサイズと高浜は珈琲と道瀬はアイスティーを頼んだ。
「ちょっと聞いてええかな」
道瀬のカップの縁の目が警戒した。
「嫌なら答えんでええねん。何であんなところのガチャ回そうとしたん?」
「あれなあ。振られてん。信じてたのになんて言うたら嫌な奴やんな」
もっと気持ちがざわめくかと思ったが意外に冷静に聞いていた。たぶん話してくれたことのうれしさがまさっていたのだろう。
「電話、出んの変や思ったやろ?思われてるわて思ってた。振られてから何回か電話してきたけど、出てしもたら、わたし自身どうなるかわからんし。年末まで置いとく決めてん」
道瀬は手帳型のケースを開いて、高浜の前で「たかし」の電話番号を消した。履歴に残った電話番号から着信拒否、ラインもブロックしてして「これでおしまい」とパタンと閉じた。
「ええの?話さんで」
「もう散々話して、あっちから友だちに戻ろうて言われてん。『あけおめ』来たわ。でも返さへんでん。六条の御息所にはなれん」
「たぶん御息所もなろうと思うてなったんやないからな。なるまいとしても抑えれんだ。苦しんだ末やねんな。話してくれてありがとう」
「ガチャのおかげやねん。あのときガチャ回したら空っぽやったやん。何か笑えてきてん」
「僕なんて二回回した」
「怒らんといてな。絶対怒らんといてな」
「怒ること?」
「この人何してるの?って思うたらおもしろくておもしろくて。家族に空っぽのガチャ回した話したら呆れられて、二回も回した子がおる言うたら、真顔であんたら大丈夫?って」
高浜は苦笑いでごまかした。たぶん道瀬がいなければ、二回三回回していた。
「わたしは高浜くんのマネしてるねん。引っ張ってもらってる気持ち」
「乗りきるしかないやん。もう僕はどんなもん引きずっててもゴールするんや」