クリスマス
今日も各駅停車で帰宅した。道瀬は私立の高校に 通っていたが、どこか通るだろうと思っていたら落ちたという。僕はそこそこ勉強していたのに落ちた。しかし三年間ちゃんと何をしていたのかなと責める気持ちもある。
「クリスマスの次すぐお正月なんて変やね」
「十月くらいにしてもらうとかええかもね」
「イエス様は許してくれへんやん」
「マリア様の出産記念日は祝わんのかな」
「考えたことないわ。生まれてきたんやなくて生んだんやもんね。また明日」
道瀬は千林で降りて手を振ってくれた。
僕も小さく手を振り返した。
少し照れくさい。
僕は理科基礎をおさらいした。塾では共通テスト対策をしなければならないと言われていたが、学校では二次対策をし続けた。共テで点を獲らないと二次のチャンスもないのに、学校の言うように難しい問題していて玉砕した。
塾のセンセの言葉がこびりついている。
「一年か二年かけて専門家が作成してくるテストやで。対策せんと落ちるぞ」
浪人すると報告に行くと、
「高浜くんが信頼しようと思う言葉を言われへんだセンセにも責任ある」
と謝られた。
お礼は合格だ。
道瀬もライバルになるのか。一緒に合格できたらいいなと呟いた。と甘すぎる。ついこれまでの自分からは出てこない言葉に驚いた。
「隣におるだけでライバルなんて思うてたら人生つまらんやろ」
何となく理解できる気がする。道瀬がライバルだと思えない。もしかして塾のセンセは正しいこと話してくれていたのかもしれない。森に迷い込んだ僕は今日からすべきことが理解できた気がする。僕は道瀬にラインした。
「これから毎日共テ対策するわ。過去問解きまくる。スランプやってん」
「わたしもそうしてみようかな」
「がんばろう」
「おう」
僕は塾のセンセにラインした。見てくれているかなと不安だったけど、すぐに既読がついた。
「共テ対策します」
『気づいた?目の前のテスト対策せん奴が二次の権利なんて得られん』
疑っていたと送ると、
『ナメとんのか』
猫のスタンプが送られてきた。現文はどうしたら安定するか教えてくれと頼んだ。
『作者には訴えたいもんあるはずやん。古文も絵も同じや。高浜くんにも生きてきた経験があるやん。だから考えて読め。探すな』
もっと丁寧な言い方あるだろうと思いながらも僕はニヤついて読んでいた。
「みんなで合格したいです」
『好きな子でもできたんか』
「そんなんじゃないですけど」
これからしばらく共通テストの過去問解いて弱点潰そうと考えた。二次は後だ。
『おまえは一人やないで。いろんな人の意見も聞いたらええ。他人と競争するなよ』
道瀬からラインが来た。
『わたしも高浜くんのマネしてええかな』
「お互い合格したいね」
『ね!』