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79 花婿探し

 チャン局長の計らいで、ひみこと両親の面会が実現することとなった。


 日本語族保護局が、ショッピングセンターにあるレンタル会社にエアカーを手配した。ひみこは、保護局のある大統領府までエアカーで移動する。ひみこが成人になった日、アレックスと二人で訪ねたのと同じ建物だ。

 テーブルと椅子しかない小さな打合せ室に案内された。

「ご両親が到着するまでお待ちください」と、担当者は水の入ったボトルをテーブルに置いて出ていった。


 ショッピングセンターの管理室に比べるとゆったりしているが、やはりテーブルも椅子も実用一辺倒で味気ない。

 人心地ついたひみこは、喉を潤そうと、担当から貰った透明なボトルの栓を開けて、水を口にする。


「あれ! めちゃくちゃ美味しくない?」


 普段、ホテルで飲んでいる水に比べ、苦みがなく飲みやすい。この水は、たまにアレックスに連れてってもらった郊外の研究所で出される水と同じぐらい美味しい。


「そうかあ……ここ、偉い人たちが働いてるんだよね」


 ひみこは「この世界」への理解を深めつつも、待ち時間をどう過ごそうか思案する。

 親からのビデオメッセージを思い出す。

 なぜ彼らは自分を捨て、今まで会おうとしなかったのか? 結婚しないと会わない、と言い張ったのか?


「そうだ。お婿さん募集ってできるの? タマ」


「にゃあ、この公式サイトでひみこからメッセージを発信できるにゃ……でもお前の夫候補は二人いる。まずそいつらに会ってからだにゃ」


 タマは復活した直後から「夫候補が二人いる」と言った。

 一人はこのリストの「カン・シフ」だろう。もう一人はもしかすると、プレゼンコンテストで助けてくれた彼ではないか? ひみこは胸を弾ませる。


「タマ、あのさあ、名前がわからない人を、顔と声から探すことできる?」


「うーん、せっかく候補が二人もいるのに、ひみこは好きだにゃあ」


「だから! その候補を探すんだって!」


「そういえばお前、二人の男で迷うドラマにもハマってたにゃ」


「あ、あれはどっちもイケメンだったし……今は関係ないよ! いいから探して!」


「仕方にゃいにゃあ。ひみこ、この中で近い顔、あるかにゃ?」


 空中ディスプレイは、白い壁をバックにすると見やすくなる。老若男女、様々な人種の顔が現れた。


「うっ! ……こんな感じかな?」


 アジア系の若い男性の顔に触れた。今度は似たような男たちの顔が表示される。


「こんにゃかではどうにゃ?」


「……ごめん、わからないや」


「ウシャスを使うと簡単らしいにゃ。頭の中でパッと思い浮かべれば、すぐできるにゃ」


 ひみこは落胆する。自分が脳チップを使えない問題がここにも現れる。


「お前が探したい男の顔データ、ひみこの知り合いが持ってにゃいか?」


 心当たりならある。リー・ジミー先生だ。今なら連絡できるが……いくらなんでも早すぎだ。さすがに恥ずかしい。みんな、ひみこと両親の面会を期待しているのに「彼氏紹介して」はない。

 ここでひみこは、もう一人の夫候補らしい「カン・シフ」の名をじっと見つめた。


 彼の情報で覚えているのは、祖母が日本語族というだけ。年は覚えていないが、見合い相手だから、アレックスみたいなおじいさんということはないだろう。


 自分の気持ちは決まっている。

 落ち着いたら、リー・ジミー先生にお願いして、あの高校生に連絡を取りたい。もう三年以上経ったけど、冷たい態度を取ったことへの詫びと、親切にしてくれたことへの礼をしたい。

 その後は……ううん、考えない。


 が、「カン・シフ」という男性も気になる。日本語族を先祖に持つ者同士として、ベスみたいに友達にはなれないだろうか。

 うん、結婚とか付き合いとかではなくて、知り合いを増やしたいだけ。これは「浮気」じゃない。自分はどっかのエロじいさんとは違う。


「あ、あのさあ、まだ時間あるからさあ、暇つぶしで、カン・シフさんのメッセージがあったら見ておこうかなあ」


「にゃあ。お前の一人目の夫候補だにゃ」


「ち、違うんだって! 友達候補! あたしの気持ちは決まってるんだから!」


 ひみこは頭をこれまでにないほど高速で回転させる。

 これは浮気じゃない、時間あるからたまった映像を見たいだけ、あの高校生を探すのが面倒だとか、もし高校生と上手くいかなかったら、次はこっちでもいいかな、なんて全然考えてない。だってイケメンとは限らないし……違う! そんなこと期待してるんじゃない! 自分は純粋に友達が欲しいだけだ。


 少女が言い訳めいた思考で混乱している中、タマはカン・シフのお見合い用のビデオメッセージを開く。空中に若者のバストショットが表示された。

 すっきりした目鼻立ちの笑顔に、ひみこは息をのむ。


「う、うそ、こんなところにいたんだ!」


 ひみこは思わず顔を覆った。

 そこには、プレゼンコンテストで助けてくれた高校生がいた。


 コンテストのたびに探した彼。

 結婚式で連れ出してくれればいいのに、とまで願った彼。

 スポーツ刈りから髪が伸び、すっかり大人の男性になっていた。

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