4.不思議の少女、アテナ・ミネルヴァ。
(*'▽')更新!
応援よろしくです!
「ん、あれ……? ここは……」
目が覚めるとそこには、また見慣れぬ天井があって。いいや、ここは自分の部屋。そこのベッドに身を横たえ、まるで今までのことが夢であったかのような当り前さで、ボクはそこにいた。身を起こして周囲を見回すが、変わったところは見当たらない。
だけど――。
「い、ったぁ……!?」
全身を走る痛みが、あの戦いが事実であったことを示していた。
身体の至るところに筋肉痛のような感覚があり、四肢の先端には痺れのようなものもある。これが異能を使用した反動、とでもいうのだろうか。
ボクは眉をひそめて、自分の右手のひらを見つめた。
その時だ。
「……へぇ? あの力を使っても壊れないなんて、丈夫なんだね」
「うおわっ!?」
まったくの意識外から、少女の声が聞こえたのは。
ボクは完全に不意を打たれて、素っ頓狂な声を上げてしまった。そして振り返ると、そこにいたのは――。
「あはは! すごい声だね『うおわっ!?』って!!」
「………………!」
思わず、言葉を失ってしまうほどに美しい少女だった。
腰ほどまである銀色の髪に、真っ赤な瞳。白磁のように綺麗な肌と、均整の取れた顔立ちをした彼女は、小首を傾げて呆けるボクの鼻先を指でつついた。
「ん? おーい、どうしたんだい。そんな魂の抜けた顔してさ」
「え、あ……」
そこでようやく、自分は現実に引き戻される。
どうやら目の前にいるのは、嘘のように美しい実体のある女の子のようだった。そして思い出したのは、同級生との戦いの最中に聞こえたのは彼女の声だ、ということ。
ボクのそんな思考を読んだかのように、少女はこう言った。
「気付いたなら、感謝の言葉の一つもないのかな? 気を失ったキミをここまで、無事に届けてあげたのもアタシなのに」
「キミ、が……?」
つまり彼女は、何かしら超常的な存在、ということだろう。
他人の心の中に話しかけて、ボクに力の使い方を教えてくれた。そして倒れて力の抜けた自分をここまで、一人でいとも容易く運んだのだから……。
「そうだよ? あー、重かったぁ……」
「担いでなの!?」
……と、思ったらまさかの人力だったらしい。
少女はわざとらしく肩を回して、大きくため息をついた。
ボクはとっさにそうツッコミを入れてしまったが、彼女は気にした様子もない。
「それ以外に、どうやって移動するのさ。アタシは『空間移動』の一つも使えないんだよ?」
「そ、そうなんだ……ありがとう」
「うん。よろしい!」
そして物凄い剣幕で迫られた。
ボクは仰け反りながら、ひとまず感謝を口にする。
少女はそれで満足したらしく、華やかな笑顔を浮かべて頷いた。
「さて、そろそろ自己紹介といこうか!」
すると彼女は、気持ちを切り替えるように言う。
そういえばボクはまだ名乗っておらず、彼女の名前も知らなかった。そう考えて、
「あ、ボクの名前は――」
「知ってる。狛江大和、でしょ?」
「……え?」
「キミのことはきっと、キミ以上によく知ってるから」
自己紹介しようとすると、それを遮られて言い当てられる。
加えて、そんなことを言われてしまった。唖然とするボクを見て、女の子はその綺麗な顔に小悪魔的な笑みを浮かべて続けるのだ。
「狛江大和、キミはアタシにとっての『魂の片割れ』と言っていい」
「魂の、片割れ……?」
いったい、何を言っているのだろう。
だが、そんなこちらの思いをよそに彼女はこう口にした。
「そして、アタシは同じくキミと『運命を共にする者』――」
一つ頷き、たしかめるように。
ゆっくりと距離を取って、ワンピースのような服をはためかせながら。
「人々に『世界の鍵』と呼ばれる者、アテナ・ミネルヴァだよ!」――と。
面白かった
続きが気になる
更新がんばれ!
もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。
創作の励みとなります!
応援よろしくお願いします!!