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3.例外的な処理と、異質な勝利。

次回でオープニング終了です。

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「『被験体八十二号は処分完了し、すでに情報も抹消済み』……って、神谷くん。本当に上にこれを報告したのかい。その意味を分からないキミじゃないだろう?」

「………………」



 大和のいなくなった部屋の中で、神谷と長峰は話している。

 その内容というのも、先日までここで面倒を見ていた少年についてだった。神谷の表情はサングラスに隠れて、いまいち掴むことができない。しかし長峰の方は呆れたように眉をひそめ、首を左右に振ってこう言うのだ。



「この実験は、国家における最重要機密の一つ。人権や倫理、あらゆるものを無視した上で成り立っている非常に危ういそれだ。たしかに大和くんは記憶を喪失していた。だが仮に記憶が蘇った場合、あるいは――」

「分かっている。……それでも俺に、これ以上の処分は無理だった」

「それに付き合わされる私の身にもなってくれよ」

「だが長峰先生は、口が堅いのだろう?」

「…………はぁ……」



 しかし、長峰の言葉に今度は神谷が返す。

 そして煙草に火をつけて、ゆっくり味わうように喫むのだった。ここは病院であるはずだが、長峰はそれを咎める様子もなく、それどころか彼自身も一服を始める。

 そのまましばしの沈黙があって。

 長峰は改めて、釘を刺すようにして言うのだった。



「たしかに、被験体八十二号――狛江大和は、先例にない存在だ。生還を果たした被験体の大抵は自我を失い廃人になっているか、または『ヒトの形をした化物』になっているからね」

「だが大和は、どちらでもない」

「そう、どちらでもない。だが、いつまでも変化がないとは限らない」

「………………」



 反論する神谷に、長峰は睨みを利かせる。

 そして、最後にこう口にした。



「だからこそ、大和くんに『万が一』があった場合――」



 相手の覚悟を試すように。




「キミは、責任を取る覚悟はあるのかな?」――と。









『切り換え方は簡単。テレビのチャンネルを変えるように、自分の使いたい能力をイメージするんだ』



 その声に従って、ボクは腕を前に突き出した。

 相手が『激流』――すなわち水を使うというなら、こちらはそれを凍てつかせる『氷結』をイメージする。すると相手の生み出したものは、一気に無意味と化した。



「な、なんで『激流』が効かないんだ……!?」

「こいつ『発火』使い、って話だったじゃないか!!」



 氷となって砕け散った己の異能を見て、二人が声を震わせる。

 だがすぐに、残りの一人が声を荒らげた。



「クソが、だったら俺様の『電撃』で気絶させてやるっ!?」



 腕を突き出したクラスメイトの周囲では、放電現象が起こり始める。

 だけど、ボクは慌てずに呼吸を整えた。

 そしてチャンネルを――。



「――切り、替えるっ!」

「な、なんだって……!?」



 次にイメージしたのは、身を守る『障壁』だ。

 するとすぐに、ボクの目の前には半透明の壁が出現する。それは直後に放たれた『電撃』を防ぎ、いとも容易く霧散させた。



「な、なんだよ……!?」



 その光景を見て、同級生たちは驚愕に表情を歪める。

 周囲の異変が収まると、そのうちの一人が叫ぶのだった。





「こいつ、いくつ異能を持ってやがるんだ……!!」――と。





 その意図するところは分からない。

 だが、彼らは完全に戦意を喪失したようだ。

 各々に悲鳴に近い声を上げながら、同級生たちはどこかへ行ってしまう。




「か、勝った……?」




 全身が痛い。

 だけど、ボクは勝利した。

 そのことへの満足感を胸に抱きながら。



「あ、れ……?」




 ボクの意識は、闇の中に落ちていくのだった……。



 


面白かった

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