3.例外的な処理と、異質な勝利。
次回でオープニング終了です。
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「『被験体八十二号は処分完了し、すでに情報も抹消済み』……って、神谷くん。本当に上にこれを報告したのかい。その意味を分からないキミじゃないだろう?」
「………………」
大和のいなくなった部屋の中で、神谷と長峰は話している。
その内容というのも、先日までここで面倒を見ていた少年についてだった。神谷の表情はサングラスに隠れて、いまいち掴むことができない。しかし長峰の方は呆れたように眉をひそめ、首を左右に振ってこう言うのだ。
「この実験は、国家における最重要機密の一つ。人権や倫理、あらゆるものを無視した上で成り立っている非常に危ういそれだ。たしかに大和くんは記憶を喪失していた。だが仮に記憶が蘇った場合、あるいは――」
「分かっている。……それでも俺に、これ以上の処分は無理だった」
「それに付き合わされる私の身にもなってくれよ」
「だが長峰先生は、口が堅いのだろう?」
「…………はぁ……」
しかし、長峰の言葉に今度は神谷が返す。
そして煙草に火をつけて、ゆっくり味わうように喫むのだった。ここは病院であるはずだが、長峰はそれを咎める様子もなく、それどころか彼自身も一服を始める。
そのまましばしの沈黙があって。
長峰は改めて、釘を刺すようにして言うのだった。
「たしかに、被験体八十二号――狛江大和は、先例にない存在だ。生還を果たした被験体の大抵は自我を失い廃人になっているか、または『ヒトの形をした化物』になっているからね」
「だが大和は、どちらでもない」
「そう、どちらでもない。だが、いつまでも変化がないとは限らない」
「………………」
反論する神谷に、長峰は睨みを利かせる。
そして、最後にこう口にした。
「だからこそ、大和くんに『万が一』があった場合――」
相手の覚悟を試すように。
「キミは、責任を取る覚悟はあるのかな?」――と。
◆
『切り換え方は簡単。テレビのチャンネルを変えるように、自分の使いたい能力をイメージするんだ』
その声に従って、ボクは腕を前に突き出した。
相手が『激流』――すなわち水を使うというなら、こちらはそれを凍てつかせる『氷結』をイメージする。すると相手の生み出したものは、一気に無意味と化した。
「な、なんで『激流』が効かないんだ……!?」
「こいつ『発火』使い、って話だったじゃないか!!」
氷となって砕け散った己の異能を見て、二人が声を震わせる。
だがすぐに、残りの一人が声を荒らげた。
「クソが、だったら俺様の『電撃』で気絶させてやるっ!?」
腕を突き出したクラスメイトの周囲では、放電現象が起こり始める。
だけど、ボクは慌てずに呼吸を整えた。
そしてチャンネルを――。
「――切り、替えるっ!」
「な、なんだって……!?」
次にイメージしたのは、身を守る『障壁』だ。
するとすぐに、ボクの目の前には半透明の壁が出現する。それは直後に放たれた『電撃』を防ぎ、いとも容易く霧散させた。
「な、なんだよ……!?」
その光景を見て、同級生たちは驚愕に表情を歪める。
周囲の異変が収まると、そのうちの一人が叫ぶのだった。
「こいつ、いくつ異能を持ってやがるんだ……!!」――と。
その意図するところは分からない。
だが、彼らは完全に戦意を喪失したようだ。
各々に悲鳴に近い声を上げながら、同級生たちはどこかへ行ってしまう。
「か、勝った……?」
全身が痛い。
だけど、ボクは勝利した。
そのことへの満足感を胸に抱きながら。
「あ、れ……?」
ボクの意識は、闇の中に落ちていくのだった……。
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