2.初登校、そして……。
よいしょ(*'▽')ノ
「あっははは! 『発火』なんて雑魚異能が、俺らに敵うと思うなよ!」
「ホント、馬鹿だな。大人しくしてれば良いのにさ」
「分かったかなぁ、無能くん?」
三人の同級生が、ボクのことを足蹴にして笑っている。
場所は長峰先生に指定された学校の校舎裏。時刻は放課後で、まだまだ日が沈むのが早いらしい。夕方五時現在で、周囲はすっかり暗くなっていた。
こちらが立ち上がろうとすると、彼らはまた笑いながら蹴りを入れてくる。
自身の異能を発動しようと試みても、どういうわけか上手くいかない。
「く、そ……!」
ボクは頭を踏みつけられながら、思わずそう悪態をついた。
口の中に広がる鉄と砂利が混ざり合った感覚に、不快感が湧き上がる。だけど、自分から足を踏み入れた一件だ。誰にも文句は言えない。
それでも、ふと思い返す。
いったい、どうしてこうなったのか――と。
◆
「今日から遅れて通うことになった『狛江大和』だ。……はい、自己紹介」
「狛江大和、です。よろしくお願いします」
今朝はこれといっておかしくなかった。
遅れて入学することになった同級生、と紹介されて拍手で迎えられる。空いている席に案内されて、クラスメイトと簡単に自己紹介をし合った。
「――ね! 狛江くんは、どんな異能を持ってるの?」
「え、あー……『発火』だ、って言われたけど」
「なんで他人事みたいなの?」
そんな中で、一番親切にしてくれたのは隣の席の女生徒。
名前を兵藤沙耶という彼女は、気さくな語り口調で色々と教えてくれた。
「でも、そっか……『発火』だったら普通だし、最初の序列は最下位かも」
「序列、って?」
「え、知らないの?」
「あー……うん」
そのうちの一つが、学園内の序列制度だ。
現在の高等学校では異能の特殊さ、強さを基に順位を付けているらしい。なんという制度だ、とも思ったが、いまの世界ではこれが常識なのだろう。順応するしかない。
何はともあれ、ボクの持っている異能はありふれたもの、という話だった。
「そっか……授業も遅れてるし、意外と大変そうだ」
「うん! でも大丈夫だよ! 私、協力するから!!」
「いいの? 迷惑じゃないかな」
記憶喪失になって、初めての大きな壁を感じたボク。
だが、そんなこちらに兵藤さんは笑顔でこう言ってくれたのだった。
「私も序列下の方だから! 一緒に頑張ろう!」――と。
ボクはそれを聞いて、思わず握手を申し出て。
そして――。
「おいおい、雑魚同士で傷舐めあってるぜ!」
そんな人相の悪いクラスメイトの声に、反応してしまったのだ。
◆
――で、放課後に呼び出されて凹されている、と。
「ほーら、狛江くん? ご自慢の『発火』はどうしたのかなー?」
「無意味だけどな、俺の異能は『激流』だし!」
「お前には、勝ち目なんてねぇよ!」
同級生たちは何故、こんなにもボクを嘲笑うのか。
その理由は分からないけれど、いま確かなのは理不尽な扱いを受けていることだった。なにもできないままで、ただただ力に屈してしまう。
だけどボクは、事実として弱かった。
異能の使い方もろくに知らない、世にも珍しい普通の人間だ。
「で、も……!」
悔しいのには、変わりない……!
砂利を血が出るほどに握り締めて、拳を震わせる。
記憶も何もないけれど、そんなボクだけれど、負けたくないのは変わらない。記憶を失う前の自分も、このような場面ではきっと戦ったのだろう。
だからこそ、こんなにも――。
『だったら、教えてあげようか? ……戦い方』
その時だった。
『ようやく聞こえたみたいだね。だったら、負けたくないわけだ』
頭の中に、ハッキリとそんな声が聞こえたのは。
ボクは一瞬だけ唖然とするが、しかしすぐに答えた。
「負けたく、ない……!」
すると、さらに声が聞こえるのだ。
『それじゃ、力を貸してあげるよ!』――と。
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