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プロローグ 記憶喪失。

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「さて、単刀直入に言う。狛江大和、お前は――用済みだ」

「…………用済み?」




 真っ白な個室、ボクの前に腰かけたスーツの男性はいきなりそう言った。

 どうやら『コマエ・ヤマト』というのは、自分の名前らしい。だけどそれ以上に、彼の言葉には気になる点があった。今朝に目が覚めてから半日が経過し、突然に現れた相手のこともそうだし、用済みという意味にも引っ掛かりがある。

 だからボクは、スーツの内側に手を入れた彼に素直に訊ねた。



「……あの、一つ良いですか?」

「ふむ、キミのような者でも命は――」

「そもそも貴方は、誰なんですか?」

「――なん、だと?」



 もちろん、訊きたいのはそれだけではない。

 ボクは自分が一体何者であるかさえ、分からなかった。

 今朝目覚めるまでの出来事が、綺麗さっぱり頭の中から抜け落ちている。いいや、もっと言ってしまえば何もない。空っぽだった。

 冗談のような話だが、相手の男性はこちらの表情を見て本気だと察したらしい。

 しばし硬直し、何かを考える素振りをしてからスマホを取り出して誰かに報告した。



「緊急だ。……被験体八十二号に異常発生、至急ここに医師を呼んでくれ」




 眉間に皺を寄せる男性に、首を傾げるボク。

 その場には、想像以上に重苦しい空気が漂っていた。







「どうだ? 何か分かったか」

「うーむ、難しいね。検査の結果は脳に異常はなく、単なる記憶障害とは違うらしい。そうなるとストレスなどによる解離性健忘、ということになるが……」




 しばらくすると、白衣を着た男性がやってきた。

 先ほどのスーツの男性と一緒になって、何やら小難しい話をしている。ボクは様々な検査を受けて、どうにも身体が怠く感じていた。それでも自分の頭のことなので、しっかり聞いておこう。そう思っていると、白衣の男性はスーツの男性にこう訊ねた。



「だがいずれにせよ、神谷くんにとっては嬉しいのではないかい?」

「………………」



 どうやら、スーツの男性の名は『カミヤ』というらしい。

 しかしボクの症状が嬉しい、というのはどういった意味なのだろうか。



「キミにとって、この被験者は特別、なのだろう?」

「そんな、ことは……」



 医師らしき男性の言葉に、カミヤさんは口ごもった。

 しかし、やがて静かに首を左右に振ると――。



「済まない。……私にはもう、難しいようだ」



 そう口にして、部屋を出て行ってしまった。

 結果、ボクと医師の男性だけが取り残されてしまう。カミヤさんの表情は見えなかったけど、声は心なしか震えていたように感じた。

 そう思っていると、医師はボクにこう語り掛ける。



「いやいや、済まないね。肝心のキミを置き去りに話を進めてしまって」

「あ、いえ……」

「カミヤくんにとって、キミは弟のような存在だったからね。きっと、相当にショックを受けているのだと思うよ」

「そうなん、ですか……?」



 そのことを聞いて、途端に申し訳なくなってしまった。

 仲の良い相手に自分を忘れられる、というのはいったいどれほどの衝撃だろう。カミヤさんの心中を察してこちらが沈んでいると、医師は励ますようにこう言った。



「キミが気に病むことはない。ただ、少しだけ心に留めてやってくれ」

「……分かりました」



 そして、カルテらしきものにペンを走らせながら続ける。



「一般的な解離性健忘なら、数日の間に症状はなくなる可能性がある。その間は入院が必要となるけれど、いいかな?」

「は、はい……!」

「よろしい。それなら、今日はここまでだね」




 こうして、ボクの新しい日々は始まった。

 困惑はあったけれど、不思議と不安や心配はない。




 個室に戻って、ベッドに身体を横たえる。

 すると検査による疲れか、あっという間に意識は落ちるのだった。





 


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