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貴族様の苦悩

 皆さんどうもガクーンです。

 今年最後の投稿になります。

 では、お楽しみください。

 俺達は貴族街と呼ばれる、貴族たちの屋敷が立ち並ぶエリアへと足を運んでいた。


「マイン! ここは凄いな! 豪華そうな家が沢山あるぞ!」

 マインの横で子供の様にはしゃぐガイズ。


「ガイズ、静かにしろ。目立つ」


「そうか? 俺は別にいいのだが……」


「俺が良くないんだ!」


 こいつは黙るってことを知らないのか? はぁ、ほんとこいつの相手をしていると疲れる。


 マインは地図を片手にガイズとブラディール家の屋敷を探してここまで来ていた。


 一軒一軒が、庶民が一生を労働に費やしても購入できないような屋敷が立ち並ぶ中、俺は地図を頼りに屋敷を見て回る。


 貴族街に入ってから20分。ようやく地図が指し示す場所へと到達したマイン。

 そこには、一際大きく豪華な屋敷が存在した。


「ここか……」


 ここがブラディール家の屋敷か。他と比べても二回りほど大きい……。何より、敷地面積が凄いな。後ろに広がる庭園はすべてブラディール家のモノだとしたら……相当な大きさだぞ。


 マインがブラディール家の凄さに圧倒されていると。


「よし。行ってくる」

 

 ガイズが当たり前のように正面の柵を乗り越えようと手を掛ける。


「おい馬鹿。まて」


 俺は慌てて馬鹿の肩を掴む。


「どうした? マイン」


「どうした? じゃない……何をする気だ?」


「そりゃ、この家にお邪魔をするんだが」


 はぁ……この馬鹿を相手にしていると頭が痛くなる。


 お邪魔をするだって? 正面の門からじゃ無く、柵を乗り越えて? こいつは義務教育を全うしなかったのか? 子供でもここから入っちゃいけないぐらい分かるだろう……


 俺はひとまずガイズを引き寄せ、常識というもんを叩きこむ。


「そうだったのか。今度からは気を付ける」


「あぁ、頼むぞ。あと、ここからは俺が先を歩くから俺の後を付いてこい」


 そうだ。初めからこうすれば良かったんだ。こうすれば好き勝手しなくなるだろうからな。


 こうして、二人はブラディール家の本邸へとたどり着いたのだった。



「すいません。先日ブラディール家の貴族様にお会いしたガイズという者なんですが……」


 俺はブラディール家の門番に事情を説明していた。多分ガイズの名前を出せばいけると思うのだが……


「ガイズ? あぁ、お前たちか。話は聞いている。少し待っていろ」

 そう言って、門番の一人が屋敷へと小走りで去っていく。


 ~数分後~


 先ほどいなくなった門番の一人はある人物と共にこちらへ歩いて来た。


 一人はさっきの人で、もう一人は格が高そうな黒い服を着た……爺さん? 執事か?


「お話はブラディール・ルディニーク様より聞いております。ガイズ様と……「マインです」マイン様ですね。私、ブラディール家の総支配人兼執事をしております。スールイと申します。本日はよろしくお願いします」


 良かった。ここで門前払いされたらどうしようかと思っていたが、話はちゃんとついていたようだな。


 一安心するマインを横目に、スールイはマインとガイルの持ち物検査を簡単に行う。


「武器類はこちらでお預かりさせていただきます」


「はい。どうぞ」


 俺は竜の骨から作られた刃渡り1メートルを超える剣を手渡す。


「確かに受け取りました。それで……」


「あっ。ガイル! 早く大剣をスールイさんに「嫌だぞ?」……はぁ、あのな……」


 それから俺はガイズに色々と説得を試みる。初めは大剣を渡す気のなかったガイズだったが、俺の心の底からの説得が実を結んだのか、最後はしぶしぶ大剣を手渡した。


「すいません。スールイさん」


「いぇいぇ、大丈夫ですよ。では、こちらへ」


 問題が無い事を確認したのか、早速二人を屋敷の中へと案内する。


「ガイズ様。マイン様。主をお呼びいたしますので、暫くこの部屋でおくつろぎください。それでは……」

 

 よし。スールイさんは居なくなったな。


「ガイズ。もう一度打合せだ。お前は絶対に、はいかいいえしか喋っては……」


 俺はガイズにボロを出させないため、簡単な返事しかさせないようガイズに言い聞かせようとした時。


 もぐもぐもぐ……んぐっ。


 何の音だ? 


 横から食べ物を頬張る音が聞こえ、右へと振り向く。


 すると、口いっぱいに食べ物を詰め込むガイズの姿があった。


「……おい。俺の話聞いてたか?」


 ここにある食べ物を食べてたのか?

 ガイズの目の前にあったクッキーの山の一部が切り取られたように無くなってるし……


「ん? ゴクッ。あぁ、もちろんだ」


 はぁ、先が思いやられる……


 マインは小さくため息をつきながらも、もう一度同じ説明をする。


 すると、説明が終わってすぐ扉をノックする音が部屋中を響き渡った。


「ガイズ。分かってるな」


「任せろ」


 二人が小さく話し合うと、奥の扉から二人の人物が現れた。


「ガイズ君、よく来てくれた! それと君は……マイン君と言ったかな? 君もよく来てくれたな」

 

 入って早々、高価そうな服に身を包んだ男性が俺達に声を掛ける。


「こちらこそ、お声掛けをいただけて嬉しい限りです」


「そんなかしこまった口調ではなく、いつも通りの君たちで話してくれると嬉しいのだが」


 なるほど。この人はこういうタイプか。


「では、いつも通りいきますね」


 こうして、マイン達とブラディール・ルディニークとの会談が始まった。



 この人がルディニークさんか……見た目以上に話しやすい人だな。


 これがマインの第一印象であった。初めは当たり障りのない会話から始めた両者。しかし、ルディニークは早く本題に進みたいのか、ソワソワしているようにも感じられた。


 これは早く本題に入った方が良さそうだな。


「それで……今回私たちが伺った件なのですが」


 マインが切り込む。


「そうだったね。スールイ。例の物を」


 ルディニークはスールイにある物を用意するよう声を掛ける。

 するとスールイは一度部屋の外に出て、茶色い封筒を持って帰ってくる。


 そして封筒をその場で開け、中から白い紙を取り出すとその紙をマイン達の前へと広げる。


 これは……地図か。


 その地図はネイフィン公国の一帯とその付近の町や村を写した精巧なモノであった。


「マイン君に聞きたい。私は君たちに何を望んでいると思う?。君の予想の範囲内でいいから教えてくれないかい?」


 そう来るか……。


 マインは一瞬、息を吸うと、自分の考えを話していく。


「そうですね。まず、家族が攫われたとの事ですが、多分その人物はルリアーナ嬢ではないでしょうか? そして、ルリアーナ嬢を救うべくルディニークさんは動かれようとしたのでしょうが、勇者誕生祭がまじかに迫った今。色々と事情が重なり自分達では動けない。そこで、実力のある冒険者を雇ってルリアーナ嬢を救出する……ために私達へ白羽の矢が立ったとしか」


*勇者誕生祭:数年に一度、国から勇者を誕生させるべく行われる祭り。通常3日間に渡り行われ、最終日に勇者として相応しいと認められた者が勇者の称号を得ることが出来る。


 まぁ、ここまで言えば合格だろう。しかし、何故俺達にお願いしたかがまだ分かってないけどな。


 すると、ルディニークは口をニヤリとゆがませる。


「うん。合格だ」


「ありがとうございます」


「正式に君たちにお願いするよ。ところで……君たち冒険者でもないのに凄い実力だね。どうやってその力を手に入れたの?」


 ゾクリ。


 その瞬間、俺とガイズは席を立ち、得物を取り出すべく腰に手を当てる。


 もちろん、二人は得物を預けてしまったので取り出せる訳もなく、両者に冷たい空気が漂う。


 はっ! つい体が動いてしまった……


 すると、その様子を見ていたルディニークは場を一蹴するように楽し気に笑いながら手を叩く。


「ははっ。流石だよ。何もしないから座ってくれるかな?」


「それで……これは何のマネですか?」


「何のマネとは?」


「とぼけないでください。殺気と一緒に魔力を放出したでしょう?」


 そうだ。この人は殺気と一緒に、ごく少量の魔力を放出した。しかも、俺とガイズの喉元に向かってな。


 これ、気づかなかったら死んでたぞ?


「そこまで気づいていたのか! 本当に君たちみたいな逸材が今まで世間に知られていないのが不思議でしょうがないよ」


 当たり前だ。こんな面倒な事にならないように今まで俺が徹底していたんだからな。


「やっぱり強い奴を探すには道で魔力を放出して歩くのが一番だな」


 このオッサン! そんな危ない事をしてたのか! ってことはもしかして……


「おいガイズ。もしかしてお前、この人と会う前に何者かの魔力の放出に反応したか?」


「はい」


 そうだった。こいつには、はいかいいえしか喋らせないんだった。


「今だけ普通に喋っていいぞ」


「そうだ。あれほどの放出は見たことが無かった」


 この人はどんな放出の仕方をしたんだ? ってか、よく市民は無事だったな。


 マインは訝しげにルディニークを見る。


「大丈夫だ。強者にしか感じ取れない魔力を練ったのでな」


 おいおい。このオッサン何者だよ?


 あきれ果てるマインをよそに、ルディニークは思い出したかのように地図に、ルリアーナが捕まっていると思われる場所へと一つ一つ赤い目印を付けていく。


「私たちの調査でここまでは絞り込めたんだが……ここからは頼めるかい?」


 ルディニークは二人に片手ずつ手を差し伸べる。


 マインとガイズはそれぞれルディニークと厚い握手を交わす。


 オッサン……


 マインがある事に気づく。


 本当に少しだが……手が震えてる。そうだよな。自分の可愛い娘が連れ去られて、自分は動くことが出来ない。なんて状況になったら親だったら生きた心地しないよな。


「任せてください。絶対に助け出しますので」


 絶対だ。だからオッサン。安心しろ。


 マインの想いが通じたのかルディニークは一瞬、安心したかのような表情をし。


「あぁ、ルリアーナをどうか……よろしく頼む」

 

 こうして、マインとガイズのルリアーナ救出が幕を開けた。

 お読みいただきありがとうございました。

 この話が面白いなと思っていただけましたら、高評価、ブックマーク等をしてもらえると嬉しいです。

 では、良いお年をお迎えください。それでは。

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