車イスハチ
中米のオクラル社は今回、未来の車椅子を発表した。この車椅子はナビゲーションを用いて、いつ、何処に人を運ぶかブログラムできる。この車椅子は忠犬ハチ公にちなんでハチと名付けられた。現在試作品は三台あり、そのうち一台を一般人にプレゼントする事になり、抽選で当選者は植物学者のピエール教授に決まった。彼は通常彼の研究室に勤務しているが、毎日三時に、市営プールで不自由な下半身のリハビリを一時間行っている。
二時半に研究室の扉を開けるとハチが待っている。ビエールはハチに乗り、ナビで行き先をプールに設定。「ゴー」のボタンを押すとハチは近くて安全な道を選択して走り始める。走行時間は約二十分。ハチは他に命令が無いとプールで一時間待っている。
私はハチの発表から今まで、一連の問題を取材している。問題の始まりは、ピエールが行方不明になった事だった。ハチはいつもどうり研究室の前にいた。ビエールが居なくなった次の日、ハチは二時半に研究室を出発点し、三時にプールに着くという動作を始め。そして二時間待って研究室に戻って来る。オクラル社が原因を調べたが理由は判らなかった。毎日プールにやって来るハチを現地の人が歓迎し始めた。寒いだろうとシャツを着せたり、洗車したり人気はうなぎ登りで、日本から権利を買って映画化の話も進んでいた。
ところが、この熱に待ったをかけたのは麻薬調査庁だった。彼らは以前からビエールの研究室に目を付けていたのである。ピエールの失踪から三日後、研究室に大規模な監査が入り大量のケシ栽培が見つかった。ピエールは研究室で作った薬をプールで小売りしていたのだ。ピエールはハチが当選して目立ったため、これを潮時と考えており、収入を維持したい共犯者と意見の違いがあった。ビエールが欠けて、小売りはプール監督者数名で行っていた。相手は女性や金持ちや子供達だった。
ピエールの遺体はプールへの道外れの崖下にあった。ハチが落としたのだろう。この事件にオクラル社が関与しているかは不明。結局、逮捕された者の犯行で、他に容疑者は居なかった。
ハチは証拠品であるが、警察の駐車場に放置されていた。そして毎日二時半になるとプールへと出掛けて行った。