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001:ボーイミーツガール 前編

今回から本編!

 

 星歴一五六年。

 亜人同盟と惑星連合の対立は、激化の一途を辿っていた。

 地上も、そして宇宙でも両陣営は激しい火花を散らしていた。


 そんな中、一隻の戦艦が中立コロニー群であるサードゾーン宙域を航行していた。

 その戦艦は、とあるコロニーに寄港しようとしていた。


 その戦艦―キャメロットのブリッジに一人の青年が入って来て、艦長席に歩み寄る。


「艦長、入港許可はまだか?」


 そう尋ねたのは先程ブリッジに入って来た、ブレザータイプの軍服に身を包んだ茶色い短髪の青年だった。


 レイン・フォレスト。

 この部隊―惑星連合軍第一八独立機動部隊の隊長だった。


 青年―レインの問い掛けに、壮年に差し掛かった艦長は頷く。


「まだですな。今は入港審査の手続きを行っているところです。あと三十分はかかるかと」

「そうか……そう言うわけだ。いつでも出撃出来る準備はしておけよ」

『はい、了解です』


 レインは艦長席に設置されたマイクでそう何処かに呼び掛けると、向こうからも返事があった。

 その声は、清流を思わせるような澄んだ声音の女性だった。


 レインはマイクのスイッチを切ると、艦長に声を掛ける。


「艦長。入港次第、『アレ』の運用試験を開始する。各員に通達しておいてくれ」

「了解しました」


 艦長の返事を聞いた後、レインはブリッジから立ち去って行った―――。




 ◇◇◇◇◇




「ふぅ……」


 タッチパネルを操作して通信を切ると、その人物は小さく息を吐く。

 その人物は緊張しているようで、表情が強張っていた。


 その人物は炎のように燃え盛る赤い髪をショートボブに切り揃え、その双眸は夕陽のように赤く煌めいている。

 しかしその顔は勝ち気そうではあれど、少女らしいあどけなさと女性らしい華やかさが同居していた。

 そしてパイロットスーツに包まれた身体は、女性らしい滑らかな曲線美を描いている。


 アリサ・フェアハート。

 この部隊に所属する、エーテリアスのパイロットである少女だった。


 少女―アリサはコックピットシートに深く身を委ね、ヘルメットを膝上に抱え込む。


 彼女は今、とある機体のコックピットの中にいた。

 その機体―連合軍の新型エーテリアスのテストパイロットを務めるためである。


「あれ〜? アリサ、緊張してるんですか〜?」


 するとコックピット内に、アリサのモノではない声が響く。

 断っておくと、コックピット内にいる人間・・はアリサ一人しかいない。


「黙ってて、マーリン」


 アリサは目の前のタッチパネルに向かって、そう答える。

 彼女の視線の先にあるタッチパネルには、足元まで伸びる白髪に、魔法少女風の容姿をした少女のようなアバターが映し出されていた。


 この新型エーテリアスに搭載された『アヴァロンシステム』。

 その根幹たる戦術支援AI、それがマーリンだった。

 と言っても、肝心のシステムはまだ試作段階ではあるのだが……。


「イヤですよ〜だ!」


 アリサの言葉に、マーリンはべーっと舌を出して反抗する。

 その反応にイラっときたアリサは、タッチパネルを激しく揺らす。


「この生意気AIが!」

「そんなに激しくタッチパネルを揺らすな、暴力女!」

「なにを!?」

「なんですと!?」


 二人……いや、一人と一体は狭いコックピット内で言い争う。

 傍目から見るとそれは、じゃれついているようにも見えた―――。




 ◇◇◇◇◇




 サードゾーンにある、アトラスコロニー。


 このコロニーに限らず、サードゾーンにあるコロニー群は全て、両陣営に対して中立を保っている。

 その為、戦いを嫌う人達が自然と集まるコロニーでもあった。


 そのアトラスコロニー内で、一人の少年が河川敷に寝そべっていた。

 その少年の金色の髪は風に靡いており、両目は閉じられている。

 そして少年はどこかの学校の制服に身を包み、ブレザーの下にパーカーを着込んでいる。


 曲がりなりにも今は学校の授業があるハズの時間帯で、少年はこんな所で油を売っていていい理由などあるハズもなかった。


 つまりは――サボタージュだった。


 すると、彼のブレザーの胸ポケットに仕舞われていた携帯電話スマートフォンが振動する。

 彼は閉じていた目を開け、携帯電話を取り出す。


 発信者は、彼のクラスメイトからだった。

 彼は着信をオンにして、寝そべりながら携帯電話を耳に当てる。


「……もしもし?」

『よう、アルト。お前今どこにいるんだよ?』


 アルト、と呼ばれた少年は、気だるげにクラスメイトの質問に答える。


「いつもの河川敷」

『……ってことは、サボりか?』

「うん、そう」

『はぁ……まあいいや。いくら授業のほとんどを免除されてるからって、あまりサボるなよ?』

「うん、それじゃあ」


 アルトはそう言うと通話を切って、携帯電話を胸ポケットに仕舞い直す。

 そして再び上を見上げたその時、アルトの碧色の双眸がとあるモノを捉えた。


 ソレは白と青を基調とした、見たことのないエーテリアスだった。


 そのエーテリアスは、コロニー内を鳥のように縦横無尽に飛び回っていた。

 アルトは上体を起こしてその機動から目を離せないでいると、そのエーテリアスは突如としてフラフラとした機動となり、近くの山間に墜落した。


 アルトは考えるよりも先に身体が動き、墜落したエーテリアスの下へと駆けて行った―――。






新型エーテリアスの機体名は……。




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