ソルトランズ支部
バレルは一仕事終えると上司に報告するために、自分の所属する組織の部署に戻った。
「またまた大活躍だってね!バレルくぅん!!」
大きな声が学校の体育館ほどの大きさの部屋中に鳴り響く。この部屋はリーチャー対策部隊用に民間の警察から貸し出されていたものだったが、その声のせいでその場に居た者は残らず顔をしかめる。
リーチャー対策部隊とはいってもこのソルトランズ支部という所には4人しか人員がいない。
まず大きな声の主であるアーク・リッカード。部隊内では賑やかし兼隊長も担っている。結婚をしているためか、危険な仕事をやりたがらず危ないと思ったらすぐにバレルを頼りにする。
そしてさっきの大声に露骨に嫌な顔をしている青髪の若い男がロイ・ベイクォーターである。彼は支部の中で実働部隊として働いているため、基本的な身体能力は高い。しかし、過去にリーチャーに重傷を負わされことがあり、それを酷く恨んでいる。その復讐の為に部隊に入隊したが、人数不足に落胆しつつもバレルのサポートに付いている。
茶色の長い髪を束ねてパソコンで報告書を作っているのが、レイチェル・リーゼンという女性だ。後方任務を希望していたが、人数不足の為にリーチャー対策部隊に配属された。危険な任務に赴くバレルやロイに引け目を感じている。また、上司であるアークのセクハラに悩んでいる節目があり、いつか告発しようと思っている。
そして、最後に部隊の最高戦力であるバレルだ。バレルには名字がなく、軍にもハウス中佐という者の紹介で入った。彼の目的はリーチャーの殲滅ただ一つであり、過去も周囲には明らかにしていない。
バレルはアークの前で口を開く。
「ボロコを仕留めました。今回はきつい任務でしたね。」
バレルはそう言うと自分の机に戻って銃のメンテナンスを始めた。しかし、アークはそんなこと関係無いように一人で話し始める。
「まただ。リーチャー解放軍という不届き者から声明があった!今度はこのソルトランズで事件を起こすらしい。解放軍なら俺たちをこの残業の嵐から解放して欲しいもんだぜ。」
アークは溜め息をつきながら、テレビに映るニュースキャスターを凝視する。ロイは作ったコーヒーをアークに渡しながら諭した。
「溜め息つくと幸せ逃げますよ。」
「気にすんな、ロイ。俺の幸せはとっくに行方不明だよ。」
他愛ないやり取りをしていると事務作業中のレイチェルに連絡が来る。それを聞いて立ち上がると、レイチェルは3人に向かって報告した。
「地元警察より捜査依頼!ビジネス街にて惨殺死体発見!犯人はリーチャーであると!」
アークとロイは明らかに動揺しながらその報告を聞いていた。そしてバレルもその報告に驚いていたが、その後は、黙々と準備を始めた。その顔には僅かに笑みがこぼれていた。