閉鎖された社会の中で
初心者の中の初心者なので、読んでくれるだけでも嬉しいです。よろしくお願いいたします!
この物語はフィクションです。
人気の無いスラム街に1人の男が酷く息を切らしながら走っている、右肩から血を流し服は土ボコりが付きそこら中に小さな穴が空いてしまっている。男は薄暗い路地裏を見つけると逃げるように入り太陽の光が当たらない所まで入りこむと、そっと腰を下ろし近くにある誰が放棄したか解らないボロボロのソファーに倒れるように座った。
それから20秒ほど過ぎた頃、コツコツと革靴の音が聞こえるのをソファーに腰掛けた男は察知した。男は先程まで息を切らしていたのが嘘のように素早く息を整えると、小声で自分に言い聞かせるように言った
「来いよ。俺は普通の人間とは違うんだ…」
男は立ち上がるとソファーの裏に鉄パイプがあるのを見つけた。どうやらここは住民御用達の廃品置き場になっているようだった。少し息を吐きながら鉄パイプを二本拾うと路地裏の角から足音の原因を覗きこんだ。そこには白い軍服の様なものを着込み、用心深く周りを見渡しながらゆっくりとこちらに歩いてくる男が居た。
「あいつが追跡者だ。こちらに気付かれる前に始末する。」
男は確信していた。幸い男がいる路地裏はまだ探索の対象にはなっていないようだった。
鉄パイプを追跡者であろう者に投擲する構えを見せる。構えかたは槍投げの素人そのものだが握力により鉄パイプは大きな凹みを起こしていた。しかし、あと数秒で投げるという時に路地裏に閃光手榴弾が投げ込まれていたのに男は気づかなかった。
路地裏が光に包まれ、約7秒
まだ、男の目に光の残像か残っている。しかし、追跡者の黒い銃口が彼を確かに狙っていた。
追跡者は口を開く
「ボロコ・アダムスだな。おっと手を上げなくて良い。どうせあんたは射殺されるんだからな。今降伏したって数時間延命できるだけだ。」
そうすると、銃口から弾丸ではなく、刃渡り15センチほどの黒いナイフが放たれる。それはボロコと呼ばれた男の右太股に命中し、太股から出血を起こし、悲鳴か絶叫か解らない声が上がる。
ボロコは涙を流しながら後ずさり、しっかりと追跡者の目を見て、叫んだ。
「お前は人間の進化を認められないのか!!俺達が人間の進化の形だ!機械に負けない頭脳、一流アスリートに引けを取らない運動神経!それがあれば人は新しい段階に……」
追跡者はその言葉に顔色一つ変えず次弾を装填する。薬莢が地面に落ちたのを確認したボロコは身長を優に越えるであろう後ろにあった大きなソファーを路地裏の入り口を塞ぐように立っていた追跡者に向かって投げた。しかし、左に体を反らした追跡者に容易くかわされてしまう。ソファーが向かい側の住宅の塀に当たり大きな衝突音がなった瞬間には、既にボロコの体には拳銃から放たれた黒いナイフが肺に突き刺さっていた。
「お前…もしかして…」
言い終わる前にボロコは血を吐きながら倒れる。
追跡者はボロコの死亡を確認した後右耳に付けていたイヤホンマイクを押さえながら報告するようにこう言った
「こちらバレル。ボロコを排除した。狩猟完了」