表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

パラレルワールドドリーム

作者: 風祭 風利

風祭 風利初の短編小説。

今回はポカ猫様主催の「ジャンルシャッフルなろうコン」に合わせて書いた小説です。

「宇宙・SF」のジャンルで書いた小説なのですが、果たして皆様の色眼鏡に見合う作品になっているのでしょうか?

なにも考えずに見てもらえるとありがたいです。

 タイムパラドックス、パラレルワールド。 現代に置けるこれらの言葉は、ほとんどが空想、もしくは実現不可能な科学的根拠がある。 人には越えられない壁がある。


 例えば貴方が休日に過ごすことを考えたとしよう。


 貴方は趣味に没頭する。 趣向を変えた外出を試みる。 仕事疲れを癒すために最小限の移動で家から出ない・・・・・・ そんな無数に近い選択肢の中から1つだけを選び、その選択を全力で行う。


 ところが、それを行おうと思ったときに、自分には予知せぬ事態が起きることもある。 出掛けようと思っていたら予報外れの雨が降る。 家から出ないようにしようと思ったら会社からの緊急出勤を余儀なくされる。 趣味のための画材がない。 そんな未来の分岐点のその先等は本当に分からない。 何が起きてもその人の人生。 その人が歩んだ道となってしまう。 それが自分の描いた未来であろうと、そうでなかろうと・・・・・・


 しかし今ここに、夢の中にだけその事象を確認できる人間がいる。


「今日の行いは・・・あの未来の為には必要だったことだ。 あそこで後悔するよりは断然良かった。」


 そう言って少年、夜夢 世界(よむ せかい)は自室で夜10時に眠る。 彼だけにある()()に入るのだ。


「今日の行いがこうだったから・・・ あ、こういう()()になるわけか。」


 彼にだけ、それこそ両親にも伝えたところで聞いてもらえないのは百も承知なので喋ってすらない、彼だけの力。


 世界は「夢の中でのみ、()()()先の分岐点が見える」能力がある。


 数多の、それこそ無数にある分岐の未来を世界は見ることが出来る。 ただしこの能力に使用される脳の処理能力は尋常ではなく、そもそも一般人が抱え込める情報量ではない。 だから寝てる間、夢の中でしかこの能力は使わないし、使えないのだ。 そしてそれは寝る時間に比例するので脳の処理能力の事を考えて、睡眠時間は8時間と世界の中で決めている。 それでも睡眠量が足りないときは昼寝もするが、能力は極力使わないようにしている。


 この能力に目覚め始めたのは中学に上がり始めた頃だったが、その頃はまだ時折見る程度で、意味も理解は出来ていなかった。


 世界は最初、この能力を「正夢」だと勘違いしていた。 夢で起きたことが数日後に現実になる。 どこかで見覚えのある景色を見ることになる。 それを感覚的に捉えていた。


「デジャブ」と言われる体験したことがない筈なのに、既に体験しているかのような錯覚を引き起こすものだと世界はその当時思っていたが、何回も眠るうちに、夢を何度も見るうちにそれはただの正夢現象ではなく、自分の未来を見える能力だとはっきりと分かってきていた。


 本格的に能力を使い始めたのは中学三年生の時、色々と悩み始めたときにこの力を使おうと思ったのが始まり。


 最初の頃は色々な未来を見えるということで、自分のなりたいものの未来を見たこともあったが、あまりにも現実離れしているのと、やりたいことのための時間が遅かったこともあって、今出来ることを考えることにした。


 それでも1つだけ彼が決めていることがある。


 それは「人として踏み外すような悪事は絶対にしない」事である。 良さも悪さも兼ね備えている、それが彼の能力なのである。


 そのため彼の友好関係も、結果の良し悪しで決めている。 決めつけは良くないが、危険な芽は早めに切り取ってしまった方が、かえって気分が移らない


「今日の分岐点は・・・まずは3つか。」


 パラレルワールドといっても枝分かれするのは行動内容の数による。 そこから芋づる式で分岐がどんどん行われていくのだ。


 彼が行った本日の行動としては


 1:学校に着いて、朝の授業の準備をする。


 2:一時間目の終わったタイミングで顔を洗いにいく。


 3:購買でパンを買いにいく。


 4:部活にいく友人に声をかける。


 5:帰宅後、買い物を頼まれる。


 大きな行動としてはこのくらいだ。 これにより起こる事象が彼の未来を変えるものとなる。


 そしてこれらが起こす現象としては


 1:取り出している教材を見て、目の前の友人が宿題を忘れたのを思いだし、授業ギリギリまでノートを貸してピンチを救わせ、友情アップ。


 2:ハンカチを持っていない事に気付き、悩んでいたところにクラスの女子がハンカチを差しのべてくれる。


 3:購買で人混みに揉まれながらつかみとって買ったパンが自分の買いたかったパンでは無かったが、たまたま近くにいた生徒も、アレルギーの入ったパンを取ってしまって悩んでいたので、交換してあげると言ったら、感謝してくれた。


 4:話が弾み、部活の到着を遅らせてしまったことを謝った。


 5:棚にあった商品を取ろうとしたら、今朝ハンカチを貸してくれた女子と手先が触れた。


 となっている。


 これらの起こった事象が明日以降の未来へと繋がっていく。


 とはいえそれを確定させるのは夢の中ではなく、現実で起こさなければ、未来は大きく変動してしまう。 そのため世界は自分の生きたい未来への()()()を見るのだ。


 ただし彼にも目的無しにこの夢に入っているのではない。 能力を最大限使えば、将来を見るのも容易いこと。 しかし世界はそれをしない。 なぜなら知った未来など、それは未来ではないと確信しているからである。


 要は「どんなことにも必ず予期せぬ事態が起きる」と世界は身を持って何度も体験しているからである。 そしてそれは、世界では見ることが出来ない未来でもあるからだ。 突発な出来事ほど対処できないものはない。 だから未来のために生きるのではなく、明日死ぬかもしれない。 と思いながら世界はこの夢を見ているのだ。


「さてと・・・明日は何をすれば安全か・・・」


 そう言って1つずつ確認をしていく。 彼の中で見る未来の時間は24時間分。 それを最初の分岐分だけ繰り返す。 それが世界のやり方である。


 世界自身そんなに未来の先を見たいとも思ってはいないし、その未来が確定している訳でもない。 決して繰り返すだけの作業的な毎日では無いにしても、余程の予定がない限りは24時間以上先の未来を見たことはない。 未来を生き抜くためには、今をしなければ何も始まらないからである。


「まず最初は・・・朝早くに登校をする。 それも15分早くにか。 そうすると・・・? なるほど・・・それで次の分岐で・・・」


 このようにして世界は1日の行動を決めていたりする。 だがあくまでも「()()()」だけで、実際に起こり得ることではないと最初から頭に入れている。 それに見えるのは断片的で、全部の時間が見えるわけではない。 未来は不確定要素の多い領域、見えるだけでも対したものであったりもする。


「ふーん、こんな感じになるのか・・・次の分岐の未来は・・・」


 世界はこの夢の中で見るこの現象は嫌いではない。 今のところ他の人に話す気はないし、信じて貰えないからだ。 唯一話した友人には冗談半分に聞いてもらっただけなので、多分戯言だと思っている。 実際にそう思ってもらった方が気楽に話せたりはするが。


「この未来はちょっとダメだな。 求めてる未来に付かないな。 最後は・・・」


 世界が今見ているパラレルワールドだって確定されているものではない。 最初に見ている場所、登校時間の速さだってあくまでも「その時間に登校したときに起こる事象」でしかないわけで、結果しか見えておらず、過程が見えないのだ。 つまりその事象に辿り着くための行動を先に決めておかなければならない。 これが世界が必要以上にパラレルワールドの情報を入れない理由でもある。 決められた未来に行くために、自分がその行動をしなければならないので、かなり消耗するのだ。


「・・・うん。 今回はこの未来にしよう。」


 自分がいく未来の大体を見た世界は、「何時もよりも15分ほど遅れて登校する」未来選択して、その先のパラレルワールドを具体的にまた見ていく。


 最初の未来を決めた後の世界にはあまり迷いはない。 迷いがないというよりはあまり考えないようにしているのが彼の流儀でもある。


 能力が発現して3年。 この能力で見せてくれる未来が断片的だったことがとても致命的だということに気付いた事があった。


 良い行いをしようとして、それが裏目に出ることなんてものはザラで、むしろ悪化させる事態になったこともあった。 もちろん逆転現象も起きたこともしばしば。


 つまり確定された未来でも、それが必ず行うことが絶対条件ではないし、することで悪い方向に進むこともある。 未来とはそんなものなのだと若いながらも悟ったのだ。


 今を生きている現実などそんなものだ。 自分の思い通りに行かないことなんて普通だし自分の行いに当たり前なんて存在しなかった。 そういう意味でも、世界は諦めていると言うよりも、割り切っているとも言えるだろう。


「この未来は・・・あの子が良く出てくるな。 やっぱり少し印象に残ってもらえたのか。」


 しかし能力があるといってもそれ以外は普通の男子高校生。 思春期真っ盛りであるが故に、異性のことには少々敏感になりやすい。 好印象を持って貰うことに嬉しいことはこの上ないのだ。


 だが見える未来は自分のものだけだし、なにより他人の事までは干渉は出来ない。 さすがに他人のあれこれまで見えてしまえば万能どころの騒ぎではなくなる。 見える未来は多くても他人との繋がりに関しては意味は無い。 その辺りは自分自身で切り開くしかないのだ。


「これがこうなって? おっとこれは・・・いや、でもその先が・・・」


 世界は自分が生きたい未来を慎重に見ていく。 断片的とはいえ、起こらないのならば見るだけで十分な時もある。 たまにそういう場面の未来の分岐もあるのだが、大抵はその先にある未来はあまり芳しくない未来になっていることが多い。 なので現実では絶対にしないよう、夢の中で満足しているというわけだ。 ある意味世界なりの一種の処世術とも言えるだろう。 ・・・あまり観すぎると罪悪感が生まれ、引き戻せない可能性もあると世界は考えている。


「・・・この子には好かれたい・・・気もするなぁ。」


 世界自身、女子との交流は少なからずあった。 だが改めて自分の未来を生きようとするとき、周りに自分に付いてきてくれる人間がいるのだろうか。 世界は不安になるときもある。


 この事象だけは成し遂げてみせると、珍しく決意を決める世界であった。


「よし、今回の道筋はこんな感じで行こう。 さて、どう行動をしていけば、この事象たちにたどり着けるかな?」


 全てを見終えた世界が次に考えるのは、どうすればその「事象」に辿り着けるかという事である。 未来が見えたところでその事象が起こらなければ行いが無駄になる。 なので事前に行動予測をするのが世界が目覚めるまでにやっていることである。


 ちなみに明日起きてから彼が行おうとしている事象は


 1:朝はいつもの時間よりも15分遅れて登校をする。


 2:1時間目終了時に、自分の特等席に行く。


 3:3時間目終わりに一足早く購買に行く。


 4:購買で購入した昼御飯を持って屋上ドア近くの踊り場に行く。


 5:午後の授業が始まる前に仮眠を自分の席でする。


 6:そのまま家には帰らず、少しスーパーに寄る。


 7:夕飯を食べ終わった後に、少し近所の散歩をする。


 である。 もちろんこれがどのような事象に影響するかはなってみなければ分からない。


「朝早く行くのは良いけれどそれのせいで忘れ物をする。 だったらその忘れ物をしないために朝はゆっくりと確認をすればいいってことだな。 忘れ物は確か・・・」


 複数の事象を見れるからこその利益、それは他の事象の観測を出来るというところだ。 これを使えば、自分の行きたい事象につける可能性がぐっと上がる。 


 ただしこれも利益ばかりではない。 起きることが必ずしも平行ではないので、別の事象の記憶は受け継がないのと、基本的に分岐点が交差する事がないので、今から行きたい事象から、別の事象のスタートの起きる事柄にはたどり着くことは出来ないと言うことだ。


「・・・えぇ、こんなこと・・・いや、前後に理由があるはずだ。 決めつけは良くない。 そうだ、絶対に早合点はするな、俺。」


 そして事象によっては自分が意図せず望まない事象も観測、実行しなければならないと言うことだ。


 だからこそ自分の悪い方向に進まないように、気を配らなければない。


 今までだってそれをこなしてきたかった事もある。 だが本当にその事象が確立するとは限らない。 未来は不確定の事象。 本来ならば見えてはいけないと、世界はこの夢を本格的に利用し始めた時からそう考えていた。


 テストのカンニングも出来たがしなかった。 道を踏み外しそうになった元々関わりのない生徒と仲良くなった。 女子に悪いことをしようとしていた奴を指摘し、未然に防いだ。


 だがこれが全部が全部、よい方向に進むとも言えなかった。 だからこそ思いきった行動が出来ないのもまた事実だ。


 その苦い思いはこの能力が認識し始めた頃にすぐに発覚した。 例え自分のにとっては良い行いをしたと思ったが、全体を見ればあまりよくない方向に進んだ事もあった。


 そしてそんな世界にも変えられないものだってある。 それは・・・・・・・・・・・


 自宅の中の一室、自分の部屋に響く目覚まし時計のアラームで目が覚める世界。

 世界の夢の中での出来事は終わり、現実に戻される。 最初の頃は、夢か現か分からなくなっていたときもあったが、今はどっち側にいるのかわかるようになっていた。


「・・・あの子に好かれるようになりたいな・・・」


 そう朝に呟く世界。 変えられないもの、それは過ぎ去ってしまった過去の話。 どれだけ未来が見えようと終わってしまったものは戻らない。


 今の自分がいるのは今までの行いをしてきたからである。 そしてその過去を生かすために今を生きる。


 過去無くして未来はない。 それはちらりと読んだ本の中にあった内容か、自分が聞いていた音楽の歌詞だったか。


「とりあえずまずは準備しないとな。 持っていくものはっと・・・」


 この物語は変えられる未来を知りながらも、全うに普通に生きようと考える、どこにでもいる高校生の、誰も持っていない力と共に生きる。 そんな偽りのない生き方を見る少年の物語である。

いかがだったでしょうか?

ジャンル違いと言うこともあってかまったく書けたような気がしていません。

実際の事を言えばこの小説は主催者様の1つの条件をクリア出来ていないのですが、「SF」についてほぼほぼ未知な自分にはこれくらいが限界だった訳でありまして・・・・・・

次に短編を書く機会があるならもう少しまともな作品を作りたいと思った次第です。

読んでくださりありがとうございました。

今後とも「風祭 風利」の作品をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ