マチ
あの冬の日、死んで天国に行けたらどれだけ幸せだったことか。だって天国には優しいお婆ちゃんが待っててくれるから。
「おい!!マチ!!立ち上がれ!!」
おっと、少し寝てた。カウントは?
「7!!8!!」
おっと、すぐに起きないとな。
私はすぐに跳ね起きた。あの寒い日に比べたら、まだまだ頑張れる。
マッチ売ってる間に、ぶっ倒れた私を拳闘やってるジム爺さんが助けてくれた。凍死寸前だった。
助けた理由は慈善じゃなくて、拳闘やる相棒を探してたらしい。死にかけを助けられたんだから私に断る理由は無くて、基礎からミッチリ教わって、教わった殴り方でクソ親父の顔面に一発、鼻っ柱へしおってやった。
そんなんで親と絶縁してジム爺さんの家に転がり込み、ひたすらサンドバッグを叩く日々。
おかげで数年後、ボクシングの世界戦やってる。
相手は趣味でボクシングやってるようなお嬢様。絶対負けない・・・と意気込みすぎてカウンター喰らったのは私の落ち度。次は油断しない、ファイティングポーズだマチ。
「あらあら、そのまま倒れてれば良かったのに、観客もアナタが立つのを誰も望んで無くってよ。」
話し掛けてくんな、巻き髪金髪つり目女。歓声よりウザったいわ。
「アナタ、幼い頃マッチ売りしてたんですってね?みすぼらしいの極みね♪」
あー殴り合いしてる時に口喧嘩仕掛けられるのは萎えるわ。そんなにお喋りしたいなら少し付き合ってやるか。
「アンタ、マッチに火を付けて幻覚見たことあるか?」
「なんですの?藪から棒に、あるわけ無いわ。」
「ふぅーん、私はあるぜ。七面鳥に暖かい暖炉。なんでもござれだ。」
「・・・とんでもない頭いかれ女ですの。」
「アタシの赤いグローブ、まるでマッチの先みたいだよな。強く擦ったら火が付くかもな。」
「はぁ、次から次に妄言を言いますのね。全く楽しい人ですこと。」
「アンタにも見せてやるよ・・・幻想を。」
お喋りは終わり。私はニタリと笑って、本気の右アッパーを御嬢様のアゴめがけて放った。
"シュッ!!"
このアッパーの風を切る音が、マッチを擦った音に似てるから"マッチ・アッパー"って名付けて見たけど、自分でダサいって気付いてるから大丈夫よ。
"ガゴォン!!"
轟音と共に御嬢様のアゴにアッパーを直撃。体が宙に浮いてて良い気持ちの筈、私のマッチで良い幻想見なよ。
御嬢様が地面に倒れて白目になって私の勝ちは決まった。
観客は大歓声・・・じゃなくて大ブーイング、私が勝って喜んでるのはジム爺さんぐらい。だから私はグローブを床に叩きつけて、両手で中指立てて舌をベーっと出してやった。
お婆ちゃん見てる?私の命の火は、まだ燃えてるからさ。生きれるところまで生き抜いてみるよ。