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3話 えっちぃ契約


「誰だ!?」

 

 背後から聞こえてきた声の主の正体を確かめるべく、俺は素早く振り返る。

 しかし、俺の視界に映るのは崩れ落ちた瓦礫の山ばかり。

 いや、さっきの声は俺達の真後ろと言うよりも、その上から……!?


「誰だ、ですってぇ? 脆弱な人間風情が生意気ね。そもそもそれは、こっちの台詞でしょうに……って、ソロモン!? 嘘でしょぉっ!?」


 ……いた!!

 バサバサと羽音を立てながら、満月を背景にして夜空に浮かんでいる少女。

 その背中から両サイドに伸びている赤い光は、目を凝らしてみると炎の翼である事が分かる。顔はよく見えないが、体型は……胸が少し慎ましいかな?


「なんで!? どうしてアンタがここにいるのよ!?」


 翼の少女は炎の翼を折りたたみ、俺達の目線の高さまで降りてくる。

 その顔は驚愕に満たされてはいるものの、文句なしに可愛い。

 ただ、それよりも注目すべきは彼女の服装だ。夏の砂浜で見かけるようなパレオ付きの黒いビキニ水着。それに加えて足には何も履いておらず、裸足の状態。

 よく見ればその足先は、地面から10cmほど高く浮き上がっていた。


「千年前にアタシ達を捨てていなくなったアンタが! 今更なんでっ!?」


 地面に付くギリギリまで伸ばされた真紅の長髪を風に揺らし、翼の少女は怨嗟の言葉を叫ぶ。その矛先は間違いなく、俺に向けられている。

 状況と口ぶりから察するに、この子もソロモンの魔神の一柱で間違いなさそうだ。


「お前はお前で、相変わらず怒りっぽいままじゃな、フェニックス」


 そんな俺の推測を肯定するように、ベリアルが翼の少女の名前を呼ぶ。

フェニックス……確かにあの子は不死鳥のイメージとピッタリ合う。

 燃え盛る炎の翼もそうだし、あの赤い髪もその印象に拍車を掛けていた。


「喋る人形? それにこの声と喋り方は……もしかして、ベリアルなの!?」


 本来の姿とは異なるベリアルの姿を見ても、すぐにその正体に気が付くフェニックス。最初は険しい顔をしたものの、その表情はやがて緩んでいき――


「ぷっ、くくっ……あっはっはっはっはっ!! なにそれぇ!? 随分と可愛らしい姿になっちゃって! 最高の魔神と呼ばれたアンタが、嘘でしょ!!」


 大爆笑。ベリアルを指差しながら、嘲るように笑い出すフェニックス。

 空に浮いたまま、足をバタつかせている姿は微笑ましいものであるが……


「ソロモンを呼び戻す為に必要な犠牲じゃ。儂はこの姿こそ、アイツへの忠誠の証じゃと思うておる。誰に笑われようとも、気になどせぬ」


 対するベリアルはまるで意に介していないように、毅然とした態度を崩さない。

 そんな彼女の反応が面白くないのか、フェニックスの顔から笑みが消えていく。


「……へぇ? 昔のアンタからは想像もつかない殊勝な台詞ね。ま、こっちとしてはアンタが全力を出せない状態であるなら……なんだっていいんだけど」


 真顔に戻ったフェニックスの青い双眸がギロリと、俺に照準を合わせる。


「あの指輪を嵌めている以上、ただの他人の空似ってわけじゃ無さそうね。だとしたら悪いけど、そこのソロモンもどきは頂いていくわよ!」


「えっ? 俺の事を頂いてくれるのか……おわぁっ!?」


 フェニックスは言葉を言い終えるのと同時に両翼を広げ、次の瞬間には凄まじいスピードで俺の眼前にまで接近。炎を宿した右手を突き出していた。

 ああ、近くで見てもやっぱり可愛い。でも、この手に掴まれたらかなりヤバそう。

 一秒にも満たない刹那の時間。逃げる事も避ける事も叶わず、成り行きに任せるしかないと諦めて瞳を閉じた……その時。


「させませんよ! ソロモン様は! 私達が待ち続けた希望なので!」


 ガギィンッと、耳を劈くような金属音が鳴り響く。

 恐る恐る瞼を開いた先に映るのは、手にした槍でフェニックスの手刀を弾くフルカスの姿。その両手に握り締められた槍は黒くて太く、重々しい。

 そんな物騒な物、一体どこから取り出したんだ!?


「ちぃっ!? 鬱陶しいわね!」


「このままくたばってください! せいやーっ!!」


 フルカスの槍によって手を薙ぎ払われたフェニックスはバランスを崩しており、フルカスはそんなフェニックスに追い打ちを掛けるように……えっ?


「ほわあああああああっ!? 美少女が串刺し!! いやぁぁぁぁっ!?」


 フェニックスの下腹部に漆黒の槍が突き立てられ、真紅の鮮血を巻き上げる。

 突如行われたスプラッタな惨劇を前にして、俺は情けない悲鳴をあげてしまった。


「……あーあ、油断した。いくら雑魚だからって、存在を忘れていちゃダメよね」


 しかし刺されたフェニックスはというと、腹を貫かれた事など痛くも痒くも無い様子で不敵な笑みを浮かべている。刺さってます! すっごく刺さってますよ!


「ベリアル!! ベリアールッ!!! ベリアルさーん!!!」


 俺はショックで腰を抜かしつつも、地面を這いながらベリアルに救いを求める。


「落ち着け、ミコト!! この程度で取り乱していては、この先もたんぞ!!」


 この程度ぉ!? この程度だとおっしゃいましたか、ベリアルさん!?

 俺の常識では、美少女同士が殺し合うのはこの程度ではありませんが!?


「アンタもまるで学習しないわね、フルカス。最弱の騎士エクェスの分際で、侯爵マルキオーのアタシに勝てると、本気で思っているわけ?」


「ぐぅ……」


「はぁ? なにそれ?」


「ぐぅの音も……まだ、出ますっ!!」


 会話の内容が気になって振り向いてみると、フルカスがフェニックスに前蹴りを浴びせる事で、遠くへと吹っ飛ばす瞬間が目に入った。

 槍が抜けたフェニックスの腹部から溢れ出す赤い血が、それはもうブシャーッと辺り一面に散らばって……あっ、廃墟の中に突っ込んだ。


「どど、どういう事だよベリアル!? なんで、俺のハーレム候補の美少女達が殺し合っているんだ!? 俺の取り合いなの!? これ、俺のモテ期到来なの!?」


「だから落ち着けと言っておるじゃろう。恐らくこれはアレじゃ」


 怒涛の展開によって頭がパニックに陥っている俺とは違い、冷静に物事を把握しているご様子のベリアル。そして、フルカスの方はというと……

  

「ソロモン様、お願いがあります」


 血で濡れた槍を地面に突き立ててから、俺に向かって綺麗な土下座を敢行。

 女の子に、先っちょだけ、と土下座した事は星の数ほどあれども、女の子……それも美少女に土下座されるなんて初めての経験なので、言葉に詰まってしまう。


「実はこの私、こう見えても魔神の中で最も階位が低く、自分自身の魔力がひっじょーにアレでコレな感じのソレっぽいヤレヤレなのです」


 頭を上げて、身振り手振りを踏まえながら自分の強さに関して話し始めるフルカス。しかし、その動きはあまりにも拙く、あまり頭には入ってこない。

 ソシャゲとかでよくある星1から星5までのレア度とか、そういう感じの階級分けがソロモンの魔神にも存在するという事なのだろうか。


騎士エクェス伯爵コメス侯爵マルキオー総裁プレイジス公爵ドゥクス支配者レクトル。この順に魔神の力は強大になっていく。相性の良し悪しはあるが、基本的に上の階位の者に勝つ事は難しいのじゃ」


 説明下手なフルカスに代わって、詳細な補足を付け加えてくれるベリアル。

 なるほどね。つまり、さっきフェニックスが言っていたのは、最下位クラスのフルカスでは、階級が二つ上である自分には勝てないって話だったのか。


「事情はおおよそ呑み込めたけど、俺に何ができるんだ?」


「契約じゃ。ソロモンの指輪を使って魔神と契約する事で、契約者は魔神の能力を覚醒させ、真の力を引き出す事が可能となる」 

 

「お願いします。ソロモン様の力をお借りすれば、こんな私でもあのにっくきフェニックスを倒せちゃうのです。一家に一柱、フルカスなのです」


 契約か。それを行えばフルカスはフェニックスに勝てるかもしれない、と。

 むむっ、俺の心情としては美少女同士の争いでどちらか片方に肩入れするのはフェアじゃないと思うんだけど……俺に友好的なのはフルカスの方だしなぁ。


「……オッケー。美少女の喧嘩を止める為の協力なら喜んで」


「むふぅーっ! 感謝します、ソロモン様! このご恩は絶対忘れません!!」


「いや、すぐに忘れて貰って結構だけど……これだけは覚えておいて欲しいかな」


 俺からの協力が得られると聞いて、爛々と瞳を輝かせるフルカス。

そんな可愛い魔神少女に手を差し伸べながら、俺は一つだけ訂正をお願いする。


「俺の名前はソロモンじゃなくて、尊って言うんだ。そこんとこ、よろしく」


「んむぅ……? んー……はいっ、ミコト様!」


 手を取り合い、俺とフルカスは立ち上がった。

 さっきまではビビッて抜けていた俺の腰も、いつしか元通り。暖かくて柔らかなフルカスの手に触れていると、やる気がモリモリ湧いてくるようだ。


「……作戦会議は終わったかしら?」


 直後、フェニックスが突っ込んでいった廃墟が爆散する。跡形もなく更地となった場所に佇むのは当然、炎の翼を大きく広げているフェニックス。

 

「何度やっても、アタシに致命傷を負わせる事は不可能よ。序列第37位フェニックス。再生の炎を持つアタシに、アンタ達如きで勝てるとは思わないで」


 微笑を浮かべながら、こちらへゆっくりと滑空してくる彼女の腹部にはフルカスによる攻撃の傷は見受けられない。この僅かな時間で完全に回復したのだとしたら、再生の炎とやらは凄まじい力だ。不死鳥の名は伊達じゃないらしい。


「その余裕もそこまでじゃぞ、フェニックス。見るがいい、新たなる王の誕生を!」


 傷の癒えた下腹部を両の手で摩るフェニックスの仕草はちょっとエロい……じゃなくて、そんな彼女に反論するようにベリアルが一歩前に歩み出る。

 その自信に満ち溢れたベリアルの顔を見て、フェニックスは眉間に皺を寄せた。 


「まさか、この場で契約を行うつもり? アタシは別に構わないわよ、ソイツが本当にソロモンの生まれ変わりなのかどうかを確かめるチャンスだし」


 てっきり妨害に走るのかと思いきや、意外にもフェニックスは俺達の契約を見届けるのだと言う。まぁ、変身中や必殺技のバンク中に妨害はしない特撮のお約束的なノリは、ファンタジーの世界にも存在しているという事だろう。


「ではミコトよ! これより、契約の魔法陣を描くのじゃ!!」


「えっ? 無理ですけど?」


 そんなできて当然みたいな目線を向けられても、知らないモノは知りません。

 だからほら、みんなして失望の目を向けてくるのはやめてください! 


「うむ……そうじゃったな。仕方ない、今回は直接契約で済ませるとするか。フルカスも、それで構わないじゃろう?」


 どうやら魔法陣を描けなくても、他に契約する方法はあるらしい。

 良かった。格好付けた手前、ここで何もできないなんて恥ずかしすぎるからな。


「問題ありません! じゃあ、ミコト様……優しく、お願いしますね?」


 フルカスはベリアルの言葉に頷くと、その両手を自身の胸当ての方へと伸ばす。

 そしてそのまま胸当てを掴むと、ぐいっと上の方にずらし……たぁっ!?


「むふぅっ! では、ちゃっちゃと触っちゃってください!」


「ぶぅはっ!? んな、ななななっ!?」


 ぷるるんっと、胸当ての圧力から解放された巨乳が零れ落ちる。

 張りのある胸は少し重力に逆らうように上向きで、綺麗な円錐形をしていた。

 しかも、その胸の主役を務めるあの部分は、それはもう綺麗なピンク色で……

 

「ありがとうございますっ!! ありがとうございますっ!! あああああっ!!」


 俺は両手を合わせて、この世の至宝とも呼ぶべきおっぱい様に頭を垂れる。

 今まで、エロ本やエロ動画でしか見た事が無かったおっぱいが! 

 生おっぱい様が手で触れられそうな距離にある!! ああっ、神様!!


「拝んでいる場合ではない! 指輪を嵌めた指でさっさと触れるのじゃ!」


 ぐいっと触っちゃってください。さっさと触れるのじゃ。

 フルカスとベリアルの言葉から察するに、俺はこの胸に触れていいという話らしい。存在の知らない母親の胸にすら、触れた事があるかどうか分からないというこの俺が……この可愛い美少女の、それもこんなにも素晴らしいおっぱいに!?


「……ホントニイインデスカ?」


「いいから早くせんか!! お主の力、とくと見せてやるがいい!」


「ワカリマシタ」


 俺とフルカスが契約するには、このおっぱいに触れる必要がある。

 だからこれは邪な気持ちとか一切なくて、純粋な感情なので……そこのところ、勘違いしないように。


「では、失礼します」

 

「……ふぁっ!? いやんっ……あっ」


 俺が伸ばした指先がふにゅんっと、柔らかな胸の中に沈んでいく。

 スベスベの肌の感触を堪能するように指を滑らせると、その度にフルカスの体はビクンッと跳ねて……熱の篭った吐息を漏らす。

 このまま、この固く尖った部分に触れてみたら……!


「ああ、生きてて良かった……生きてて良かったぁぁぁぁっ!!」


「馬鹿者!! 触るのは胸ではなく、その上にある紋章じゃ!!」


「あっ、えっ? 紋章?」


 ベリアルの怒声で我に返り、言われた通りに視線を少し上に向ける。

 すると、フルカスの胸の谷間の辺り……左胸の付け根に、五百円玉くらいのサイズの紋章が描かれているのを見つけた。

 タトゥーのような感じで刻印されてあるソレは、なんだか妙な形をした紋章。

 どうやら、俺が触るべきだったのはこの紋章の方だったようだ。

 

「むふぁっ、ふぁ……ミコト様ぁ……」

 

 もみもみもみ。俺が右手を動かす度に、頬を紅潮させていくフルカス。

 この反応を見られなくなるのは名残惜しいが、今は緊急事態。

 ベリアルの言う通り、大人しく紋章に触れるとしよう。


「では、改めまして」


 ツツゥーッ……ちょんっ。

 俺は指輪を嵌めている人差し指を胸の内側を添うようにして滑らせ、紋章の位置にまで持っていく。そうして、指先と紋章が触れ合った瞬間。

 ソロモンの指輪から、周囲一帯を包み込む程の眩い光が放たれ始めた。


「ふわぁぁぁぁっ!? んぅぅぅぅっ!?」


 目を開けていられない程の光の奔流の中で、フルカスの嬌声だけが響いている。

 いや、それだけじゃない。なんだか、指先から熱い何かが俺の体の中に流れ込んでくるような感じがして気持ちがいい。

 でもその感覚は自分で自分のアレをああするのとか、そういう気持ちよさじゃなくて。例えるのなら……ずっと昔、誰かの胸に抱かれていた頃のような――


今回もご覧頂いて、誠にありがとうございます。

天然系天真爛漫忠犬な美少女がお好きな方は是非、ブクマや評価をお願いします!

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