2話 空から美少女魔神が降ってきた!?
「それで? 俺の帰りを待ち侘びているっていう女の子達はどこにいるんだ?」
気を取り直して周囲の様子を窺ってみるが、俺の求める美少女の姿はどこにも見られない。というかそもそも、どうしてこの場所はこんなに荒れ果てているのか。
視界に映るのは崩れ落ちた廃墟による瓦礫の山と、地面を焦がす炎ばかり。
これではまるで、どこかの紛争地帯……言うなれば戦場のど真ん中である。
「むぅ。そう言われても、儂とてこの状況には困惑しておるのじゃ。なにせ、この地に戻ってきたのは千年ぶりで……ぬっ!?」
ベリアルは話の途中で言葉を止めると、何かを察知したように空を見上げる。
俺もつられて空を見上げてみるが、そこには満天の星が輝くばかりで、おかしいところは何も無い。
強いて言うならば、大きな満月の中央に黒い影が……えっ? 近付いてくる!?
「わぁぁぁっ!? なんだなんだぁっ!?」
ヒュゥゥゥゥン……ズドォォォォン!!!
まるで隕石のように降ってきた何かは、俺の背後にあった瓦礫の壁へと墜落する。
アレはなんだ? 月明かりの逆光でよく見えなかったけど、人型だったような?
「この気配……まさか、フルカスか?」
「ふるかす? それって……?」
「ソロモン72柱の魔神の1柱じゃ。少し抜けておるが、かなり愛い奴での」
「なんと! 空から女の子が!?」
そうなるまでの経緯は一切分からないが、相手の方から姿を現してくれたのは助かる。空から降ってきた美少女とのラブコメ! 古典的で良いと思います!
「お嬢さん! ご無事ですか!? 今すぐ参りますゆえ、お待ちを!」
俺は逸る気持ちを抑えつつ、急いで土煙の巻き上がる瓦礫の山へと駆け寄った。
「うぐむぅ……いたいぃ」
頭を抑えながら痛みに呻き、瓦礫の中から立ち上がってくる美少女。
外見年齢は俺と同じくらいで、高校生くらいだろうか。
ウェーブがかった銀色のショートヘアーと、頭部の左右からにょきっと伸びる角。
その顔立ちは、俺が想像していたよりも遥かに可愛らしい。
しかも更に嬉しい事に、その体付きは惚れ惚れするようなボンキュッボン。
「ああっ! ただでさえ可愛すぎるのに、えっちな格好まで……たまらん!」
異常な程に肌の露出の多い鎧姿、とでも言えばいいのだろうか。
胸当てはその大きな乳房を支えるだけに存在するような形状で、二の腕まで伸びるアームガードとの間に存在する横乳と脇がとても眩しく見える。
腰当てもミニスカートのような形状だし、レガース付きのブーツは絶対領域という、頬擦りしたくなるような芸術品を作り上げていた。
「まさに人間離れした美だ! なんという……なんというっ!」
「むふぇぁっ? ソロモン、様? どうしてここに……? むむむ?」
墜落の衝撃で脳震盪を起こしているらしいフルカス。彼女は焦点の定まらない瞳をこちらに向けたまま、ボーッとした様子で首を横に傾げた。
ベリアル曰く、俺とソロモンの外見はそっくりらしいからな。千年前に仕えた主と瓜二つの男がいきなり現れたとなれば、理解が追いつかないのも無理はない。
「……どうやら私、死んじゃったんですね」
悩んだ結果、自分が死後の世界にいるという結論を導き出した様子のフルカス。
魔神だからかも知れないが、発想が突飛というかなんというか……アホっぽい。
「むふぅっ! それはそうとソロモン様、お久しぶりですね! 私もとうとう死んでしまったようですが、再会できて嬉しいです!」
感情表現が豊かなようで、フルカスの表情は目まぐるしくコロコロと変わる。
両手でピースサインを作り、体を左右に揺らしながら歩み寄ってくる笑顔の美少女……なんて眩しい。
「ええい! 勘違いするな、このたわけめ! お前も! この男も! まだ死んでなどおらん! しっかりするのじゃ、フルカス!」
フルカスの能天気な態度に業を煮やしたのか、ベリアルはぴょんぴょんと飛び跳ねながら彼女を叱り付ける。対するフルカスはというとダブルピースの体勢を崩さぬまま、不可解そうに首を横に傾げていた。
「お? おおー? この声は……ベリアル様ですか?」
「うむ。千年前の約束通り、ソロモンの生まれ変わりを連れて舞い戻ったのだ」
「むふぇー……でもなんで、そんな癒し系ゆるふわぁな姿に?」
「……色々と事情があるのじゃ。馬鹿なお前に話しても、理解はできまい」
「ぐぬぬぬぅ。ベリアル様はいつも、私を馬鹿扱いしてぇ……!」
千年ぶりの再会で話も弾むのだろう。二人の会話は朗らかな空気に包まれている。
そして、そんな光景がどことなく懐かしく感じるのは、俺の中の――
「あら、随分と珍しいわ。このエリアに生きた人間がいるなんてね」
「っ!?」
ベリアル達のやり取りを見守っていると、背後から女性の声が聞こえてくる。
この声、ベリアルやフルカスとはまた違った……美少女の気配!?
いつも本作をご覧頂いて、誠にありがとうございます。
次回からいよいよ、ヒロインとの本格的な絡み、主人公の戦いが幕を開けます。