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120話 ぷくーっ!


「……どうせボクちゃんなんか、役に立たないクズ魔神なのかも」


「おいおい、いつまで拗ねてるんだ?」


 ウジウジといじけながら、指先で床をツンツンしているカイム。

 俺はそんな彼女の背中をポンポンと叩くと、ベッドから起き上がる。


「んんーっ……ずっと寝ていたからか、体が凝っているな」


「少し運動がてら、城内でも散歩するといい。お前の体調が戻り次第、また特訓を始めなければならんからのぅ」


「そうだな。それじゃあ、ちょっと歩き回るか」


「あぁーっ!! 置いていかないで欲しいかもぉーっ!!」


 俺がベリアルと共に部屋を出ていこうとすると、いじけていたカイムは慌てた様子で追いすがってくる。

 こういう子は下手に甘やかすよりも、こんな風に少し冷たくするくらいがちょうどいいのかもしれないな。


「むぅー! ミコトっちは、新しいお嫁さんに厳しすぎるかも!」


「そんな事ないさ。俺ほど、美少女に甘い男はいないぞ」


「じゃあ! ボクちゃんをもっと甘やかすべきかも!」


「それはカイムの為にならないから。というわけで、ちゃんと自分で歩こうな」


 俺の背後から抱きついてきて、おんぶして貰おうとするカイム。

 背中越しにむちむちボディが押し付けられるのは心地良いけど、カイムのぐーたらを許していたら、彼女のボディはますます肉厚になっていく事だろう。

 だから俺は心を鬼にして、彼女のスキンシップを拒むのだ。


「ずるいかもー!! ミコトっちにそう言われたら、従うしかないのに!!」


「そーかそーか。それは大変だなー」


「むっきぃーっ!! あんまり酷い扱いだと、ボクちゃん実家に帰るかもー!」


 俺に背負って貰う事を諦めたカイムは、ぶつくさと文句を垂れながらも俺の右腕に腕を絡めてくっついてくる。

 とりあえずは、こうして腕を組んで歩く事で納得してくれたようだ。


「おや、アナタ様。お目覚めになられたのですね!」


「アスタ! ああ、ついさっきな」


 カイムとくっついたままユーディリア城の廊下を歩いていると、曲がり角でアスタと遭遇する。

 相変わらずの美しい金髪に、女神を思わせる程の絶世の美貌。

 ただ歩いているだけでも神々しさを放つ美少女なんて、そうそういないだろう。


「お元気そうで何よりです。詳細をお聞きした時は、心臓が止まるかと思いましたけど」


「いやー、死線をくぐっちゃったよ。あははは……」


 アスタは笑顔で話してこそいるものの、その目は笑っていない。

 俺が無茶なやり方でバラムを退けた事を、明らかに非難しているようである。


「かつて、私を救う時にも命を賭けてくださいましたからね。アナタ様がそういうお方だとは理解しているつもりです」


「は、はい」


「ですが、その……私以外の方を救う為にも、命を投げ出されたというのは、なんだか少し……いえ、かなりムカムカしますね」


「え?」


「……ぷくーっ!」


 そう言って、小さな頬を目一杯に膨らませるアスタ。

 あれれ? てっきり俺が命を賭けた事を責めているのかと思ったけど、実際は嫉妬しているだけだったのか?


「あ、いや、悪い。でも、ほら……」


「ふふーん!! ミコトっちはボクちゃん達の事が大好きだから当然かも! アスタロトの事なんか、ちぃーっとも特別じゃないのかもぉーっ!」


「はっ?」

 

 アスタにどう言い訳したものかと考えていると、横からカイムが余計な事を口走り始める。

 おいおい、そんな言い方をしちゃうとアスタが……


「……ぷくぷくぷくーっ!!」


 ほらぁ! ますます頬を膨らませちゃったじゃないか!


「余計な事を言うな、この……!」


「むぐぐぐぐっ! でぃーぶい反対かもぉーっ!!」


 俺は慌ててカイムの口を塞ぐが、時既に遅し。

 アスタの頬はハムスターのように、ものすごく大きく膨らんでいた。


「えっと、アスタ。この埋め合わせは必ずするから!」


「……ぷひゅるるぅ。そうですか。それなら、構いませんよ」


 溜め込んだ息を吐き出しながら、コクリと頷くアスタ。

 

「たっぷりと、私の事を可愛がってくださいね」


「あ、ああ。勿論!」


 しかし、まだその瞳は笑っていない。

 多分だけど、これは凄まじい要求が後で待っているとみるべきだ。


「では、また後で。それとカイム、あまりアナタ様を困らせてはダメですよ?」


「別に困らせてなんかいないかもぉー! べーっ!」


「…………ふふふ」


 意味深な笑みを残して、廊下の奥へと去っていくアスタ。

 というかカイムよ、お前は一体何をそんな風に張り合っているんだ?


「難儀じゃのぅ」


「ああ、難儀だよ」


 ユーディリア城の散歩を続けていけば、今みたいに他の魔神達とも遭遇する事になるだろう。

 その都度、カイムが今の調子で絡みに行っては堪らない。


「カイム。少しの間、大人しくしていてくれよ」


「ふひふひふひぃ、それくらいお安いご用かも!」


「……不安だ」


 軽く二つ返事するカイムの姿に不安を覚えながらも、俺は散歩を継続する。

 はてさて、次はどの子に会うのだろうか――


「むっ!? 勇士ではないか!?」


「あやややぁーっ!! ミコト氏ではありませんかぁっ!」


「あらあらまぁまぁ、ようやく起きていらしたのね」

 

「君達かぁ」


 仲良く3柱並んで、歩いてきたのはアスタと同じくカプリコルムで契約を交わした魔神少女達。


「やぁ、キミィ、ドレア、Gちゃん」


 今度は何事も無いといいんだけどなぁ。

いつもご覧頂いたり、ブクマ登録などして頂いてありがとうございます。

大変申し訳ないのですが、今後は少し投稿頻度が落ちてしまいます。

ペースは遅くなりますが、今後もお付き合い頂けると嬉しいです。

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