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118話 夢の中で逢ったような


 体が動かない。

 まるで、体全体が土に埋まっているかのように……両手両足は勿論、指先の一本すら動かす事ができない。

 しかもボンヤリとした意識のせいか、視界はおぼろげで何も見えない。


「んっ……」


 そういえばずっと昔。

 インフルエンザで高熱を出した時にも、こんな感じになったな。

 あの時は布団の中で孤独に、ただ熱が下がるのを待ち続けていたけど……


「……うっ」


 ひんやりとした何かが、そっと俺の額の上に乗せられる。

 誰かが俺の看病をしてくれているのだろうか。

 寝汗でベタついて不快な体も、優しく拭いてくれている感覚がある。


「つめたい……」


「ふふっ……」


 俺がボソリと呟いた言葉を聞いて、クスリと笑う誰か。

 顔は見えないが、声の感じと肌の柔らかさからして……間違いなく、この子は女の子だ。


「ありが、とう……」


 俺と契約を交わしている魔神少女の誰か……?

 ルカ、フェニス、ハルるん、ドレア、キミィ、Gちゃん、アスタ、ラウム、フロン、カイム……その誰とも、違う気がする。

 

「君は……?」


「…………」


 少女は俺の声に答えずに、俺の傍から離れていく。


「ちが、う……」


 この子は、俺が今までに知り合ったどの魔神少女とも違う子だ。 

 じゃあ、その正体は一体……?


「……今はゆっくりと、体を休めるべきなの。もうじき、あなたには大きな試練が訪れるの」


「試練……?」


「その時に、またあなたに会いたいの」


 少女はそう言い残して、どこか遠いところへと歩いて行ってしまう。

 俺はそんな彼女を追いかけようと、金縛りにあった体を無理矢理に動かして――


「待ってくれっ!!」


「ひょわぁああああっ!? 急にびっくりしたかもぉぉぉっ!?」


「……え?」


 ガバッと俺が上半身を起こしたのは、見覚えのあるベッドの上。

 というより、ここはユーディリア城に用意されている……俺の部屋だ。


「……えっと?」


「ふひ、ふひぃ、ふひひぃ……心臓が止まるかと思ったかもぉ」


 そして、そんな俺の前で白目を剥いているのは――


「カイム、大丈夫か?」


「大丈夫じゃないかも!!」


 俺がこの前契約したばかりのぽっちゃり魔神。

 ジャージに似た服装が妙に似合う、カイムだった。

いつもご覧頂いたり、ブクマ登録などして頂いてありがとうございます。

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