116話 戦いが終わって
「あぁぁぁぁぁんっ!! だぁぁぁぁりぃぃぃんっ!! よくぞご無事でぇっ!!」
「がぅぅぅぅっ!! お帰りなさいですっ!」
「あははははっ! 偉いね、マスター君! 褒めてあげるよっ!」
「呼ばれなかったかも……呼んでもらえなかったかもぉ」
「ああっ、盟友よ!! 小生は信じていたぞ!!」
「凄いのだわ! カッコイイのだわ! 憧れちゃうのだわっ!!」
戦いの決着を迎え、無事に牧場へと舞い戻った俺を、暖かく出迎えてくれる魔神少女達。
正直、バラムとの戦いは心身を削るものだったけど、こうして美少女達から祝福して貰えるのなら……その苦労も報われるというものだ。
「いやぁ、それほどでもー……へへへっ」
「素晴らしいご活躍ぶりですね、ソロモン王。そして、ヴァルゴルの危機をお救い頂いた事……民達の代表として、お礼申し上げます」
俺が照れて頭を掻いていると、ムルムルが一歩前に出てきて頭を下げてくる。
それから、俺が預けていたぬいぐるみのベリアルをスっと俺に差し出してきた。
「そう畏まらなくても、いいよ。俺が好きでやった事だし」
「いいえ、そういうわけには……何かお礼を」
「無駄じゃ、ムルムル。この馬鹿はお人好しじゃからの、誰かを助けて見返りを求めるような真似はせん」
ムルムルの腕の中から俺の頭の上へと移ってきたベリアルは、なぜか得意げにそう答える。
いや、あの……デート一回くらいとか、そういう要求はしたかったんだけど。
「それにしても、ミコトよ。バラムを倒した事は褒めてやるが、奴を完全に調伏できないとは情けないのぅ。ユーディリアに戻ったら、修行を厳しくするぞ」
「……ああ、そこはマジでお願いしたいよ」
俺が未熟だった故に、バラムとの契約は中途半端に終わってしまったからな。
なんとしても強くなって、今度こそは完璧にバラムを堕とさないと。
「なぜですか、バラム様! ここまで追い詰めておきながら――!」
「うっせぇな。オレの言う事が聞けねぇなら、ぶっ殺すぞ?」
「うぐっ……」
と、俺達が盛り上がるその脇で。
バラムが部下の獣人兵達に撤退を指示し、少々騒がしい事になっている。
ここまで追い詰めておきながら敗走ともなれば不満が出るのも仕方ないが、結局はバラムの下した命令に獣人兵達が逆らえるわけもなく。
「いいか? 二度とヴァルゴルには手を出すな。分かったら、とっとと帰んぞ」
「「「「「「「「「「…………ハッ!!」」」」」」」」」」
「おし、良い返事だ。そんじゃあ、オレは別れの挨拶でもしてくる」
獣人兵達を納得させたバラムは、ひと仕事終えたという感じの晴れやかな表情で、俺達の方へと歩いてくる。
うーん、しかし……戦いの時は夢中で注視する暇が無かったけど、あのサラシに包まれた爆乳の戦闘力は――凄まじい。
「よぉ、お前ら! そういうわけで、オレ達は今から帰るわ」
「……バラム。その軽いノリは、いかがなものかと思いますが」
「相変わらずお前は細けぇ事ばっか気にしやがる。だからいつまで経っても、チビのままなんだよ」
「は?」
あっ、ムルムルの額に青筋が浮かべて頬を膨らませている。
彼女のキレ顔は、初めて見るけど……ロリが拗ねているみたいで可愛い。
「べろべろべぇーっだ!! さっさと帰ればいいかも、ばーかばーか!!」
「そうですよぉ、ダーリンにイカせて貰えなかった不感症女はとっとと消えてくださぁい!」
やめてくれ、ハルるん。その罵倒は俺にも効く。やめてくれ……。
「がぅるるるるるるるっ!! ご主人様の敵っ!!」
「負けを認めるんなら、こっちの味方になってくれればいいのさー」
「ぎょっ、ぎょえっ……もう、アナタなんか怖くないのだわっ!! こちらには強靭、無敵、最強のソロモン様がいらっしゃるのだわっ!!」
「出会いがあれば別れもある。別れもあれば、再会もあるというものさ、バラム」
バラムの方は割と友好的に接してくれているのだが、こちらの魔神少女達はやけに敵意むき出しというか、バラムを拒絶気味だな。
いずれは彼女も俺のハーレムの一員になるのだから、もっと仲良くしてもらいたいものだけども。
「オレも嫌われたもんだな。しょうがねぇから、本題だけ手短に言うぞ」
「……どうぞ」
「約束通り、オレ達は二度とヴァルゴルには手を出さねぇし、兵も今からきちんと撤退させる。だからよ、レオアード方面の出口まで……案内役を一人貸してくれ」
ああ、そうか。
わざわざバラムが俺達に話しかけてきたのは、帰る為に必要なナビ役を借りる為だったのか。
「……いいでしょう。アナタの事は嫌いですが、その性格はよく知っているつもりです。アナタは一度交わした約束を、反故にするような魔神ではありません」
「助かるぜ。そんじゃまぁ、よろしく頼むわ」
そう言い残して、バラムは足早に去っていく。
まぁ、これだけのアウェイ状態では居心地が悪いのも頷けるけど。
「良かった。これで本当に、ヴァルゴルは救われたんだな」
「はい、全てアナタのお陰ですよ。ソロモン王」
バラムに対する怒りの表情から、コロッと満面の笑みに変わるムルムル。
うん。怒った顔も可愛いけど、やっぱり美少女は笑顔が一番だ。
「それじゃあ……」
ヴァルゴルを無事に救う事もできたし、そろそろユーディリアに帰ろうかと思った……その時。
「あれ?」
突然……俺の体に異変が起きる。
「ダーリン!?」
「マスター君!?」
ぐらりと、視界が揺れて……体中の力が抜けていく。
世界は暗転し、みんなの声がゆっくりと間延びして、なんて言っているのかが聞き取れなくなる。
「ミコ……! ミ……!! しっか……じゃ!!」
誰かが俺の名前を、強く呼んでいる。
ごめん、だけど今は――ただ、静かに眠りたいんだ。
「…………おやすみ」
急激に体を襲った倦怠感と睡魔によって、俺はとうとう意識を手放す。
「…………」
目覚めた時は、美少女の胸の中か膝枕の上だと……いいな。
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