94話 嫌な予感
「よし、それじゃあラウム……力を貸して貰うよ」
(うん! ボクの能力――覚醒させちゃって!!)
ラウムを魔神憑依した俺は、真っ先に彼女の魔神装具である宝盗鍵テサラムキーを出現させ……その力を覚醒させる。
すると、銀色だった筈の鍵はバチバチと金色の光を迸らせて……その色を変えていく。Gちゃんが見れば、きっと大喜びするであろう光景だな。
「よし、それじゃあ試してみようか……ムルムル、いいか?」
「え? あ、はい……どうぞ」
俺がラウムと直接契約した時から、半ば放心状態だったムルムルの名前を呼び、拘束されている両手を前に出して貰う。
後はそこに鍵を向けて、その拘束が外れるように念じるだけで――
「あっ! 開いた!!」
ガチャリと音を立てて、ムルムルの両手から外れる拘束の鎖。
どうやら、強化されたラウムの力はバラムによる拘束を上回ったようだ。
「やったな、ラウム。お手柄だぞ!」
(あはははっ、どうもどうも!)
俺に褒められた事で、頭の中のラウムが嬉しそうに照れている。
その愛らしい声を聞いているだけで、俺もなんだか嬉しい気持ちになってくる。
今までは使用する機会が少なかったけど、やっぱり魔神憑依っていいもんだな。
「……こんなにも、あっさりと」
「ああっ、これが自由!! 盟友よ、感謝するぞ!!」
「た、助かったのだわ!! 奇跡なのだわ!! ボティ達にはきっと、神の加護が付いているに違いないのだわぁぁぁぁっ!!」
ムルムル、アロケル、ボティと、順番に両手両足の拘束を解いていく。
これでようやく、彼女達を連れてこの場から撤退する事が可能となった。
「ミコトっちもラウムも、すっごくカッコイイかも! ちょっぴり惚れちゃいそうかも!!」
「そいつは良かった。でも、喜んでばかりもいられないぞ。まだ、東の方ではハルるんやフロンが頑張ってくれている筈だ」
色んな話をしている間に、随分と時間を掛けてしまった。
急いで、フロン達と合流しないと。
「ええ、そうですね。我々も、仲間を救う為に協力します」
「盟友よ、契約の話は後の楽しみに取っておこう!」
「ぎょぇっ、ぎょぇぇぇ……戦いなのだわ、争いなのだわぁ」
「ヴァルゴルの民は、全員無事に助け出してみせるかも!!」
拘束から解放され、勇ましい顔立ちで立ち上がるムルムル達と、仲間を救う為にすっかりやる気を出しているカイム。
俺は、そんな彼女達の態度を頼もしく――
「っ!?」
その瞬間、俺の脳裏に嫌な予感がよぎる。
さっき彼女と別れた時。
あの時に僅かに感じた胸騒ぎが……今になって、ぶり返してきている。
「これは、まさか……?」
「……ミコト? どうしたのじゃ?」
ただの思い過ごしか、考え過ぎなのか。
それとも、なんらかの直感によるものなのか。
(マスター君、何か今……変な感じがしたような?)
「ヤバイ、マジで急がねぇと……!!」
いずれにしても、俺は感じ取っていた。
少し前に、アスタが俺に救いを求める声を送ってきた時のように。
「このままだと、フロンがマズイ!!」
フロンの身に、とてつもない危険が迫っている事を。
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