93話 ようやく君と! えちえち契約!
「えー!? 本当にいいの!? 新マスター君!」
「契約をするかどうか、選ぶ権利は彼女達にあるんだ。敵対しているわけでもないんだから、無理に契約を強制する必要はないよ」
ムルムルの契約拒否を俺が受け入れた事に、不満そうに唇を尖らせるラウム。
彼女の気持ちは嬉しいけど、こればっかりはしょうがない。
「じゃが、ミコトよ。決して状況は芳しくないのじゃぞ?」
「状況が悪いのは、努力と根性でカバーするさ。最近流行らないって言われてるけど、そういう熱血展開……俺は嫌いじゃないからさ」
「ソロモン、王……?」
まさか、俺が簡単に受け入れてくれるとは思っていなかったのか。
ムルムルは目を丸くして、俺の顔を見つめていた。
「気にしないでいいよ、ムルムル。まだ話していなかったけど、俺はソロモン72柱の魔神全員と愛し合って、本当の絆を結びたいと思ってるんだ」
「「「「えっ!?」」」」
「だから、契約はあくまでもおまけみたいなもんでさ。契約は愛を確かめる方法の一つだけど、愛を深める為の手段じゃない」
俺の契約に対する持論を、驚愕に満ちた表情で聞いているムルムル、アロケル、ボティ、カイムの4柱の魔神達と……背後に控える十数人のエルフ達。
そりゃあまぁ、前世の俺はカリスマ溢れる偉大な王様だったらしいから、いきなりこんな事を言われて困惑するのも当然だよな。
「め、盟友……? 愛し合う、とは?」
「そりゃもう、イチャコラチュッチュと愛し合う事だよ。俺はソロモンの魔神全員と身も心も結ばれて、史上最高のハーレムを築く事が夢なんだ!」
「いちゃこら、ですか……?」
「ぎょえぇぇっ……? ハ、ハハハ、ハーレムゥ……?」
「あー……なんか、ユーディリアで会った時からそんな感じはしていたかもぉ」
俺の主張を聞いて、ムルムル達は戸惑いを隠せないといった様子で顔を見合わせている。唯一カイムだけは、腑に落ちたように何度も頷いていたが。
「とまぁ、そういう事情でさ。無理に契約を交わさせるのは、俺としても望んでいないんだ」
「は、はぁ……?」
「大丈夫。心配しなくても、いつか俺に惚れさせてやるからさ。それまでは別に契約なんて交わさなくてもいいよ」
すぐに受け入れてもらえるなんて思っちゃいないので、俺は少し冗談っぽいトーンで話を締めにかかる。下手にこれ以上ムルムル達を混乱させて、これからの撤退作戦に響いたら大変だしな。
「というわけで、この話は終わり。さっさと――」
「……ぷっ、くくく……あはははははっ!!」
気まずい沈黙が流れる前に、話を切り上げようとした矢先。
突然、ラウムが大きな声で笑い始める。
「ラウム?」
「あはははは、ごめんごめん! 前にも話は聞いていたけど、まさかこんな状況でも、そんな風に持論を展開するとは思っていなかったからさ!」
お腹を抱えて、心底面白そうに笑っているラウム。
彼女は笑いすぎて目尻に涙を浮かべながら、更に言葉を紡いでいく。
「やっぱり新マスター君は面白いよ! それに、君の姿を見ていると……なんだか昔のマスター君に義理立てているのがバカらしくなっちゃう」
そう言って、ラウムは俺の傍に近付いてくる。
そしてそのまま背中を俺に向けると……着ているチューブトップ状の服をガバッと捲くり上げ、ソレを俺に見せてきた。
「これは……!?」
「うん、ボクの紋章だよ。えへへ、こんなに大勢居る前で見せるなんて恥ずかしいんだけどね!」
俺が魔神少女と契約する際に、この右手の指で触れる必要がある紋章。
ソレは72柱の魔神達の体のどこかに、必ず一箇所は存在するらしいが、ラウムの場合は左の肩甲骨の下辺りにあったようだ。
「でも、どうして……?」
「うーん、新マスター君の流儀に合わせて言うなら……君とイチャコラチュッチュするのも悪くないと思えたから、かな」
背中を向けたままこちらに顔を向けて、パチリとウィンクをするラウム。
その可憐な仕草に、俺はすっかりハートを撃ち抜かれてしまう。
「それに、ボクが新マスター君と契約して能力を強化すれば……きっとバラムによる拘束も解けるようになると思うんだ。そこの意地っ張り達が契約を交わさないなら、ボクが一肌脱ぐしかないでしょ?」
「でも……」
「もうっ! 女の子にここまでさせておいて、ノーとは言わないでしょ?」
俺も男だ。そう言われてしまっては、是が非でも断るわけにはいかない。
俺は意を決し、汗ばむ右手を彼女の紋章の近くへと運ぶ。
「ほ、本当にこの場で契約を……?」
「盟友、待て。紋章に触れようとしているという事はまさか……!?」
「ぎょ、ぎょ、ぎょえ、ぎょえぇ……!」
「ふひぃっ!? 直接契約をやるのぉ!?」
俺が魔法の類をまともに扱えない事を知らないムルムル達は、よもや俺が直接契約を行うとは思っていなかったようで……食い入るように俺達を見つめている。
こうなると俺も少し恥ずかしく思えてくるけど、ラウムの白くて綺麗な素肌を前にして我慢できる程、俺は辛抱強い男じゃない。
「じゃあ、触るよ」
「うん……んっ!? んぅぁ……はぁんっ……ふぁぁ……」
俺の指先がラウムの紋章に触れた瞬間、彼女は契約の際に生じる快楽によってビクンッと体を震わせる。
更には甘い吐息を漏らしながら、熱の篭った視線で……俺を見上げてきた。
「んん、んふ……あはっ、ははははっ!! すっごいね、これ! こんなに気持ちいいのに、ヤらないなんて損だよ!」
ラウムは捲くり上げた服を元に戻し、嬉しそうに笑う。
その言葉の端々には、横で様子を見守っている彼女達に対する哀れみのようなものが混ざっているように感じられる。
「「「「…………ごくっ」」」」
しかしそれでも、ムルムル達は怒るどころか、揃って生唾を飲み込んでいた。
初めて目にする直接契約の光景に、釘付けになっているのかもしれない。
「ふむ、契約は成功のようじゃな」
「ああ。というわけで早速悪いんだけど……いいか?」
「うん、勿論さ! これからよろしくね、マスター君!!」
「こちらこそよろしく。じゃあ行くぞ……ゴエティア!!」
新マスター君から、新の文字が外れた意味。
彼女が俺を本当の意味でマスターだと認めてくれた事に感謝しながら、俺は右手の中にゴエティアを出現させる。
そして、この後は勿論――
「オープン! 魔神ラウム! 汝の力を我が物とせよ!!」
いつものように呪文を唱え、俺はラウムを憑依する。
目の前で光の粒子となったラウムが、俺の体に溶け込むようにして一体化していく感覚は……いつも通り暖かくて、そして何よりも。
(わぁっ、すっごいね! マスター君の中、居心地いいよ!!)
「ははは、ありがとう」
またこうして新たに、女の子との絆を深める事ができて――嬉しかった。
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