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逢う  作者: モモココ
1/1

二人

待ち合わせ

# 待ち合わせ


「いらっしゃいませ」


[あら、お客様、…ちょっとセクシーだわ…私


のタイプ]


[あっ待ち合わせだねー羨ましいーいいなー]


[女の子は…?…あらまだ若いじゃない…


かわいい]


# 誘い出す


変わった娘見つけたんだ


俺、変わったもの好きだからさぁ


その娘は、いつも俺の名前をとても楽しそうに


よんで、にこにこしてるんだ


俺のことも、いつも生き生きしてて楽しそうで


すねって言うんだよ


うん。そうだよ。


最近毎日が楽しくなって来たよ


「恋してるからね!」って言ったら、可笑しそ


うにコロコロ笑うんだ


誘ってみた


小さいメモを隙を見て渡したんだ


(あっ居た!…居たか…)


# 車


「居たか…」「えっ…」 「はは…居るよね…や


っぱり…」


「行こうか…車停めてるんだ」


[あら、行っちゃった…いいわねーこれからど


こ行くのかしら…]


「ほらママも行かなくちゃ、お店の時間だよ」


[あら、そうね…][行かなくちゃ…]


# 素敵な車


外に出ると外車が止まって居た


「乗りなよ」


車に詳しくない私でも、カッコいいなと思える


車だ


乗り込むと単純に素敵な気分になった


「俺に似合わない車だろ


「社長の車なんだ、今、営業に使ってる」


混み合った道をしばらく慎重に運転して行くと


、少し広い道に出た


運転して居る横顔が、楽しそうだ



# 手


運転が上手い


それともいい車のせいか


「滑るようですね」と言うと


「嬉しい事言ってくれるね」と言った


突然、片手を差し出して来た


「手!」


手を出すと、さっと繋いで来た


そして、五本の指を広げてしっかり繋ぎ直した


特に感情を入れず、明るく軽く聞いてみた


「いつもこうするんですか?」


「したくない方が多いね」


楽しそうに笑っている



# 黄昏の街を


手は自然に繋がれていた


身体の一部のように運転してる姿がいつもより


益々魅力的だった


こんな車に乗ってたら、他の車から意地悪され


ませんか?


いい女を横に乗せてたら、そんな事もあるかも


な…


えっ 一瞬、どっちかなと思って、横顔を覗き込


んだら、今日は大丈夫だ…こちらを見てクスッ


と笑った


ははっと笑いながら私のショートの頭をなぜた


そんな中も、車は黄昏の街を流れるように走っ


ていった



# まだあなたの小指しか


一週間くらい前、仕事の関係で一緒になり、運


転する車に同乗させて頂いた


別れ際、車の外に出てお礼を言うと、サイドの


窓を開け、また会えるかなと言った


よくある、軽い挨拶かお世辞かなとも思えて


忘れないでくださいネと、少し冗談混じりで言


うと、空かさず小指を出して約束!と、笑いな


がら言った


私は「はい」と言って軽く小指を合わせた


側から見ると恋人同士の別れの場面に見えたと


思う


# 会話


何か趣味とかあるんですか?


そうだなぁ、たまに釣りに行くかな


釣った魚は持って帰るんですか?


離してくるよ


色が白くてさ うん


目が大きくて はい


小さな唇でほっぺがぷくっとした可愛い魚がい


たら、連れて帰るけど…はは…


とても楽しそうに笑っている



# 瞳



そんなに見るなよ…穴が空いちゃうぜ


さっきから、大きな瞳で横顔をじっとみつめら


れて、嬉しいような、困ったような気持ちだ


彼女は、何かを確かめるように、そして何


かを決心するように、見つめているようだった


悪い気はしないが、少し困る


ほんとは俺が君をずっと見ていたいんだよ



# 黄昏の中を


俺 結婚してるんだ


曇りのない 素直な声だった


降りるか…こちらを見ずに、横顔で言った


途端に寂しい気持ちになった


でも 明るくちょっと可愛く何でもなさを装って


降りないと小さく言った


そうか 何か少しだけ決心したように、すっと辺


りをみて、軽く振り切るように、車のスピード


をあげた



# コーヒー


都心を少し離れ、辺りが黄昏から、蒼く変わる


頃、郊外のレストランに入った


店内は家族連れや、友人同士、カップルで明る


く賑わっていた


二人がけのテーブルに通され、私はソファ席に


座った


男は一人がけの椅子に座るなり、上着を脱ぎ、


渡して来た


たたんで横に置こうとすると、羽織ってと言う


シワになるから羽織っててくれと笑う


冷房も効き過ぎているので、素直に羽織ったら


、不思議と落ち着き、まだ知らない何かに、すっぽり


包まれた


抱かれているようです


周りに聞かれないように 秘密の言葉を


そっと言った


彼の上着を肩に、ワイシャツ姿の彼と、


出来立ての恋人同士のように


コーヒーを飲んだ



# ライト


車はやがて都心を離れ、高台に向かっていた


カーブをいくつか回る頃、辺りは暗くなり、街


の灯が見えた


カーブに入ると、車のライトが、ガードレール


の向こうの木々の緑を浮かび上がらせていた


男は、わずかに空いている場所に車を停め、ガ


ードレールの方に歩いていった


女も操り人形の様に後に続いた


カーブのガードレールに腰をしっかりつけ、男


は手を広げ、女を抱き寄せた


女は抱かれるまま、その全身を預けた


車が数台 スピードを落としながら通り過ぎて行



その度に、暗闇に重なる二人が、糸のように そ


ぼ降る雨の中、紅く黄色く鮮やかに映し出され




# ペンダント


高台から降りて来ると街は前より静かになって


いた


「涙のしずくだな…」


私の胸元のオニキスのペンダントトップを見て


一郎は言った


「今度ハワイからお土産買って来るよ」


「ハワイに行くんですか?」


「仕事でね 一緒に行く?」


「あ…いえ…そういうのは…」


(…そういうのは嫌い…)


「はは…」


また私のショートの頭を大きな手で撫でた



# 会話


私、自分が、何か、欠けている気がするんです


それが、何か、自分ではわからないんです


「家に帰って…」 はい


「戸棚を開けて…」 はい


「茶碗を出して…」 はい…?


「一つ一つ調べてみな…」


「何か欠けているかもしれないよ」


一郎は、笑ってスピードを少し上げた



# 誘う



「あなたとお風呂に入りたい」


運転をしながら、男は突然言った


相変わらず、悪びれた感じもなく、面白そうに


笑っている


そんな言葉は、想像もしなかったので、思わず


笑ってしまい、車の中は、急に明るくなった


機敏に運転しながら、男は一瞬真剣な目をこっ


ちに向け、すぐまた甘えるような目で見てきた


運転の途中、お願いしますよというような視線


を何度かこっちに向け、後は私の答えを待つよ


うに、真っ直ぐ前を見て、大人の横顔を、私に


見せた


# 車


別れ際、男は笑って言った


「俺も子供じゃないからさぁ


学生じゃないから」


嫌な感じはしなかった


その目は、いたずらっぽくて、好きだった



# 夜


家の近くで車は止まり、肩を抱かれた


自然と顔が近づき、前髪が触れ合った


数秒の事だった


反射的に、車の後ろを振り返った私に、男は何


も言わずただ笑って、目で別れを告げた


車は直ぐ走り去り、私は、夢から戻って来たよ


うだった


# 水


その水は、意外なほど冷たかった


爽やかに喉をぬらしていった


男はミネラルウオーターを口に含み、


飲ませてくれた




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