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ひねくれ者の最弱魔術の使い方  作者: 幻影十夢
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異世界転移前

「僕と付き合ってください!」

「いいですよ」

校庭の庭木の下で一人の男子生徒が女子生徒に告白を行った。

女子生徒の名はローレル・ラウルスはこの学校で一番人気を誇る美少女だ。

綿毛のように柔やかな金髪はまだ肌寒い風で靡いて、きめ細かな肌は上質なシルクのようでその相貌は見目麗しく整っている。制服の上からでもわかる彼女のプロポーションはモデル顔負け。

清楚と柔和な笑みを浮かばせながらローレルは告白してきた男子生徒に言う。

「それでどこに付き合えばいいのです?」

「え?」

「何か買うのに付き合うのでしょう?」

「あ、違う。彼女になって欲しいって意味で……………………」

「あ、それはごめんなさい。無理です」

その意味を理解して申し訳なさそうに謝る彼女の即答に男子生徒の瞳から薄っすらと涙が出てきた。

告白に成功したと思ったら違う意味で捉えられてその意味を知ったら迷うことなく断られた。

一瞬だけ天国に登って一気に地獄に叩き落された男子生徒は踵を返して全速力でダッシュした。

その瞳から涙を零しながら。

「?」

どうして急に走り出したのかわからないローレルは首を傾げていた。

「たくっ……………これで何人目だ? あの天然女に心をへし折られたのは」

「ん~十人は超えていると思うよ?」

物陰で二人の様子を窺っていた二人の男子生徒は一人は呆れ、もう一人は苦笑い。

「でも君は安心するんじゃない? 翔」

「ハッ? お前が気になるからって言ったから仕方なく付き合って来てんだ。変な言いがかりは止めろ、煌」

「そういう事にしておくよ」

やれやれと肩を竦める飛弾煌(ひだんこう)に腕を組む九条翔(くじょうしょう)は幼馴染であるローレルの様子を陰で見ていた。

結果はいつも通り、ローレルによる天然発言によって男子生徒の心はへし折られた。

翔はその結果を見てその場から離れていく。

「どこに行くんだ?」

「帰る。もういいだろう」

「折角だから三人で帰らないかい? ローレルを待ってあげようよ?」

「知るか。一緒に帰りたいのならお前等だけで帰れ。俺は忘れ物を取りに行ったらすぐに帰る」

そう言って離れていく翔に煌はまた肩を竦める。

普段からしっかりしている翔が忘れ物などするわけがないことぐらい知っている。そしてローレルは教室に荷物を置いている。

教室で偶然に出会ったから仕方なく一緒に帰ってやるという彼が数分後に言う台詞が思い浮かぶ。

「素直じゃないな……………………」

一緒に帰りたいのならそう言えばいいのに、と素直になれない親友に呆れる。





「途中でローレルに捕まったから仕方なくだからな」

「はいはいです」

「そういうことにしておくよ」

ローレルに手を掴まれながら本当に仕方がないように一緒に行動している翔にローレルは微笑み、煌は苦笑。

「あ、私寄りたいところがあります!」

「ああそうか。今日だったね」

「よくも飽きもせず買えるもんだ……………………」

ローレルの言葉に付き合いの長い二人は察して書店に向かうとローレルはスキップしながら書店に入って行き、満面な笑みで出てきた。

「ふふ~帰ったら早速読みますよ」

大事そうに抱えている袋の中身は今日発売日の漫画。ローレルは俗に言うオタクに類する人種だ。

「アニメは日本の文化です」

そう言い切る彼女は外国人ではあるが、物心つく前から日本で生活しているために心は日本人だ。

苦手科目は英語。外国人なら英語は得意だろ? という言葉は彼女には当てはまらない。

「来月の頭から前期末試験だろうが? そんなもん読む暇があんなら勉強しろ」

「う…………だ、大丈夫ですよ。息抜きで読みますから……………………」

「それで以前に俺と煌のところに泣きついてきたのはどこのどいつだ?」

翔の鋭い指摘に苦々しい顔を浮かべるローレル。そんな二人の間に煌が宥めに入る。

「まぁまぁ、僕達も復習になるんだしいいじゃないか」

「その馬鹿を甘やかすな、煌。俺達は二年生にとって次の試験で進路を決めなきゃならねえんだぞ? 常に学年一、二の俺達はともかく下から数えた方が早いこいつには娯楽よりも勉強だ」

翔と煌は順位は入れ替わることがあるけど常にどちらかは一位か二位をキープしている成績優秀者。

ローレルはそんな二人に対して平均よりやや下の成績だ。

「いつまでも俺達が面倒見れるわけじゃねえんだ。いい加減に自立しやがれ」

「ローレル。翔はこう言いたいんだよ? 俺はお前のことが心配で仕方ないんだ。自分の将来のことも考えて勉強してくれってね」

「都合のいいように解釈すんな」

鋭い眼差しを煌に向けるも当の本人は涼しげな顔で無視(スルー)

「ありがとうです。翔」

「礼を言われることはしてねぇ」

感謝の言葉を視線を逸らしながらあしらう翔に二人は暖かい眼差しを向ける。

乱暴な足取りで前を歩く彼の後ろをついていくその瞬間、三人の足元に幾何学的な文様が急に浮かび上がった。

突如、足元に現れた文様。それに最初に反応したのは瞳をこれ以上にないぐらいに輝かせているローレルだ。

「異世界召喚です!! 夢にまで見た異世界召喚です!!」

「んな馬鹿なこと言っている暇があるか!?」

「魔法陣! 異世界転移! 魔法! ファンタジー!」

「おい、煌! この馬鹿を正気に戻せ!」

「ごめん、僕もちょっと感動してる」

「お前等!!」

額に青筋を浮かばせながら怒声を投げる翔。そうこうしている内に魔法陣が目を眩むほどに輝き。

三人はその場から姿を消した。

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