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第二十八話「凱旋、戦いのあとで」③

「そうは言っても、現状は取り立ててプロシア様のお手を煩わすような……待てよ、そう言う事なら丁度いいか。……プロシア、アイシア様の様子を見てほしいんだが」


「はぁ……アイシア様、どうかなされましたの?」


「……まぁ、色々あって馬鹿みたいな量の魔力を取り込んで、昏睡状態になってるんだ。……正直、俺達ではお手上げでな……看てもらえないか? プロシアなら、この手の事は専門家だからな……むしろ、頼む」


「畏まりました……そう言う事であれば……お任せください」


 抱えていたリッキーをソフィアに手渡すと、プロシアはキリッとした表情でそそくさと長老の家へと入っていく。

 マイペースな我が道を行くプロシア様だけど、こう言うときは頼もしい。

 

 正直、来てくれたのは僥倖と思うべきかも知れなかった。

 

 やがて、眠るアイシアの脇に跪くと、彼女はそっと額に手を乗せていた。

 

「何か……解るか?」


「身体的には、異常ありませんが……魔力の循環がおかしいみたいです……何なんですか? この凄まじい魔力は……一体何が?」


「神性存在……こう言えば解るか? 俺達はそれと戦った……アイシアはそいつから莫大な魔力を奪い取ったらしい」


「……神の眷属……そんなものと……」


 普通のやつにこんな話をしても、普通は信じないだろうけど……さすがに、プロシアには解るらしく、真面目な顔をしている。


「ああ……呪詛の類の可能性もあると思ってな……神話でそんな話もあるだろう?」


 神罰とか呪い……アイシアにそんなもの効くかどうか解らないが、可能性は高いと観ていた。


「なるほど……確かに、呪詛の類かもしれませんね……けど、これは?」


「……どうした? 何か解ったのか?」


「上手く言えないのですが……魂がどこか、別の場所に囚われている……そんな状態ですね。……今のアイシア様は抜け殻の状態に近いはずなのですが……そうとは言い切れない部分もありまして……判断が難しいところです」


 淡々と恐ろしい事を告げるプロシア。


「なんだって! ヤバイんじゃないのか?」


「生体反応は問題ないので、すぐに命にかかわる状態じゃないと思いますが……。本人は多分、夢を見てるような……そんな感じなのでしょう。けれど……長引くと衰弱して、命に関わる場合も……」


「プロシア、お前の力でどうにかならないのか?」


「……そうですね……夢魔に取り憑かれた人のケースに似ていますので、同様の方法で対処できるかと」


「夢魔……? ああ、聞いた事あるな……眠り病か……なるほど、なかなか厄介だな」


 眠ったまま、衰弱して死んでしまう病気……眠り病。

 

 ある種の魔物が原因だと言う話は俺も知ってはいた。

 

 ……神樹の悪あがきの置き土産なのかもしれない。

 

 降伏すると言っておきながら、最後の最後に反撃をしてきた……そう言う事なのかも。

 

 アイシアも気を抜いて、気を失ったところに搦め手でやられた……。

 伊達に、神の眷属を名乗ってないと言うことか。

 

「して、対処方法は?」


「……そうですね……夢魔の場合の話ですけど。魂がいわば、別の世界に引き込まれたような状態になる為、外部からの処置では対応が難しいのです。だから、簡単に言えば、誰かが迎えに行って引き戻す……そんな感じですね」


「なるほど……よく解らんが……それはどのようにするんだ? 俺に手伝えそうなことはないか?」


「えっと、そうなると……エド君がお迎えに行くって事で良いですか?」


 プロシアがやけにいい笑顔で笑う。

 

「へっ? お迎えって? プロシアが全部やってくれるんじゃないのか?」


「わたくしは、外部から術式の制御を行わないといけないので、一人だけじゃ無理なんです。通常は誰か助手にでも頼むところですけど……。エド君なら、魔術の素養もあるし、ちょうどいいと思うんですが……どうでしょう? それにこの術は対象の観ている夢に干渉するようなものなので、親しい人の方が拒絶されにくいのですよ」


 ……どうやら、俺はトコトン、身体を張らなきゃいけないらしい。

 でも、しょうがない……そんな状態なら、俺がやらなくて、誰がやる!

 

「解った……どうすればいい?」


 そう答えると、プロシア様はニッコリと微笑んだ。

 

 

 ……それから。

 俺はなぜか、アイシアと一緒のベッドで、隣で横になっていた。

 

 割と大規模な儀式魔術となるとかで、リーザやシーリー、シロウやカティまで呼び出されていた。

 エルフの魔術師も何人か手伝いに駆り出されているし、クロウ隊のラトリフやラナも同様だった。

 

 ちなみに、他の連中はこのランドロフィの家の見張り役。

 

 シーリーとカティは何故か揃って不機嫌なのだけど。

 事情は説明したし、状況も解ってるはず……。

 

 俺は……と言うと、プロシアが言うには密着した状態で、俺が眠ればプロシア達のアシストで、アイシアの観ている夢の世界に入り込めるらしいので、アイシア様と同衾……と相成っている。

 

「……こ、これでいいのか?」


 なるべくアイシアには触れないようにしているのだが、割と体勢的に苦しい。

 これで眠れとか無理がある……。

 

「駄目です……もっと密着してギュッと抱きしめてあげてください……良いじゃないですか……アイシア様もエド君の事、大好きって言ってましたよ。愛があれば、大抵のことが許されるのですよ?」


 ……真顔でそんな事を言うプロシア。

 アイシア様と代わりたい……とか、カティとシーリーが言ってるけど、聞こえません! あー! あーっ!

 

「いや、さすがに恐れ多いんじゃないですかねー?」


「……仕方ないですね……では、この瞬時に眠りにつかせるおやすみハンマーで……」


 プロシアが懐から、布張りされたファンシーなデザインの小さなハンマーを取り出す。

 一見、おもちゃのように見えるのだが、手を滑らせたのか……プロシアがそれを取り落とすと、ドゴンと言う鈍い重量感のある音がした。

 

「……あ、俺! 寝ます! 超眠いっ! アイシア様、すまん!」


 そう言って、アイシアに腕枕をすると、ギュッと抱きしめる。

 暖かくて、甘ったるいような匂い……思ったより、柔らかくて、それでいて小さくて……。

 

 これは……ヤバイ! いかんいかん……そう思いながら、薄目を開けると、おやすみハンマーとやらを構えて、準備万端な様子のプロシアを目にして、あわてて目をつぶる。


 ……連日の疲れもあったのか、あっという間に意識が遠のいていった。

 

 

 第一部 完

 

ひとまず、ここで一旦第一部完とします。


どうにも、手堅く作りすぎたせいもあってか、ちょっとこの作品イマイチ感が拭えません。

改稿なども検討してます。


まぁ、気長にやろうと思ってるシリーズなので、しばらくお休みにして、

当面は、宇宙駆けの方に注力します。

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