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第二十六話「神樹様との因縁」③

「……そんな訳で、皆……リーザ達の神樹様との交渉は決裂したらしい。二人が無事かどうかも解らない上に、リーザからは救援を求められている。こうなると俺達が神樹様と直接話し合って、ケリを付けるしか無いと判断している。……場合によっては、神樹様……神代の化物と一戦交える可能性もある」


 アイシアのいる洞窟に全員と、ランドロフィを呼んだ上で、俺は状況を説明する。

 

「エドワーズ殿……ワシも立場上、そのような強行策はお止めしたいのですが……。もう少し待って頂く訳にはいきませんかな?」


 ランドロフィがなんとも申し訳なさそうにそう言う。

 まぁ、立場上良いとは言えないわな……。


「すまない……ランドロフィ様、仲間の危機なんだ……事は一刻を争うと判断している。ここに呼んだのは、貴方への義理を通すためもあるが、いざと言う時、ソフィアの身柄を保護するようお願いをしたいからでもある……ソフィア、替え玉の件はそれで構わないな?」


「うん……足手まといなのは残念ながら、事実だしね……。アイシア様の影武者ってことなら、むしろ光栄に思うべきでしょ……最悪、捨て駒になるくらいの覚悟は出来てるよ!」


 ソフィアは笑ってそう言うのだけど、安全だなんて、本人も思ってないだろう。

 声が若干震えたのを俺も聴き逃してない。

 

 アイシアも心配そうにソフィアを見つめている。

 

 当然、リッキーも何か言いたげだが……。

 このメンバーで一番の使い手はリッキーなのだから、ソフィアと一緒に残るという選択肢は、残念ながら与えられない……。

 リッキーもそれを解っているのか、敢えて何も言わない。

 

「……とにかく、わたしが神樹様に会って、誤解を解ければ良いんだよね? そうすれば、誰にとっても一番の解決になる……」

 

「そう言う事だな……それとシュタイナの話だと、アイシアの力なら神樹様の張った結界も破壊できるそうだが……ホントに出来るのか?」


「わたしは……正直、良く解らない……そのマジック・キャンセラーだっけ? それの使い方も良く解ってないよ」


「……シュタイナさんがそう言うなら、出来ると思う。……少なくとも俺やカティ程度じゃ、10人居てもアイシア様のキャンセラー一発で吹き飛ばされて終わりだ。……ギルドの腕利き魔術師を総動員したって、結果は恐らく一緒だと思う」


 シロウがそう言うと、カティも真剣な顔で頷く。

 ……こいつらもシュタイナと同意見と言うことか……すげぇなアイシア。

 

「使い方自体は、魔力を扱える人なら誰でも出来ちゃうんですよ……原理的には、相手の具現化させた魔力より多くの反転させた魔力をぶつけるだけなんで……」


「魔力を反転?」


 アイシアが不思議そうに問いかける……抗魔術の初歩だったかな? 魔力を打ち消す反魔力とでも言うべきもの。


「要は、魔術そのものの存在を否定する……その念を込めて魔力を練り上げる事で、作られる魔力の一形態。それを魔力の反転化って呼ぶんだ……実演してやるよ。カティ……治癒でもなんでもいいから、魔術を発動してくれ」


「うん……じゃあ行くよ……傷付きし、いと儚き人を癒す力よ……我が手に宿れ……「癒やしの法ヒーリング」」


 カティの手が徐々に淡い青い光に包まれ、大きくなっていく。

 ここまでは見慣れた光景だった。

 

 この状態で、怪我人の患部に触れるとそれだけで怪我が治ってしまう……聖術が奇跡と呼ばれる所以ゆえんであり、初歩中の初歩とも言える魔術だった。

 

「我は、拒絶する……条理から外れし力よ!! 灰は灰に、無は無へと還れッ!」


 シロウがコマンドワードと共に、カティに手を向けて広げると、パンッと言う音と共にカティの手の青い光が霧散する。

 ちょっと痛かったらしく、カティが顔をしかめる。

 

「……痛たたぁ……い、今のがマジック・キャンセラーです……。「癒やしの法」でしたから、ちょっと手が痺れた程度でしたけど、これが攻撃魔法で臨界状態だったりしたら、大惨事ですよ」


「ああ、それ……服、奇麗にしてもらおうとしてた時にもなってたね……大丈夫?」


 アイシアがカティの真っ赤になった手を握りしめながら、フーフーと息を吹きかけている……。

 実演とは言え、何とも痛そうだった。


「要は、意志の力で魔術を押さえ込む……そう言うもんなんだが、アイシア様はそれを詠唱も予備動作もなしで、無意識に発動できるんだと思う……」


「そのキャンセラーに対抗するには? いくらなんでも対抗手段くらい作られてるんだろ?」


「まぁ、相手に気づかれなきゃ、それが一番なんだが。こないだの奴がやってたみたいに、キャンセラーが効かないくらいの大魔力を用いるとか。2つの魔術を同時に詠唱して準備して、片方を囮にする二重魔術詠唱なんて手もあるけど……そんな使い手、滅多に居ない。あとはシュタイナさんみたいに予め、魔力結晶に魔術を封じるって手もあるな」


「アイシア様相手だと……どれも怪しいですね……攻撃魔術なんて、怖くてとても試せないです」


「そうだな……俺もまだ死にたくない」


 ……要するに、対魔術師戦だとアイシアは事実上、無敵って訳だ。

 

 銃弾や毒物も効果ないとか言う話だし……シュタイナが魔王の使徒になぞらえる訳だな……。

 と言うか……どうやったら、こんな奴を倒せるのだろう?

 

 いや、別にアイシアと戦う事を想定している訳じゃない。


 ……いずれ立ちはだかるであろう皇太子達……奴らも同等だとすれば、そんな相手を倒す方法なんてあるのだろうか?

 

「とりあえず、アイシア……やれそうか?」


 皇太子達と戦うことなんて、ここを無事に切り抜けてからのことだ。

 今は、目の前のことに集中すべきだった。


「まぁ……なんとかしてみせるよ! ……じゃあ、ソフィアちゃん……入れ替わり作戦始めよっか! サティちゃんとカティちゃんも手伝って……男の子たちは直ちに退出っ! でも、エドお兄ちゃんなら、色々見られても良いかも? なんなら、わたしのお着替えシーンでも見てく?」


 何やら、腰に手を当てて髪の毛をかき上げる……変なポーズを取りながら、ウィンクをするアイシア。


 ……意味が解りません。


「ア、アイシア様! 何言ってんですか! 私が恥ずかしいじゃないですかっ!」


 ソフィア……お前、俺の部屋に押しかけて、目の前で寝間着に着替えたり平気でやってなかったか?


 俺だって、男の子なんだから、目のやり場に困ってたんですけど。

 まぁ……今、言うこっちゃないから、黙ってよう……。


「そ、そうだ! そもそも俺が、良くないっ! じゃあ、準備できたら呼んでくれっ!」


 そう言って、俺は真っ先に洞窟の外へ逃亡!


 ……たぶん、ここから逃げるのは、恥じゃないっ!

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