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第二十五話「アイシア様の引き篭もり穴蔵生活」④

「あはは……二人は仲良しさんだねーっ!」


 取っ組み合いを始めた二人を見ながら、思わずそんな事を言ってみる。

 まぁ、仲良く喧嘩……と見えなくもないかな……一応。


「そうですね……こうなると、なかなか終わらないんですよ……二人共、力や体力は全くの互角だから……」


「カティちゃんって……聖術師じゃないの? 普通に正面切って戦ったらサティちゃんの方が強いんじゃ?」


「そうなんですけどね……。あの子達って、血の気の多い種族だから、カティちゃんも血は争えないらしくて、本気出すとサティちゃん相手でも……素手ならいい勝負ですね」


 なんだかんだで、暗黙のルールでもあるらしく、基本は掴み合いで、殴り合いとか引っ掻いたりまではやらないらしい。

 まぁ、怪我しても聖術があれば大丈夫って言ってたし、黙って見守るしかないかなー。

 

 と言うか、何でこんな内輪もめになってるんだろ?

 

 この姉妹、何というか……バイオレンス過ぎ。

 

 あ、カティちゃん……。

 そんなサティちゃんの短パンの脇掴んで引き上げたら、色々大変な事に……なってるよ?

 太ももとか丸出し……それどころか、お股に食い込んで、もっと上の方も……。

 

 カティちゃんもカティちゃんで、紐が解けたらしく短パンがずれ落ちかけてて、下着が丸見え……。

 

 二人共やだもーっ! ……思わず、手で目を覆う。

 

「ソ、ソフィアちゃん……そろそろ、止めたげない?」


 おずおずとソフィアちゃんに助けを求めてみる。

 シャツだって、めくれ上がってて……見えちゃってるし……。


「そうですね……さすがに、これで誰かが来たら……とても見せられないですよね。女子寮じゃ、皆こんな事しょっちゅうやってるんですけど、ここはいつ誰が来るか解りませんよね……」


 苦笑しつつそう言うと、ソフィアちゃん……手近にあった巻物を掴んで、ツカツカと取っ組み合いを続ける二人に歩み寄って、スパン! スパン! と引っ叩く。

 

「い、痛いです……何するんですか!」


「そ、そうだ! これはあたしらの勝負なんだから、外野はだまって……イテッ!」


 ソフィアちゃん、更に巻物でサティちゃんへもう一発。

 

 ……一応、それ貴重な資料なんだけど……って言おうと思ったんだけど……。

 ソフィアちゃんの笑顔が怖かったので黙っとく。

 

「二人共、いい加減にしなさいっ! それに二人共、なんて格好をしてるのよ……今、エド達が来たら、全部見られちゃうじゃない……いい? 乙女はみだりに下着とか、そんな際どいとことか見せちゃ駄目なの! 男の子に下着なんて見せたら、誘ってるようなもんなんだからねっ!」


 腰に手を当てて、お説教を始めるソフィアちゃん。

 ホント、皆のお母さんって感じ。

 

 二人共、正座。

 わたしもつられて、正座。

 

 でも、そうか……そういう手もあるんだ……。

 何を誘ってるんだか良く解らないけど、そうっ! まさしく、色仕掛けって奴だね!


 ちょっとうっかりで、男の子に胸元とか下着をチラ見せとかしちゃって……相手はドキドキ。

 ラブ・ストーリーのはじまりはじまりっ!


 うんうん、そんなお話もあったね! 

 

 けど、そんな事をやってると、背後から咳払いひとつ。

 ……振り返ると、お兄ちゃんと目が合った。

 

「あれ? エドお兄ちゃん……いつの間に?」

 

「ああ、その……さっきからいたんだが、声をかけるタイミングを逸してな……サティ、カティ……お前らも女の子なんだから、色々自重しろ? な?」


 とりあえず、爽やかな笑みを浮かべるお兄ちゃん。

 

「い、い、いつから……そこにいたんですか?」


 恐る恐ると言った調子で、カティちゃん。

 

「うん? まぁ……アイシアの髪を皆で触ってた辺りからかな……」


 すごく気まずそうに目線を逸らすエドお兄ちゃん。

 

 要するに、ほとんど最初から。

 

 色々見せまくりなあの破廉恥な取っ組み合いとか……サティちゃんのお股に下着と短パンが食い込んで、キワドイ事になってたのとか。

 カティちゃんの短パンが半脱げになってたのも……。

 

 全部見てたんだ……これは……痛いね。

 

「黙って見てたなんて……お兄ちゃんって……いわゆるムッツリさん?」


「おまっ! なんでそんな言葉知ってるんだ! あの……その……声かけようと思ってたんだけどな……なんか、お前ら勝手に盛り上がってたし、さすがにそのうち気づくかなーと思ってたんだけど……」


 お兄ちゃんの声が尻つぼみになる……。

 カティちゃん……真っ赤になって涙目。

 

 サティちゃんも真っ赤な顔で俯いて肩をプルプル震わせてる……。

 

 そりゃあ、恥ずかしいよね……カティちゃんなんて、お兄ちゃんラブラブだし。

 でも、好きな人になら、下着くらい見せても……恥ずかしくない……よね?

 

 サティちゃんは……カティちゃんほどでもないから、うん、普通に恥ずかしいんだろね。

 

 アレ、同性のわたしから見ても相当きわどかったからね……。

 わたしだったら、もうお嫁さんにもらってもらうしかないとか考えちゃうくらいだったよ?

 

 ソフィアちゃんもどうして良いの解らないらしく、サティちゃん達とお兄ちゃんを交互に見てる。

 

 カティちゃん、うつむきながら立ち上がると、ユルユルになってた短パンの紐を結び直すと、無言でダッシュ!

 サティちゃんも追いかけるようにダッシュ!

 ……ついでに、八つ当たりのように、無言でお兄ちゃんに一発ボディーブロー!

 

「ウボァーッ!」


 変な叫びとともに、たったの一撃でお兄ちゃんはお腹を抑えてガックリと蹲る。

 

 わたしは……呆然と二人を見送るばかり。

 ソフィアちゃんが心配そうにお兄ちゃんの背中を擦る。

 

 ……たぶん、今のはお兄ちゃん悪くないよね?

 人目を気にせず、脱がし合いバトルみたいなことをする方が悪い……んじゃないかな。

 

 と言うか……わたしもあれくらい積極的に色々見せたりした方が良いのかな?

 今日は、寝る時用に持ってきてた薄手のワンピースだし……。

 

「ねぇ……お兄ちゃん」


「ああ、すまん……なんかしょうもない騒ぎで……」


「カティちゃんとサティちゃんだけ、恥ずかしい思いさせちゃ不公平だし……わ、わたしのも……見る?」


 そう言って思い切って、ワンピースを腰のあたりまでたくし上げようとする。

 ……お兄ちゃんとソフィアちゃんがぎょっとした顔で見たと思ったら、物凄い速さでソフィアちゃんの手が伸びてきて、ガッと止められる。

 

「アイシア様まで何やってんのよーっ! エドの馬鹿ぁーっ!」


 ソフィアちゃんの絶叫。

 続いて、すぐ隣にいたお兄ちゃんの顔面に、ソフィアちゃんの裏拳がお見舞される!

 

「な、なぜだぁああああっ!」

 

 お兄ちゃん、とばっちり。



 ……この後、ソフィアちゃんにめちゃくちゃお説教された。

 

 と言うか、お兄ちゃん……割りとむっつりさんだと判明。

 スカートたくし上げしようとした時、しっかり、目線が下の方へ釘付けだったのをわたしは見逃さなかったのだ。

 

 うん、わたしの女としての魅力も、なかなかだと証明されたようなものだよね。

 

 今後もわたし、二人きりの時は色々色仕掛けで大胆に……なってみようかな?

 

 うふふ……事故を装って、色々と……よくあるパターンだって、エーリカ姫も「女子必見! イケメン旦那をゲットするには?」って手記に書いてたよ?

 

「ちょっと! アイシア様っ! 聞いてるんですかっ!」


 ソフィアちゃんのお説教はまだまだ続きそうだった……。

えっと、ほのぼの閑話休題でした。(違)

ブクマ減ったりしませんよーに。

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