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第二十四話「神樹様とエーリカ姫」②

「実は……わしらもアイリュシア様の一行がこちらに到着する直前までは、普通に受け入れるつもりだったのですじゃ……何せ、我が一族の大恩人とも言える方の来訪ですからな!」


「まぁ、俺もシーリーからそう聞いてたからな……だから、真逆の対応されて、たまげたぜ」


「そうでしょうなぁ……しかしながら、突如……その神樹様から「魔王の使徒を打ち倒すべし!」と村中の者の脳裏にダイレクトに念話を送りつけて来ましてな……あまりに、強烈な怒りと怯えの念と共にだったので、倒れるものが出るほどでのう……」


 ……なにそれ? 魔王の使徒って、誰の事?

 そんなもん、500年前の魔王戦争で魔王共々全員行方不明になったはずなんだけど……。

 すっごく口を挟みたかったけど、ここは黙って話を聞いてよう。


「……長老の一人のラフィアンラの奴めが、皆様を諸悪の根源と決めつけ……問答無用で捕縛するよう命を出しましてな。……挙句に神樹様の怒りに触れたとして、全員処刑すべきと息巻いておったんじゃが……。わしらの反対で、神樹様の目を偽る結界を張り巡らせたこの洞窟内に軟禁し、皆で対応を検討する事にしたんですじゃ」


「……やっぱり、ラフィアンラの婆様の指図かよ……。それなら納得だ……一番面倒くさい相手だからなぁ……」


 お兄ちゃんが苦々しそうに呟く……。

 要するにその人の指示でこうなった……そう考えて良さそうだった。


「まぁ、そう言いいなさんな……アレは、ワシのようにワタリの経験もなく、人ともほとんど交流しとらんからな……。それにずっとこの里を守ってきたと言う自負があるのだろうて……気持ちは解らんでもない」


「……そんなもんかもしれんな……俺達にとっては迷惑な話だがな」


「でも、その神樹様の目を偽る結界ってのに、わたし達を閉じ込めてるって事は、神樹様からわたし達を守るため……そう思っても良いのかな? それならそうと先に言って欲しかったよ……」


「説明が遅れたのは、先の先まで話がまとまらんかったからでな……要は、そう言う事なんですじゃ。……街までお帰りいただこうにも、神樹様より他の森の眷属を差し向けられたら、ワシらでも守りきれません故……。そもそも、ラフィアンナ達はワシらの説得にも耳を貸そうとせず、来訪者達を全員殺さないと村に災いが降りかかるの一点張りで、無事に帰す気もない様子でしてな……双方の妥協案がこの扱い……と言う訳なのですじゃ」


「つまり、どっち付かずで棚上げって訳か……まぁ、現実的じゃあるな。まさか……ドライアードやらゴブリンなんかも全部、神樹様とやらの影響下にあるのか?」


「そこまでは、解りませんが……かつてはワシラを含め、皆そうでしたな。同じようにお告げが下って、行動に移している可能性が高いですな。……連中にとっては、神樹様はまさに造物主……盲目的に命令に従うはずです。しかし、この500年……神樹様も眷属への支配力を失い、ほとんど眠っていて、傷の回復に努めておられておりました。たまに、聖域を掃除しろとか、明日の天気についてと言った……どうでも良いようなお告げを下す……そんな存在だったのですよ」


「けどそうなると、それが本格的に目を覚ましちゃった理由は……? 他の皆は何度か来てるって話だし……。やっぱ、わたしのせいなのかなー? わたし、全然身に覚えがないよっ!」


「そうですなぁ……神樹様も何かに反応して、目覚めたのはまた事実。アイリュシア殿下のご来訪と時を同じく目覚めたようなので……そう思って間違いないなさそうですが……何か心当たりはありますかな?」


 ……心当たり。

 この皇族の力……だよねぇ……どう考えても。

 

 ……と言うか、この力はそもそも何なのか?

 ランドロフィさんなら、何か知ってるかもしれない。


「やっぱ……これ……だよねぇ……ランドロフィさんはこれが何なのか解ります?」


 そう言いながら、例の鉄砂を召喚する……まぁ、実際見てもらうのが手っ取り早そうだ。

 ランドロフィさんは、さほど驚いた様子もなくわたしの手のひらから湧き出す鉄砂をじっと見つめている。


「それは……黒鉄くろがねの砂……でしたかな。あらゆる物へ姿を変える万能の鉄……異形の錬成術であると聞き及んでおります。その術を操れるのであれば、アイリュシア様はエーリカ姫様の盟友……魔王の使徒「黒の節制」と呼ばれる人物について、ご存知なのではないでしょうか?」


 唐突に出てきたランドロフィさんの言葉。

 ……「黒の節制」……聞きなれない名称だった。

 

 けど、エーリカ姫の盟友……黒の……。

 あ、もしかしたらエーリカ姫の手記によく登場する「クロ」って従者の事かも。

 

 あらゆる攻めを跳ね返す無敵の守り手、黒い鉄の箱……どうみても戦車みたいなのを乗り回して、無数の銃を自在に扱いエーリカ姫と各地で大冒険を繰り広げたと言う……あれ?

 

 それってどっかで聞いた話のような……。

 鉄壁の守り、ドラグーンを最適化……あまつさえ、それを増殖させた謎の力。

 ……なんか、わたしの皇族の力と似てるような……?


「……エーリカ姫の従者……「クロ」って人の事かな? もしかして……」


「ああ、そうとも呼んでおられましたな……その方の事をどの程度までご存知で?」


「……エーリカ姫の従者と言うか、友人と言うか……それくらいで、詳しい話はほとんど伝わってないんですよね。もちろん、帝国の正史にはそんな名前の人物登場しないし……。エーリカ姫についてもティエルギス家最後の皇帝だったって話が断片的に残ってる程度で……意図的に隠そうとした……どうも、そんな感じなんですよね」


「なるほど……何とも複雑な事情がありそうですな……帝国も魔王との戦いの後、色々あったようですしなぁ……」


「えっと、そのクロ……様ですか? ……その人がわたしの力と何か関係あるのですか?」


「そうですな……ワシが知っているのは、その黒鉄の砂をクロ様が使っていた事、そして……神樹様とエーリカ姫様、それにクロ様は、少なからぬ因縁があると言う事ですかな」


 ああ、やっぱりそうなんだ……そうなると、この力の由来は?

 ……クロ様がわたしのご先祖に伝えたとかそう言う事なのかな?

 

 『この世で一番の強敵にして、心から信頼できる盟友』とか書かれてたけど、クロって人が魔王の使徒だったと考えると色々辻褄が合ってくる。

 

 帝国が魔王軍と一時期同盟関係にあったのは、事実のようだから、魔王の使徒と帝国のトップが行動を共にしてても、さほど不思議な話じゃない……。

 

 けど、因縁って……うーん、何やらかしたんだろう……エーリカ姫様。

 

「因縁……ですか? それって、どんな話なんです?」


「そうですな……当時は、まだ我らエルフ族も神樹様の眷属と言った調子でしてな。……ワシのような外界の情報収集を担うワタリのお役目を担う者以外は、ほとんど外界へ出ず引きこもっておったのです。ですが、ある日……神樹様の命で我らは、帝国相手に戦争を起こす事になったのです」


「ああ、その辺の経緯は知ってますよ……確か、樹海に魔王軍や帝国の民が進出するようになったからって、エルフの方から魔王軍に戦争ふっかけたんだっけ……」


「そうなんですじゃ……今から思えば、無謀としか言いようがなかったのですがね」


 そう言って、ランドロフィさんはため息を一つ吐く。

 まぁ……確かに無謀……だったんだよね。


 エルフの反乱……魔王軍と帝国の連合軍とエルフの武力抗争。


 エーリカ姫様が自ら反乱の鎮圧に当たり、圧倒的な武力を背景にエルフ側と粘り強く交渉、無血和解を果たしたと言う話だった。

 この辺は帝国の正史にもちゃんと記録が残されてる。


 ……まぁ、例によって、エーリカ姫様の名前はボカされてるんだけどね。

「黒の節制」こと、くろがねの名前がやっと出てきました。


転ロリ読んだ方へは説明不要だと、思いますが……前作主人公です。


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