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第二十二話「美味しく焼こうワイバーンステーキ」②

何故か、二重投稿状態になってて、同じ話が二個並んでました……なんか、すんません。

「シーリーちゃん、安心したまえっ! 俺は人種差別なんてしねぇよ? 俺だって、サティカティみたいに獣人の血を引いてるからな。まぁ、俺はギルドの子供達の親父みたいなもんだからな! 我が娘達よ……たまには、パパって呼んだって構わないんだぞ?」


 唐突にスタンボルトが立ち上がると、両手を広げてそんな事を言い出す。

 まぁ、実際面倒見もいいし、剣士を志願するやつも多いので、スタンボルトの弟子は結構な人数に上る。

 

 その修業は、恐ろしくハードで容赦のない代物で、ガキ共からもハードすぎると嘆く声もよく聞く。

 けど、当人曰く訓練で恨まれるより、戦場で死なれる方が辛いから……だそうな。

 

 なんだかんだで、歴戦の猛者だけの事はあるのだ……普段のユルさに騙されてはいけない。

 

「お師匠様はだまってよーね!」


 残念剣豪スタンボルトの首に、背後に回り込んでいたサティがガッツリ裸絞を決める。

 

「あがおごぎえ……サ、サティ! ちょっと待て! これ入ってる! 入ってるからっ!」

 

 スタンボルト……心なしか嬉しそうにしてる気もするんだが、見なかった事にする。

 見方によっては、後ろから抱きつかれているように見えなくもない……きっと、本望だろう。

 

 それにしても、スタンボルトが帝国軍にも名を知られてたってのは、初耳だった。

 一体何をやらかしたら、100人斬りなんてあだ名が付くんだか。

 

 そういや、たった一人で帝国軍一個中隊の守る観測点の丘の上に殴り込んで、部隊を潰走させた化物がいたって噂を聞いたな……戦場のお伽話の類だと思ってたが……スタンボルトの事だったのかもしれない。

 

 あ、スタンボルトの顔色がヤバイ! 顔が紫色になって白目向いてるっ!

 

「サ、サティッ! ストップ! ストップーッ!」


 カティが全力でサティを引き剥がす……ぜいぜいと喘ぐスタンボルト。

 弟子にあっさり背後を取られて、落とされかけるなんて剣豪の名が泣く……。

 うーむ、前言撤回したくなってきた……。

 

 こんなしょうもないことで、あの世行きとかなったら、こいつに瞬殺されたバケツ騎士も浮かばれない。

 

 そういや、あいつ……名前、最後まで解らんままだったな。

 まぁ、どうでもいいか。

 

 スタンボルトと目が合うと、何故かいい笑顔でサムズアップされた。

 やっぱ、本望だったんじゃねぇーかっ!

 

「ソフィアちゃん! お代わりくーださいなっ!」


 周囲の騒ぎを物ともせずに、黙々とワイバーンステーキを平らげていたアイシアが、ソフィアに奇麗になったお皿を差し出す……さすがアイシア様ッ! 空気とかさっぱり読んでねぇ!

 

「皆、解ったな? アイシア様は、こう言う方だ……辛気臭い話より、目の前の食べ物の事が気になるお年頃なのさ。皆もくだらん事は気にせず、食ってくれ! ワイバーンの肉なんてめったに食えんぞ? 遠慮してると殿下に食い尽くされるぞ?」


 俺がそう言うと、他の皆もワイバーンの肉を食べ始める。

 

「わ、わたし……そんな大食いじゃないもんっ! でも、美味しいものは別腹っていうし! シーリーちゃんもそう思うでしょ!」


「そうだねぇ……村にいると、爺様達が肉なんぞ食べるな! 木の実食えッ! ってそんなんばっかり……私はリスじゃないっての! 美味しいものは美味しいって、素直に認めるべきだよねぇ! あ、そのデッカイのいただき!」

 

「あ、シーリーちゃん……あれ何?」


 そんな事を言って、一瞬シーリーの注意が逸れた隙を狙って、アイシアがいい感じに焼けていた一際大きい肉の切れっ端をかっさらって、口の中に突っ込む。

 

「……あれ? 私の狙ってたお肉が消えたよ?」


 シーリーが不思議そうに呟く。

 まさに、弱肉強食ッ! アイシア様、容赦なかった!

 

 ……不憫だったので、俺の分の肉を切り分けると、フォークでヒョイッとシーリーの口元へ差し出す。

 

 嬉しそうに、口を開けたとこでヒョイッと移動させる。

 カチリと歯の鳴る音と共に空振りして、もう一回……また避ける……立て続けに空振ったシーリー涙目。

 

「エド! 意地悪しないっ! シーリーちゃん、どうぞ」


 ソフィアが切り分けた肉の乗った自分の皿を差し出すと、嬉しそうに口にするシーリー。

 

 肉食系エルフ……帝国では、光合成出来るから水だけでも生きていける……とか言うデマがまかり通っているらしいが、実物はこんなもんだった。

 

 シーリーも無事に肉にありつけた事だし、俺も食うか……と思って、フォークの先を見ると……ないっ!

 隣を見ると、モゴモゴと口を動かすアイシアと目が合った。

 

(コ、コイツ……油断も隙もねぇっ!)

 

 その一部始終を見ていた皆が、どっと沸く。

 

 そんな調子で、アイシア様と皆の会話もはずみながら、樹海の一夜が過ぎていった。

 

一戦交えて、キャンプの一夜……閑話休題的な話でした。

次回、いよいよ突撃エルフの晩御飯!


……じゃなくて、エルフの集落編です。

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