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第二十一話「異文化コミュニケーション」②

 野営地に入ると、焚き火の上に網を乗せて、ワイバーンの肉がジュージューと音を立てて焼かれていた。


 香ばしい肉の香りについつい腹の虫が鳴る……あんな凄惨な光景を目にした直後でも、人間ってやつはしっかり腹が減る……まぁ、そんなもんだ。

 

 昼間は竜騎兵を警戒して、火も使えなかったのだが、竜騎兵は始末したので、煙や焚き火の明かりも問題にならないだろう。

 

 焚き火の前で皿を抱えて、キラキラと目を輝かせていたアイシアが俺を見つけると、勢い良く突っ走って来て飛びついてくる。

 ……なお、シーリーはそんなアイシアをジト目で睨みつけている。

 

「……お疲れ様! エドお兄ちゃん! って、こっちのエルフちゃんはだぁれ?」


 そう言って、抱きついたままシーリーを興味深げに見つめるアイシア様。

 それを見たシーリーも何故か対抗するようにガバッと俺の腕を取る。

 

「私、シーリーって言うのっ! エドとは将来を誓った仲なのよっ!」


 思わず凍りつく俺。

 

 ……な……何、言ってんの? こいつ。

 

 いつも俺に会うたび、暴走気味な求愛行動を取るのは毎度の事なんだけど……。


 ……アイシア様も笑顔で抱きついたまま固まってる。

 

「バ、バ、バ……バッカ野郎っ! お、おま、お前っ! 何言ってくれちゃってるの? お前との関係なんて、街に迷い込んで途方に暮れてたお前を保護して、飯食わせて一晩部屋に泊めてやっただけだろう?」


 もちろん、何もありませんでしたしぃ、その後無事に森にお帰りいただけましたが、何か。

 

 なお、コイツと知り合ってもう2年くらい経つのだが……コイツの見た目は当時から全く変化なし。

 背も低いチンチクリンで、胸なんてあるんだか無いんだか解らない……つまり、ガキだ! ガキッ!


 たぶん、10年経っても大して変わらんのだろう……なぜなら、それがエルフと言う奴らだから。

  

 ……ちなみに、エルフ族は大体人間の5倍くらいのスローペースで成長すると言う話で……。

 50年で10歳くらいの見た目で、100年も生きてやっと20歳くらいの見た目になる。

 それ以降は、ほとんど見た目は変わらず、500年くらいでやっと老け込むようになるらしい。

 

 なお、リーザは軽く200歳超えらしいが、迂闊に指摘するとグーで殴られるからある意味禁句だ。

 

 ともかく、知り合って以来、何かと言うと森から気軽に遊びに来るもんで、来る度にそれなりに相手してやってるのだが……いつのまに、そんな深い関係になっていたのか……俺も初耳だった。

 

「エドお兄ちゃん……それってどうなのっ! 一晩泊めて一体何やったの! と言うかなにやったら、こんな風になるっての? わ、わたしも興味あるからさ……ねぇ、もしかして、人にはとても言えないくらい凄いこと?」


 何故か、アイシアに詰め寄られる……今の俺の説明で、なんで納得しないんだろう? それに何故そこで顔を赤くするんだ?

 

 ……一方、シーリーは何故かドヤ顔で相変わらず、俺の腕に抱きついたまま……。

 

「そうね……あの夜のことは、ちょっと人には言えないね……ねーっ! エドっ! あ、私もお兄ちゃんって呼んでいい?」

 

 なぁにを張り合ってるんだぁああああっ! こいつらぁああああっ!

 

「あ、ああ……シーリー……とりあえず、紹介するぞ……彼女が帝国皇位第三継承者のアイシア殿下だ。無礼も程々にしておくんだな」


 内心の動揺を他所に、何もかも誤魔化すべく、努めて冷静にそれだけきっぱり告げる。

 

 シーリーは引きつった顔に、滝のような脂汗を浮かべると「マジですか?」と言わんばかりに俺をじっと見つめる。

 ああそうだと、肯定の意味を込めて、俺もコクリと頷いてやる。

 

 ゆっくりと俺の腕を放すと、しずしずと3歩ほど下がると、唐突に正座で座り込むと深々と頭を下げる。

 

「アイシア殿下と露知らず……大変ご無礼を……私はエルフ族のシーリーと申します! 殿下に命を拾われた……しがないエルフの一人でございます。この度のご来訪……一族を代表して歓迎の意を表させていただきます! あ、あの……エド様とは、特に何もありませんので……嘘ついてましたっ! ごめんなさいーっ!」


 シーリーの豹変っぷりに、アイシア様もタジタジ。

 ただでさえリーザなんてポンコツエルフと真っ先に会って、その次はコイツ。

 

 今、間違いなくアイシアのエルフ観がガラガラと音を立てて崩壊しているだろう。

 

 アイシア様が将来、自叙伝でも書いたらどうするんだろう……。

 神秘の種族と名高いエルフ族は、無駄に長生きするだけのポンコツ種族でした……とか書かれるんじゃないだろうか。


 少なくとも俺は、こいつらをそんな風に認識してる……さすがに長老クラスになると、それなりの威厳とか落ち着いた振る舞いを見せてくれるのだけど。

 100歳未満の若手は、どいつもこいつもどっか緩い上にポンコツ臭が漂っている……何故なのか?

 

 アイシア様もどうして良いか解らず、ポカーン状態。

 そりゃそうだろ……こんなの。


 とりあえず、反省しろ……シーリーッ!

はっちゃけ気味なロリエルフ。


LOVE勢筆頭くらいの勢いなんで、今後共よろしくです。(笑)



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