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第十七話「帝国軍を殲滅せよッ!」①

 ……騎士の言葉を合図とばかりに銃士5人も一斉に銃を構える……案の定狙いは俺ただ一人!

 

「はっ! おもしれぇっ! ワリィがこっちもその気だったんでなっ! 総員かかれっ! 一人たりとも生かして帰すな!」


 そう言い放った直後に奴らのど真ん中にシロウの放った火炎弾ファイアボールが炸裂する!

 

 直撃を食らった軍曹の階級章を付けた銃士が松明のように燃え上がりながら、絶叫を上げ踊り狂う……。

 銃やら火薬袋に引火して、爆発的に炎が燃え広がり、辺りが白煙に包まれる!

 

 いいぞ、真っ先に下士官を落とした! 機先を制された他の連中も蜘蛛の子を散らすように散開していく!

 

 こちらも地面を蹴って、横っ飛びに転がりながら、アイシア様特製ドラグーン・ドライを構えて、立て続けに連射!

 

「おのれ、やはり伏兵か……魔術師がいるぞ!! 総員固まるな! 散開し、各個戦闘にて対応せよっ!」


 騎士の指示で、重い装備の割に素早い動きで銃士達が散らばっていく……俺も銃弾をばら撒くのだが、かすりもしない。

 

 さすが、精鋭を謳われる国境警備隊……なかなかの練度のようだが……俺もまともに狙ってないからな。

 これは、あくまで敵の目を俺に引きつけるための牽制射撃だ!


 散々に煽ったのも俺一人に奴らの敵意を集中させるため! 俺は囮で上等だっ!

 

 大きく腕を振りかぶって、騎士を指差すとよつん這いで地面に張り付くように伏せていたサティが凄まじい速度で騎士に肉薄し、立て続けの連続切りを見舞う!


 目にも留まらぬ速さの剣戟……体格差は歴然にも関わらず、騎士は防戦一方になる。

 

 更に銃士の一人が、頭上から飛び降りてきたリッキーに脳天からの一突きを食らって、一撃で倒れる!


 シロウの火炎弾と俺の銃撃で散開してしまった奴らは、こちらのタイミングを揃えた一斉攻撃に騎士を支援すべきか、突然降って湧いた新手のリッキーに対応すべきか迷ったらしく、動きがチグハグになる!

  

「くっ! 速いっ! 何者だ貴様らっ! それにこの見事な連携っ! ただのガキではないな!」


「ただの冒険者って言ったじゃん! そりゃりゃりゃーっ! 喋ってる暇なんてないよっ! ちゃんと受け止めないと死んじゃうよっ!」

 

 サティはほとんどゼロ距離で猛ラッシュ! ああなったら、周りに何人いたって迂闊に手は出せない。


 何より指揮官が指揮を取れていないと言うのは実に美味しい展開だ。


 リッキーのやつは一人仕留めると、素早く茂みの中へ後退……と見せかけて、わざわざ振り返って、手招きの仕草を見せて追って来いと言わんばかり。


 それを見た銃士の一人が何やら喚き散らしながら森に向かって銃撃を放つと、ダガーナイフを抜いて、その後を追いかける!

 

 上手いな……さすがリッキー。

 

 火達磨になってた奴は、すでに動いてないし、リッキーにやられたヤツは即死だったらしく血溜まりに蹲ったまま動かない。

 

 敵の5人の銃士のうち3人がすでに消えた……敵は下士官が真っ先に死んだことで、まったく統制が取れていない。

 装備も近接戦闘向けとは言い難い……視界も下手に乱射したせいで、もうもうたる煙で最悪に近い。


 その上、指揮官たるバケツ騎士もサティとのチャンバラに夢中で周りが見えていない。

 

 こうなったら、もうほとんど勝ちと言っても過言ではない。

 

 上のワイバーンに残った連中は騎士の指示でも待っているのか、籠から身を乗り出して指を指したり、何やら怒鳴っている。


 奴らはシロウに任せる! ハンドサインでシロウにその旨意思を伝える!

 何処に居るのかよく解らんが……俺を視界に入れているだろうから、伝わるだろう。

 

 この辺は打ち合わせせずとも、以心伝心で動ける程度にはこいつらの練度は高い。

 

 Dランク冒険者と言えど、全員亜人や獣人の混血だから、身体能力の時点で並の人間を凌駕している上に、選りすぐりの師匠を付けてやってるからな……こいつらは強いぜ?


 残った二人の銃士が並んで膝をつくと俺に向かって、銃弾を放ち始める!

 

 ロボスが俺の前に出て防弾盾を展開して弾き返す!

 普段は30cm四方とコンパクトなのだが、変形することで1m程になり、銃弾を防ぐ防壁となる特殊シールドだ。

 

 銃弾をも弾き返す持ち歩き可能な重防盾……そんな無茶振りに応えて鍛冶職人が作ってくれた力作だが、完璧に銃弾を止めている……実戦証明が出来た形になったのだが、いい仕事ぶりだ。


 なんでも、外海に出没する鋼鉄ガニとか言う巨大モンスターの外殻を加工したとか言う話で、水に浮くほど軽い割に恐ろしく頑丈。

 聞いた話だと、銃弾はおろか砲弾すらも跳ね返すそうで、外海で遭遇した場合は小型船のラムアタックが一番有効らしい。

  

 とにかくロボスが盾になってくれてるから、ひとまずは安心だ……さすがに息が切れていたから、助かった。

 

 更に銃弾が放たれ盾に命中しているが、貫通される様子もない……ロボスも衝撃に顔をしかめながらも耐えている。

 欠点としては、衝撃までは殺せない事だが……ロボスは巨人族の末裔だから、人並み外れた強靭な身体を持っている……この程度なら耐えられるだろう。

 

 相手はその光景を見て露骨に焦る……ろくに照準も付けずに泡を食って射掛けてくる。

 

 この隙に、こちらも落ち着いて弾倉を交換する。

 銃身のロックピンを抜き、銃身を引き抜き二つに分離、更にシリンダーを引き抜いて、予備の装填済みのシリンダーに交換。


 後は、逆の手順で銃身を組み直して、リロード完了。

 それなりに手間だが、一発一発再装填する手間を考えると劇的に速い……。


 膝射姿勢で膝の上に手首を固定して、盾の横合いから銃身だけを出して、更なる斉射を加える!

 

 ……向こうは遮蔽物に隠れようともしていないが、距離は約20!

 拳銃で俺の腕だと微妙な距離だが……一発! 二発! 三発まで外れ! だがまだまだっ!


 こちらの手早い再装填と至近距離への弾着を見て焦ったのか、銃士が再装填をしながら手にしていた弾薬を取りこぼす……慌てて、拾おうと横あいへ手を伸ばした所へ、四発目の銃弾をこめかみにモロに食らって、銃士は仰け反って倒れるッ!

 

 ……思いがけずヘッドショットとなってしまったが……まさに一撃必殺!


 なんだ……使えるじゃないか! このドラグーン・ドライッ! 弾道特性も良好で反動が少ないから、連射してもブレが少ない。


 素材からして、鋳造品とは思えない程の剛性感がある……本当になんなんだこれは?

 ドラグーン・ツヴァイと見た目が同じだけで、あらゆる点で隔世の感すらある……。


「エドさん! お見事っ!」

 

「ま、まぁな! 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるってな! ロボス! ナイスフォローっ! 助かった!」


「いえいえ……この盾のおかげです……ちょっと怖いけど、僕でもお役に立てたなんてうれしいです!」


 残ったもう一人の銃士もこの期に及んで俺に拘り、銃弾を撃ち尽くしたところで、横合いからふらりと現れたリッキーに、ばっさりと一太刀を浴びせられる!

 

 リッキーの奴「絶歩ぜっぽ」なんて習得してたのか……。

 相手の死角から足音を殺し、気配も消して歩み寄って、一撃で仕留める暗殺術。

 あいつの師匠は、裏メンバーの十傑……暗剣ギシュフォードって腕利きの暗殺者なんだが……順調に物騒な暗殺術を仕込んでいるようだった。

 

 ……傍から見ると普通に歩きながら近寄って、斬り付けたようにしか見えないのだけど……相手はリッキーの存在に気づいてすらいなかったようだった。

 

 驚愕に目を見開いたまま、血の噴き出る首筋を抑えながら、銃士は立ち上がろうとして呆気なく倒れた。

 

 追っていったヤツもリッキーが返り討ちにしたのだろう……。

 なんだかんだで、三人も仕留めてるあたり、やっぱこいつ……強いな。

 

 まぁ……俺が奴らをコケにしまくって冷静さを奪い取った上に、隊長格にサティなんて手数自慢をぶつけて指揮どころじゃない状態に持ち込んでやったから、指揮系統が崩壊し、良いように各個撃破できたんだがな。


 下士官の位置もわかりやすくど真ん中だったから、シロウも迷わず標的にした。

 

 要は戦略と戦術って奴だ……そもそもこんな視界の悪い樹海で重く動きの鈍る連装騎兵銃なんぞクソの役にも立たん。

 小銃の優位性が意味をなさない10m程度の距離に不用意に近づくとか、連携も戦力配置も何もかもがマズかった。

 

 伏兵で包囲陣をしき、準備万端だった俺達と、わずか三人の女子供相手と舐めてかかっていた奴らとでは、戦う前から勝負なんて見えていた……。

帝国軍……一方的ですが。

エド達のメンツで一番やばいのは、リッキー君です。

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