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第十五話「アイシア様と樹海の進軍」①

 ……そして、明けて翌日。

 俺は……ロボス隊に同行しての樹海でのゴブリン退治の行程の真っ最中である。

 

 留守は事務方連中やら、プロシア達にお任せしている。

 プロシアなら、星光奉仕騎士団の顔役だし冒険者連中の人望もあるから留守役には最適だ。

 帝国騎士辺りが来ても、脅迫如きで怯むようなお方ではないので、まず問題はあるまい。

 

 無線魔道具もあるから、相互連絡も問題なし……ギルドの方も問題なさそうな様子である。

 戻る頃には間違いなく事務仕事が山盛りだろうけど……アイシア様にも手伝わせよう!


 なお、同行メンバーは俺の子飼とも言えるロボス達4人と、アイシア様……更に道中のお世話係を志願してきたソフィアと、ソフィアを心配したのか非番だったのにわざわざ同行してきたリッキー。

 

 俺も入れると8人にも及ぶ大所帯だ。

 

 それに加え、こいつらには内緒で、シュタイナの旦那とスタンボルトのおっさんも着いてきてるから合計10人。

 追加でエルフの村落からエルフの自警団連中が何人か合流する予定。

 

 なかなか大仰な団体になってしまったけど……アイシア様はその程度には重要人物なんだから仕方ない。

 なお、俺とアイシア様、それとソフィアは戦闘員としてはカウントしない。

 

 ソフィアも一応冒険者としての訓練は一通り受けているのだけど、ちょっと病弱なのとリッキーの強い要望もあって、冒険者宿舎の寮母役に収まったと言う経緯がある。

 

 小さい癖にやたらパワフルで、押しも強い……誰が呼んだか付いたあだ名はリトルマム。


 俺も自分の部屋があるのだけど、ソフィアは勝手に押し掛けて掃除、洗濯やらをしていく。

 通い妻とかからかわれてるんだが……勝手にやられてるから、絶対違うと思う。


 ちなみに、例のメイド服を本人に見せたら、やたら気に入ったようで、今日も樹海の行軍になると言っておいたのに、まさかのメイド服での参加……だった。

 

 本来、止めるべきだったんだが……やたら、似合っていて思わず見とれてしまったので、結局言いそびれた……。


 周辺には、間違いなくホスロウ傘下の情報軍の連中も展開してると思うのだけど……表には出ない隠密だろうから、戦力的には期待してない。

 他の組織の動向は良く判らんし、イチイチお伺いを立てる義理もないから無視している。

 

 進軍フォーメーションとしては、まず先陣を切っているのはカティとサティの双子姉妹。

 

 この二人……ある種の同調感応能力のようなものがあって、近くにいればお互いの感覚を共有出来るらしい。

 要するに別々の方向を見ながら歩いていても、一人が気づけば声をかけるまでもなく同時に気付けると言うことで、斥候役には適切だった。

 

 サティ辺りだと、スタンボルトのクレイジー訓練の一つ……目隠ししてのチャンバラなんかもやらされてるから、勘もいい……カティも基本は聖術使いなのだけど、接近戦なら俺より強い。

 

 なにせ、双子である以上身体スペックは同等なのだ……気性が大人しいからそう見えないだけで、実は結構戦闘向き。

 

 詳しく知らんのだが、西方エストラキアの獣人の血を引く戦闘民族かなんかの出身らしい。

 ……実際、縦長の瞳で耳もやや尖り気味……パッと見普通の女の子に見えるのだけど、その身体能力は極めて高い。


 こんなのがサラッと混じってるからスラムの孤児連中も侮れないのだ。

 

 二番手は、ロボスとシロウが左右に広がって警戒している。

 その後ろに俺達非戦闘員組の三人……最後尾はリッキーが固めてる。

 

 シュタイナ達は……俺に解るわけがない!

 

 ちなみに、一応俺達非戦闘員組も、短剣と拳銃程度ながら武装している。

 

 アイシア様……最初は拳銃なんて撃った事ないとか言ってたくせに、さんざん試し撃ちやら調整を繰り返すうちに、やたら気に入ったらしく、誇らしげにホルスターを付けて、得物を突っ込んでいた。

 

 ……なお、激しく似合ってない……と言うか、シュールだ。

 

 銃身長は40cm近くあるので、120cm弱の彼女が持つとやたら銃がバカでかく見える。


 小銃なんか持たせたら、弾の装填すらままならんと思う。

 そう考えると、拳銃くらいでちょうどいいのかもしれない。


 ソフィアあたりは、早々に拳銃なんて持つのは諦めて、武装と言っても果物ナイフくらいしか持ってない……。

 まぁ、ソフィアを戦わせるなんて、俺が許してもリッキーが許さないだろうから、別に構わない。

 

 アイシアの服装は、緑色のゆったりとして、裾を絞ったクロップドパンツと呼ばれるズボンと薄手の長袖のシャツとマント、それと例の緑色の帽子。

 もっと場違いなカッコをしてくるかと思ったら、意外なことに、旅慣れたエルフのような服装をチョイスしてきた。

 

 緑基調にすることで、森のなかでの被視認性とかも考えているようだった。

 従軍経験やら、野外活動に慣れているようにはとても見えないのだけど、見てくれだけはいっちょ前だ。

 

 ちなみに、彼女の持つ拳銃は俺の持ってたドラグーン・ツヴァイとはもはや別格のやたらと精度のいい改造拳銃。

 

 いや、改造拳銃と言っていいのかすら解らない……はっきり言って、そんなレベルじゃない……まるで別物。

 俺自身、試し撃ちした感触だと、ドラグーンツヴァイの問題点がすべて改善されており、命中精度も良好で……俺の腕でもちゃんと的に当たった……なんだこれ?

 

 出処を聞いたのだけど、意味不明の事を言うばかりで埒が明かなかった。

 

 ……昨日の夜、面会ラッシュが終わってから、俺のドラグーン・ツヴァイを貸せとか言ってかっさらっていって、しばらく執務室に引き篭もってたんだが。

 

 一時間位、何やらガソゴソやってて、やっと出てきたと思ったら、ダース単位の新品の拳銃を持ってた。


 とまぁ……とにかく、ひたすら怪しげな代物なのだが。


 シュタイナからもこれなら使えると太鼓判を押された上に、火薬の分量なんかも最適化されているらしく反動も抑え気味で威力も十分、おまけにご丁寧にライフリング入り。

 ……弾丸もドラグーン・ツヴァイと同じものが流用できるそうなので、とりあえず使ってみることにした。

 

 本人によると、ドラグーン・ドライってとこらしい。

 少なくとも、もはやガルフ造兵局製とは出処も違う別物なので、アイシア工房製と言ったところか?

 

 あまりに怪しげなので、なんとなくブツとにらめっこしているのだが……別に答えなんて書いてあるはずもなかった。

 

「お兄ちゃんどうしたのさ? 訝しげな顔して……あ、ドラグーン・ドライ……早速使ってくれるんだ!」


 道なき道を割と平然と歩きながらアイシアが顔を覗き込んできた。

 

「あのよ……こいつ、結局どうしたのよ? 銃の改良やら増産とかってそんなお気軽に出来るようなモンじゃねぇと思うんだが……」


「うーん、わたしも上手く説明できないんだけど、もわーってドラグーンの最適形をイメージしたら、その通りに改良されて、更に黒い霧をエイヤッとやったら二個に増えてた……わたしの能力の応用って感じじゃないかなー」


 はい、意味が解りません。

 何言ってるかすら解らないとはまさにこの事。

 

 最初に聞いた時の説明も、もわーがどばーんだったり、エイヤがヨイショだったくらいでほぼ変わりない。

 これで何を解かれというのか?

 

 そもそも、帝国の銃の製造工程自体、粘土を焼いて作った型に溶けた鉄を流し込むことで鋳造パーツを作成。

 それを手作業でバリを削って磨き上げたり、他のパーツと組み合わせたりとそれなりの設備と手の込んだ職人芸とも言える技術が必要なはずなのだ。

 

 そんな設備は、さすがにギルドにもない。

 鍛冶屋に行けば、剣や斧を作るための設備くらいはあるし、鉄を溶かすための溶鉱炉だってある。

 けれど……銃火器となるとメンテナンス用の設備や道具くらいがせいぜい……新品の銃を一からとなるとグランドリアでは難しいのが実情だった。

 

 にもかかわらず、一時間ほど執務室でガソゴソやってるうちにダース単位で完成とか、意味が解らない。

 

 意味が解らないんだが……これが皇族の能力のひとつ……という事なら納得するしか無い。

 

 皇帝陛下は、戦車やら鋼の巨人なんかも召喚してたらしいし……本人の説明が難解かつあいまいで、イマイチ理解が追いついていないのだが。

 

 まぁ、そもそもこんな条理の枠から突き抜けている力……理解しようとするだけ無駄なのかもしれない……。

やっと、本格的な冒険の旅に出撃!


ちなみに、ソフィアちゃんは作者がイメージイラスト描いたら、何故かメイドになってたので、

本編でもメイドコス……となりました!(笑)

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